隣国の王子が転校生としてやってきて助けた所に婚約者が現れて喧嘩しそうになりました
始業のチャイムがなった。
今日から新学期だ。
学期末にはどうなることかと心配したが、瀕死の重傷だったノエルも、矢が突き刺さったオリーブも、元気に登校しており、一同全員揃っていた。
皆、結構日に焼けていた。一番焼けているのはもちろん私だったが・・・・
「公爵令嬢のお肌の色には到底見えません」
アリスやクリストフらには呆れられていた。そんなの関係ない。今生の夏休み、生まれて初めて海に山に繰り出して散々楽しんだのだ。
神様ありがとう。生き返らせてくれて! 私は新しい人生の初めての夏休みを心いくまで楽しんだのだった。夏休みの最後は両親のせいで最悪だったけど・・・・。
それは忘れよう・・・・。
まあ、全員黒く焼けて揃って、私はホッとしていた。
そこに担任が入ってくる。
「皆、おはよう」
「おはようございます」
先生の挨拶に私たちは答えた。
「おお、元気だな。特にフラン。凄いな。真っ黒だ」
先生も呆れていた。
「はい、人生悔いを残したくありませんから」
「まあ、それはいい心がけだが、そこまで、よく焼いたな。ご両親が許されたのが信じられん」
「両親はもっと好き勝手な事をやっていますから」
「えっ、いやまあ、凄いな。あの皇帝に頭を下げさすなんて」
私の言葉に先生は戸惑って言った。
「まあ、あの両親あって、この娘といったところか」
なんか先生が訳の判んないことを言っているんだけど。私が後でメラニーに言ったら、先生は真実しか言っていないわよ。とあっさり言われたんだけど。
「今日は君たちに転校生を紹介する」
ベルタンが話を変えて、一同を見回した。
「やった、女の子が一人増えた」
アルマンが喜んで言ったが、
「残念ながら男だ」
ベルタン先生の声に
「何だ男か」
アルマンはがっかりしていった。
「まあ、そう言うな。隣のホルム王国の王子殿下だ」
「えっ、王子殿下がこの平民クラスのEクラスにいらっしゃるんですか」
ノエルが驚いて聞いた。
「そうだ。ベンヤミーン・ホルム王子殿下だ」
紹介されて、外から男の子が入ってきた。なんか小さい。私達の学年というよりもジェドとかと同じくらいの身長だ。
「ベンヤミーンと申します。隣国のホルム王国から参りました。ベンと呼んでください」
ベンは頭を下げた。
「ええええ、でも、私達平民ですし」
ノエルが言うが、
「大丈夫です。ルブラン家のフランソワーズ様が略称で呼ばれていると聞いています。我が国はルブラン家にはいつもお世話になってるので、そのご令嬢がそうならば、それで構いません」
私はその稚そうな顔を何処かで見た記憶があった。
「ああああ、泣き虫ベンじゃない」
私はそう言うと思わず立上っていた。
「フラン姉様。泣き虫ベンはないよ」
ベンが文句を言ってきた。
6歳くらいまで我が家で預かっていた子供だった。そうか、ホルム王国の王子だったのか。
私はまじまじと彼を見たのだった。
「でも、何であなた私と同じ学年にいるの?」
「嫌だなあ、姉様。同い年だからに決まっているでしょ」
ええええ! そうだっけ。
後で詳しく聞くと、ベンは3月生まれなんだとか。元々背が低いのでジェドとかと同い年ではないかと思っていたんだけど、私と同い年だったなんて思ってもいなかった。
昼食時は食堂が大混雑だった。
しかし、我がE組は食堂の一角を完全に押さえていた。一学期学年一位の特典だ。
私は今日はベンを横において、みんなでワイワイ夏休みの話をしながら食べようとしていた。
「バンジャマンは、真っ黒だけど海で泳いだの?」
「そんな暇があるわけ無いだろう。貧乏学生は農家で住み込みのアルバイトをしていたんだよ」
バンジャマンがご飯を食べながら言う。
「フランは海焼けなのか」
「えっ、1回は行ったけど、私も領地帰って魔物退治とか役に立っていたわよ」
そう、私は遊びだけではないのだ。一応仕事もこなしたはずだ。最も全力で魔力を放ってしまって、魔の森の中でクレーターを作って却って迷惑を駆けたりもしていたけれど・・・・
部隊長には邪魔をしていただけだとか文句を言われたけど。仕方がないじゃない。魔術リミッター外せるのここだけなんだから。
「ベンは何していたの?」
私が聞くと、
「勉強ですかね。ここへ留学する準備とかありましたし」
ベンが平然と言う。そうか、屋内篭っているからこんなに白いのか。私はベンと肌の白さを比べて溜息をついた。
「フラン様」
「ちょっと、お願いします」
その間も私の後ろからはプレゼント抱えた男どもが私に渡そうと必死にしていた。食事を食べようとしても次から次に贈り物を持って皆群がってくるのだ。私はおちおちと満足に食事も食べられない。
「ちょっと君たち。フラン姉さんはご飯を食べているんだから。食べている間は話し掛けるのを控えるべきだろう」
きっとして立ち上がると後ろを振り返って、ベンが言ってくれた。
おおおお、泣き虫ベンも言うようになってきたのかと私は感動していた。
「煩い。隣国の王子が上手く取り入ったみたいだが、俺たちも国の命運がかかっているのだ」
「そうだ。そうだ。よそ者は引っ込んでいろ」
背が低いからか、弱っちいと思われているのか、ベンはあっという間にどんと押し返されて、転けてしまった。そのまま起き上がれないでいる。
「ちょっとあんた達、ベンに何するのよ」
私がムッとして立上った。ベンは元々弱いのだ。そのベンを突き倒すなんて許せないと私は思った。
「えっ、フランソワーズ様」
「これはその」
男達は私の剣幕に慌てた。
「食事時間は私に対してのつきまといは禁止よ。判ったわね」
私が睥睨すると、仕方なさそうに、男達は去って行った。
転けているベンの手を取って立ち上がらせる。
「大丈夫? ベン」
「ごめん、姉さま全然役に立たなかったね」
「ううん、アルマンとかは面白がって全然、助けてくれなかったから。助けてくれて嬉しいわ」
「えっ! 俺のせいかよ」
ぶすっとアルマンが言うが、そこは無視だ。こいつら私が追い回されているのを楽しげに見ているのだ。
「あっ、ごめん」
ベンがよろけて私にぶつかってきた。
仕方がないから受け止めてやる。でも、ちょうど胸の所にベンの顔を抱きしめたような感じになってしまった。ベンは身長が低いのだ。
「おい、フランに何をやっているんだ!」
そこへ、血相を変えたアドが駆け寄って来ると私からベンを引き離した。
「何を怒っているのよ、アド」
「何じゃないだろう。フランもフランだ。何でこいつを抱きしめてたんだ」
「抱きしめてなんていないわよ。転けるのを防いだだけでしょう。あんたじゃあるまいし」
「なんだと」
「幼なじみの帝国の皇女が留学してきたから、鼻の下を伸ばしているって聞いたけど」
「はあああ、そんな訳ないだろう」
「でも、私が今朝から男達に囲まれて困っているのに、助けに来てくれなかったし」
私はムッとしていった。
「仕方がないだろう。新学期の初めで忙しかったんだよ」
「ふーん。帝国の皇女とイチャイチャして忙しかったんじゃないの?」
「はあああ! そんな訳ないだろう」
「そうかな、少なくともこのベンは、お昼を食べられなくて四苦八苦している私を助けてくれたわ」
「な、なんだと」
睨み合う私とアドの前に、無情にも予鈴のチャイムが鳴ったのだった。
私たちは青くなった。
いきなりアドと喧嘩するフラン。
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続きは今夜更新します。