ホワイトデーのお返しにチョコレートを作った後に王子と甘い時間を過ごしました
少し早いですけれどホワイトデーです
「料理長、お願い。今夜だけ、端のスペース貸して下さい」
私はホワイトデーの前日に王宮の料理長にお願いしていたのだ。
学園の調理場を破壊して二度と使わせてもらえなくなって、メラニーの家も
「二回目は流石に難しいわよ。それに量も多そうだし」
と断られて、最後の頼みの綱として、親しい王宮の料理長に頼み込んだのだ。
料理長は昔からフェリシー先生から逃げている時に良く匿ってくれたのだ。そのついでにいろんなものを食べさせてくれて、私は完全に彼のファンなのだ。
最近は王宮での食事の時間もフェリシー先生の礼儀作法マナーの時間になって、満足に食べられないのが私はとても不満だった。偶には彼の料理を心置きなくお腹いっぱい食べたい。
彼の作る料理は食事は本当に美味しいのだ。
「しかし、フランソワーズ様。聞く所によりますと明日のホワイトデーは、男性が女性にチョコレートを渡す日だと聞いたのですが、アドルフ殿下が使われるのですか?」
不思議そうに料理長が聞いてきた。
「それが、料理長、何故かバレンタインデーに私が大量のチョコレートを男女問わずもらってしまったのよ。なんかもらった数も私が一番だったみたいで、それでアドも機嫌が悪いのよね」
私が言うと、
「なるほど、確かにフランソワーズ様は男前ですからな」
料理長は笑っていってくれたんだけど、
「料理長、笑い事ではないんだからね。本当にお返しするのも大変なんだから」
私が怒って言うと、
「申し訳ありません。つい、そのお姿が想像できたものですから」
料理長はそう言って笑ってくれた。
でも、持ってくる面々とそれに怒るアドの相手をするのが本当に大変だったんだから。
「で、フランソワーズ様、一体いくつ必要なんですか?」
「千個くらいかな」
「はい?」
私の答えに思わず料理長は固まってしまったんだけど。
持ってこなくてもいいのに、騎士団の面々も二度とハゲにされてはかなわないと思ったのか近衛から中央騎士団まで全員が持ってきてくれたのだ。
他国の王子様や公爵令息等々全部数えると千個は下らない。
「それを今から作ると言われるのですか」
「そう、なんとかならないかな」
私の答えに料理長は固まってしまったんだけど。
そう、もっと早く始めようとしたのに、フェリシー先生と王妃様に捕まってしまって、今まで延々に怒られていたのだ。
「判りました。私達も手伝わせて頂きます」
料理長はそう言ってくれたんまだけど、流石にそれは悪いだろう。
「いえ、あの、そうしないと明日の調理に影響が出ますから」
そう、料理長に断言されると私も断るわけにはいかなくなった。
「それに他国の王族の方もいらっしゃるということで、これは外交案件にもなりますから、下手なものは渡せないでしょう」
「えっ、そうかな。アイツラにはチョコレートの切れ端でも良いと思うんだけど」
「流石にそれはまずいでしょう」
私の言葉に料理長はそう答えてくれた。
そこからが凄かった。勢ぞろいした王宮料理人が一斉に鍋にチョコレートを砕いて入れて溶かしだしてくれたのだ。
型が次々に並べられ、その中に次々に流し込んでいく。その様は壮観だった。私なら到底こんなに早くできない。料理長が手伝ってくれた良かった。
料理長はその合間に業者に連絡して箱を準備してくれた。
私は返すリストを一覧にして作ってくれと頼まれたので早速作り出した。
料理長は料理がうまいだけでなくとても皆に対する指示も的確だった。
私は感心した。出来る人間はすべてこうなのだ。
「料理長は凄いわね。いつも思うけれど、的確に皆に指示ができて」
私はそう言って感心した。
「私も見習わなければ行けないわ」
私が言うと
「何をおっしゃっていらっしゃるんですか! 上に立つ人間でいちばん大切なのは、いかに下の人間を上手く使うかですよ。フランソワーズ様はそれが上手く出来ていると思いますよ」
料理長が褒めてくれるんだけど、
「そうかな、そんな事無いわよ。私ができないから皆が手伝ってくれるんだと思うんだけど」
弟のジェドにしろ義理の弟のヴァンにしろ友人のメラニーにしろ、皆私が困っているから仕方無しに手伝ってくれるのだ。
「手伝ってもらえるということは人望がある証拠ですよ」
料理長はそう言ってくれるんだけど、まあ、多少はあるかもしれない。
「それとフランソワーズ様。アドルフ様にもお礼を言っておいてくださいね」
「えっ、なぜアドなんかにお礼言わないといけないの? アドは忙しいから手伝えないってけんもほろろだったのよ」
私が料理長の言葉にムッとして言うと
「フランソワーズ様、殿下は絶対に言うなっておっしゃられていましたが、私の所に来て、頼むからフランソワーズ様を手伝ってやってほしいと仰られたんです」
「えっ、そうなの?」
それは知らなかった。
「そうですよ。いつもフランソワーズ様の事をとても気にかけていらっしゃいます」
「そうなんだ」
料理長に言われて私は少し恥ずかしかった。
「それならそうと、私に言ってくれたら良いのに」
照れ隠しにむっとして言うと、
「まあ、恥ずかしかったんじゃないですか? そういうお年頃だと思いますし」
料理長にかかったら、アドも私も子供扱いだったけれど、まあ、料理長とは子供の頃からの付き合いだ。甘えるのも良いかも知れない。
チョコレートはあれよあれよという間に出来上がっていった。
徹夜かなと思っていたのに夜更け前には出来上がっていたのだ。
私は皆にお礼を言って解散してもらった後に、そのまま一番大きなチョコレートの箱を持って王宮の階段を登った。もう遅い時間だったけれど、結構人はたくさん働いていた。
アドの執務室の前にいる近衛に手を上げて扉を開けると、一人で仕事をしていたアドが顔を上げてきた。
「終ったのか」
「うん」
私は答えると、アドの前に大きなチョコレートの入った箱を差し出したのだ。
「これは?」
「料理長に頼んでくれたんでしょ。そのお礼」
「あの料理長、言わなくてもいいのに」
ちょっとムッとしてアドが言うんだけど、
「アドも料理長に頼んでくれたんなら言ってくれれば良いのに」
私が少し拗ねて言うと
「そんなの恥ずかしくて言えるか」
そう言うアドのしぐさが可愛くてそのまま頬にキスしようとしたら、唇を合わされてしまったんだけど……
えっ、まあ、何回もしているから良いけど、少し恥ずかしい。
「もういきなり」
私が少しむっとして言うと
「キスしてきたのはフランだろ」
「ほっぺたにしようとしただけなのに」
そう文句を言う私は、アドに抱きしめられて椅子の前に座らされてしまった。
「一緒に食べるか?」
「うん」
それから二人で食べさせ合いをしてチョコレートのような甘い時間をすごしたのだ……
後で近衛騎士団長に騎士の前であまりイチャイチャされるのも困りますと文句を言われたんだけど、偶にはいいはずだ!
ここまで読んで頂いて有難うございます。
たまにアドとフランの甘い時間でした……
さて、新作始めました
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』
https://ncode.syosetu.com/n9991iq/
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「3日後の卒業パーティーでお前のエスコートは出来ない」子爵家のエリーゼは婚約者の第一王子から宣言されてしまった。そんな、このままではゲーム通りにその卒業パーティーで皆の前で断罪されて最悪処刑されてしまう。そんな事になったらお母様と約束した事も守れないじゃないかと、エリーゼは絶望した。しかし、そんなエリーゼの元に超過保護な義兄が現れて話はますますややこしくなっていく。更に今まで厳しかった義兄がやたらエリーゼに優しいんだけど、何か変だ。
第一王子はエリーゼを帝国の公爵家の傍流に過ぎないと思っていたのだが、実はエリーゼの正体は……ヒロインの正体とその義兄の正体が判明した時、馬鹿にしていたこの国の貴族たちの間に激震が走る!
果たしてこの危機をエリーゼは義兄とともに乗り切れるのか?
ヒロインを守るために命をかける義兄の愛、ハッピーエンドはお約束です。
最後まで読んで頂けたら嬉しいです。