国王視点1 問題児の公爵夫妻が帝国に殴り込みをかけてくれました
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第二部開始しました
私はこのエルグラン王国の国王、アロイス・エルグランだ。
現在王国はこの世界最大の帝国から何かとちょっかいを出されている。
つい先日も我が国の聖女を巻き込んで、叛逆を起こそうとして事前にフランらの活躍で、防がれた。
元々現帝国皇帝の落とし胤で近衛師団長を務めていたグロヴレ侯爵が帝国にそそのかされて叛逆を企てだのだ。
侯爵家は断絶、その領地をルブランに渡そうとしたのだが、ラクロワ公爵の反対にあって、止められてしまった。
本当に2大公爵家の仲の悪さは酷い。
武のルブランに対して文のラクロワ、出来ればこの2つが手を取り合ってくれると一番良いのだが、2代前の確執がいまだに残っているようだ。
最もこの二人は現ルブラン公爵夫人を巡って争ったという曰く付きで、余計に仲は悪くなっている。
まあ、私から見たらどっちもどっちなのだが。
まあ、どちらかというと規格外なのが、ルブラン公爵夫妻で、子供の教育方針から何から何まで、驚かされることのほうが多かった。まあ、その子供のフランにも驚かせられることも多いが、その両親はもっと凄いのだ。フランのすることが可愛く思えるほどに。
「へ、陛下、大変でございます」
そこへ、ダンベール中央騎士団長が駆け込んできた。近衛騎士団長の反逆未遂という前代未聞の事件の後、現在は中央騎士団長のダンベールが近衛騎士団長も兼務している。
「どうしたのだ、ダンベール」
「ルブラン公爵夫妻が帝都に攻め込んだという報告が上がって参りました」
「な、なんじゃと」
私は思わず立上っていた。
「帝国にルブラン軍が攻め込んだというのか」
私は呆然とした。確かにルブラン公爵軍は凶暴な魔物がいるので有名な魔の森を抑えている。その力はおそらく世界最強だろう。
しかし、移動するには何十日もかかるほど離れている。
そんな事は無いだろう。
「おそらく、少人数で攻撃したものと思われます」
「公爵夫人は転移が使えたか」
「はい。おそらく、娘に手を出されたことに切れたのではないかと」
「な、なんということをやってくれるのだ。王国と帝国を戦争させるつもりか」
私は流石に頭にきた。
「公爵に公爵夫人。あの二人はいつもこうだ。好き勝手にしよって。いつも私が尻拭いをしなければならないのではないか」
この振り上げた拳をどうすればよいのだ。
その公爵から水晶が送られてきました。
私が手に取ると映像記憶用の水晶だ。
「何を送ってきたのだ?」
私は中央騎士団長を見たが彼は首を振るばかりだった。
私は再生魔道具にかけた。
「全世界の皆さん。こんにちわ。私はねずみ小僧と申します」
黒ずくめの大きな体格の男が話しだしたのだ。どこかで聞いた事がある声だ。
「私はねずみ娘と申します」
こちらの衣装は真っ赤っだ。この声は十二分に聞いたことがある。私は頭が痛くなった。
「今日は全世界の敵、帝国の王宮に忍び込みました。ここの皇帝は部下を使って我が娘を誘拐しようとしたのです」
「そのような極悪非道の事を皇帝がして良いのか」
「私たちは天誅を下すためにここに来たのです」
「なにやら早速、悪巧みをしているようです」
地面を映すと、そこにはニヤニヤ笑う皇帝とその側近のビスマークがいた。
「隣国と申すとホルム王国か。奴らもう一度痛い目にあいたいらしい」
「第二師団を帝都から派遣いたしますか」
「ほう、また寸胴は良からぬことを企んでいるのだな」
「本当に寸胴だけに頭はないのね」
いつの間にか衣装を脱いだのだろう。公爵と夫人が大声で叫んでいるではないか。
「こ、この声は」
「出会え、曲者ぞ」
皇帝と側近が慌てる様子が映されていた。
「ギャオーーーーーーーーーーーーーーーー」
「きゃーーー」
「助けて」
なにか外では巨大なものが暴れている音がする。
そして、中では瞬殺だった。騎士団長らが一瞬で公爵によってやられる。
「ズンドー、お前良くも私の可愛い娘に手を出そうとしてくれたわね」
怒り狂っている公爵夫人が写っていた。
「責任を取るのは何が良い? このまま火の海の中で死にたいならそうしてあげるけど」
「いや、少し、待て、話し合おうではないか」
皇帝が大慌てしているさまはさすがに、笑えた。いや、ここは笑うところではない。
「許してほしければ、ここで土下座して謝れば。そうすれば少しは考えてやっても良いけれど。でも、世界のためにはあなたが死んだほうが良いという意見も多いのだけど」
公爵夫人がとんでもないことを言い切った。敵国の王宮にいきなり出現して何しているのだ、公爵夫人は! 私はただただ、見ているしか出来なかった。
しかし、しかしだ。あの傍若無人、いまだかつて誰にも膝をついたことのない皇帝が、公爵夫人の前に跪いたのだ。
「へ、陛下」
鉄血宰相の異名を持つビスマークが驚愕して皇帝を見ていた。
えっ、公爵夫人は帝国の皇帝を跪かせたのか。
「うん、早くしないと。でないと王宮が壊滅してしまうけれど」
「ギャオーーーー」
また外で凄まじい大音声が響いた。
「お、お前は何を連れてきたのだ」
「お前とは誰に向かっていっているの?」
皇帝の言葉に夫人の一撃が皇帝の顔をかすって壁に巨大な穴を開けていた。さ、さすが破壊の魔女・・・・。皇帝相手にこんな事やるなんて、もう絶対に外交問題だ。
「アンナ様。も、申し訳ありませんでした」
な、なんと帝国皇帝が土下座して謝ったのだ。
周りの者たちは呆然としてみていた。
「二度と我が国に手を出さないと誓いなさい。それと隣のホルムにも」
「えっ」
「死にたいの?」
「いえ、判りました。今後一切エルグラン王国とホルム王国には手を出しません」
「えっ」
近衛兵士たちも呆然と見ていた。ダンベールも同じだ。
あの皇帝が約束したのだ。全然信じられなかったが。まあ、絶対に守らないと断言出来るけれど。
でも、それは夫人も同じだったみたいで、
「じゃあ、私達の娘に手を出した分を償って貰うわ」
「えっ、許してくれるんじゃ」
「何を甘えたことを言ってくれるの。悪いことをしたら当然、償わないと。命を奪うのは止めてあげただけよ。感謝しなさい」
「いや、ちょっと待て」
皇帝が必死に逃げようとした。
しかし、そんな皇帝を破壊の魔女が許すわけはなかったのだ。
「紅蓮の炎よ。焼き尽くせ」
「ギヤーーー」
皇帝の残り少なくなった頭髪が一瞬で焼やされたのだ。王宮は火の海になって皇帝は転がりまわっていた。
最後には夫人のペットのような巨大龍に咥えられて皇帝は池の中に放り込まれていた。
『正義はかならず勝つ』 のテロップが最後にでかでかと出ていた。
私達はそれを見て言葉も出なかった。
「へ、陛下、どうされるのですか。帝国の皇帝に土下座させて残り少ない頭髪を燃やさせるなど、これは凄まじい国際問題になるのは確実ですぞ」
外務卿が叫んでいるが、その対処を考えるよりも前に私は呆然とするしか無かったのだ。
そして、私はただ、笑うしか出来なかった・・・・
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ブックマーク、よろしくお願いします。ここまで袖にされた帝国はどうするのか?