【書籍化発売記念】人が話している時に攻撃してきた礼儀知らずな古代竜を張り倒しました
ギャオーーーー
咆哮が空から響いた。
「えっ、何これ?」
「凄い声よ」
「どうなってるの?」
みんな慌てて窓に取りついて外を見た。
でも、外は暗くてあまり見えない。
ガスが出て来たみたいだ。
薄っすらと外は白くなっていた。
キーーーーン
という音と
バサバサ言う音が遠くから聞こえた。
私は巨大な塊が空から近づいてくるのを感じたのだ。
外を見ると薄っすらと赤い物が飛んでいるのが見えた。
「げっ、何だあの赤いのは?」
「空飛ぶ化け物ってなんだ?」
アルマンらが叫びだした。
「大変ですわ。魔の森には竜がいると聞いています。これは竜なのではないですか」
ジャッキーが真っ青になって聞いてきた。
「やっぱり竜よね」
「でも、あれまだ、遠いよな。それであの大きさだと相当でかいんじゃないか」
アルマンが言うんだけど。
ギャオーーーー
その時、また咆哮が響いた。
今度は馬車まで揺れる。
だいぶ近くなった証拠だ。
「フラン、さすがにこれはまずいんじゃない」
メラニーが聞いてきた。
「あのでかさは古代竜じゃないか?」
「古代竜ならば一個師団でも勝てるかどうかだぞ」
バンジャマンが言う。
「帝国では精鋭の第二師団が古代竜に殲滅されたって話だし」
それは母のペットのギャオちゃんの仕業だ。
「そんな、こっちは騎士が20騎しかいないわ」
「いや、俺らもいるから30騎だ」
アルマンが言ってくれるんだけど……。
「あんたらまだ見習いじゃない」
「そうよ。それに20でも、30でも変わらないでしょ」
「まあ、そこは……」
ソレンヌとノエルに突っ込まれて言い返せなかった。
「このままじゃまずいわ」
「逃げないと」
馬車の中はパニックみたいになっていた。
馬車は猛スピードで駆けだしたんだけど。
山道でそれは良くないのでは?
それにこのままでは確実に追いつかれる。
「フラン、どうするのよ?」
メラニーが聞いてきた。
「うーん、一度古代竜とはやり合いたかったのよね」
私はうきうきして言った。
「えっ?」
「さすがにフラン、古代龍相手ではまずいんじゃないか」
「いくらフラン様が最強でも相手が悪いかと」
みんな心配して言ってくれたんだけど。
でも、そんな事は言ってられないだろう。
竜が待ってくれるわけでもないし。
「でも、やるしかないみたいだし」
「まあ、フランなら、戦えそうな気はするけど」
「周りを廃墟にするのだけは止めてよね」
メラニーのひと言はなんか酷いような気がするんだけど。
私は馬車を止めるように御者に言った。
「いや、フランソワーズ様、勝手なことは止めて下さい」
私らの馬車の前にいた騎士が止めてきた。
「何言っているの!どのみち追いつかれるんなら、ここで叩き潰すわ」
「しかし、これは子供の遊びでは無いのです」
騎士が叫ぶ。
本当に離宮の騎士は面倒だ。
中央騎士団なら一言で終わりなんだけど。
私は扉を開けるや飛び降りた。
「ちょっとフラン」
メラニー達か叫んでくれたが無視した。
魔術を使って空中で制御をかけて、なんとか無事に着地する。
しかし、後ろを走っていたおばあちゃんの馬車までもが急に止まったのだ。
「ちょっとフラン、危ないわ」
おばあちゃんが窓から顔を出して私を止めようとしてくれた。
「いくらあなたでも、古代竜は無理よ」
「大丈夫よ。おばあちゃん。ここは任しておいて」
私は叫んだ。
「ちょっとフラン、本気出したら駄目よ」
メラニーが前の馬車から言ってくれるんだけど。
「メラニー、いくらフラン様でも、ここは本気出さないと」
「何言っているのよ。ジャッキー、フランが本気出したら、周りは草木一本残らないわよ」
後ろで二人が何か言い合っているんだけど。
「ちょっとフラン、危ないから」
おばあちゃんが馬車から降りようとした。
「おばあちゃん、下がって!」
私が叫ぶが、おばあちゃんは聞かないみたいだ。
これだったら誰か一人おばあちゃんにつけていれば良かった。
私は後悔した。
慌てておばあちゃんに駆け寄る。
「フラン、ここは騎士たちに任せて下がるのよ」
「私は大丈夫よ」
おばあちゃんに私は反論するが、
「でも、王妃教育で習ったでしょ。王族は騎士を盾にして逃げろって」
「なら、おばあちゃんこそ、逃げてよ」
「若いあんたを残していくわけには行かないでしょ」
私はおばあちゃんと言い合いになってしまった。
「王太后様」
騎士たちが慌てて叫ぶ。
私達がその声に上を見ると
ギャオーーーー
そこへ古代竜が襲いかかってきたのだ。
私達が話しているところにだ。
「うるさいわね」
「黙っていなさい」
おばあちゃんの手からは雷撃が、
私の手からは爆裂魔術が古代竜に襲いかかったのだ。
ドカーーーーン
魔術の2撃を食らって、古代竜は横っ面をひっぱたかれたように弾き飛ばされたのだった。
王太后も魔術師でした……