クラスの友人が隣国の王子を殴りつけていました
翌朝も私詣は変わらなかった。朝から他国の王族貴族の男性連中が一斉にプレゼントを持って襲来してくるのだ。いずれは静かになるのかなと思うけれど、仲々すぐにはそうはいかないみたい。
メラニーによると、私と婚姻を結ぶイコール破壊の魔女が義母になり、戦力的に帝国に十二分に対抗できるようになるとのことで、特に帝国と国境を接している国は死活問題だそうだ。だから、皆は死にもの狂いでアプローチしてくるんだとか。
それに、たとえ婚姻を結べなくても友人になるだけでも違うと、皆は必死になっているみたいだ。
両親の帝国襲撃事件の後に我が学園への留学希望者が溢れ出ているとか。留学予定の定員をオーバーしているので、今年はこれ以上増えようはないが、来年度の申込みが既に定員を上回っているのだとか。学園長らは人気が上がったと素直に喜んでいるけれど、プレゼント攻勢にあっているこちらの身にもなってほしい。
「フランの弟様のいる中等部にも大量の留学生が殺到しているそうよ」
「へえええ、そうなんだ」
「それも婚約目当ての女性が」
「ジェドもさっさと婚約者決めないから、こうなるのよ」
私は他人事で気楽に言い切った。
「まあ、フランの弟様も可哀想よね。フランは全く相手にしていないし」
「えっ、何言っているのか判らないけれど」
私が言うと
「フランの弟様はシスコンだもんね」
ノエルが言った。まあ確かにジェドはどちらかというとシスコンだろう。
「それと婚約者は関係ないでしょ」
私が言い切った。そう、そんなこととは別にお姉ちゃんとしてはさっさと婚約者を見つけてほしいのだ。
「まあ、あちらは貴族の子女連中もこれを機に張り切っているみたいだから、ここの比ではないみたいだけど・・・・」
メラニーの声に私は唖然とした。これより酷いってどういうことだろう?流石に少し、ジェドが可哀想に見えてきた。
でも、自分には婚約者のアドがいるのに、何故これだけ多くの男が群がるんだろう? それに、ここんところ考えたらアドが来ていない。うーん、なんだろう、このムカつく感情は・・・・。
それだけ忙しいのだろうか?
「殿下は、帝国の皇女相手に鼻の下を伸ばしているんじゃない」
ベンがボソリと言ってくれた。昨日見た様子ではそれがあながち、間違いとも言い切れないんだけど。
「まあ、あのフランに執着している殿下がそんなことはないと思うけど」
「でも、この状況になっても来ないって可怪しくない?」
メラニーの言葉にノエルが不審がる。
「それはそう思うけれど、新学期始まったところで忙しいだけだと思うけど」
「でも、あの殿下なら、そんな事関係なしにこの場にいると思うんだけど」
私が男どもに囲まれているのを見て、ノエルが言うのが聞こえた。
「ちょっと、みんな、見ていないで助けてよ」
「はいはい、わかったわよ」
「はーい、みなさん。皆さんの贈り物は恵まれない子どもたちのために使わさせて頂きます。それでもよろしければこちらにお名前を記載頂いて置いていってください」
オリーブらがやってきて、交通整理をしてくれた。それを聞いた途端に品物を引っ込める者も多数いる。
そういうやつはそういう奴で良いのだ。無理することはない。私は第一王子の婚約者という立場から、どのみち帝国と諸外国の戦いに手を出すことは出来ないのだから。
何とかプレゼント攻勢を逃げ出して、私たちは教室に向かった。
そして、扉を開けて入ったところで、
「貴様、良くも言ったな!」
背の高いアルマンがグーで背の低いベンを殴りつけているところだった。
ベンは一瞬で顔面にアルマンの体重の載ったパンチを受けると私に向かって殴り飛ばされてきたのだ。
私は驚きで目を見開いてその飛んできたベンを受け止めていたのだ。