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【つぎラノ】【書籍化】web版 悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~  作者: 古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄されたので義理の兄が激怒して
第四部 古の古代帝国公爵家の野望

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閑話 アド視点6 キョトンとする婚約者に見惚れて、クイズ戦で腹黒弟に負けて優勝をさらわれました

俺は夢を見ていた。


女の子に抱きつかれて腕に柔らかい物が当たっている。何故か俺はにんまりしていた。

そう、これはフランに無いものなのだ。


そう、フランに……


やばい!


そう思った時だ。


バシン!


頬を思いっきりフランに殴られていた。


はっと目を覚ます。


「殿下、大丈夫ですか?」

俺は目の前にクラリスのドアップの顔が見えた。


そして、でかい胸も。


そのはるか向こうから鋭い視線を感じる。


やばい!


この視線はフランの怒りだ!


俺は慌てて飛び起きた。


「クラリス嬢、もう大丈夫だから」

俺は頭を振って立ち上がった。


しかし、いきなり立ち上がったからか、ふらついてしまった。


それをクラリスが慌てて支えてくれた。それも胸を押し付けて。


こいつ、わざとやっている?


でも、何故、真面目なクラリスがこんな事をするんだ? ピンク頭の聖女ならばまだ判るんだが……


俺にはわからなかった。というか、それどころではなかった。


フランの怒りの視線がもろに俺に突き刺さっているのだ。下手したらまた鉄拳が飛んでくる。


「大丈夫だから」

俺は慌ててクラリスから離れた。


フランの方を見ると

「ふんっ」

と顔を逸らしてくれた。


結局、剣術戦はフランの圧勝だったみたいだ。


俺はフランと戦う事すら出来なかったのだ。


俺は忸怩たる思いだった。



こうなったらもう最後のクイズ戦にかけるしかない。


去年はフランのクラスに負けたが、さすがに今年は最終学年。フランのクラスに負けるわけには行かなかった。


何しろ現段階でわがクラスはトップだ。


ついで魔術戦で公国の娘が優勝した1年生A組。

第三位は癒やし魔術で優勝したピンク頭の聖女のいる二年A組。

A組がベスト3を独占していた。

フランの2年E組は第四位で、我が3年A組と50点差だ。


幸いなことにクイズ戦に反射神経抜群のフランはいない。

という事は我がクラスにも十二分に勝機はあった。


「私は今年卒業の殿下のいらっしゃる三年A組をかっているんですが、殿下は先程の剣術戦で負けたショックをひきずっていらっしゃらないと良いんですが」

「クラリスさんがヒールしていらっしゃいましたよね」

「聖女であるローズさんが殿下にヒールをかけなかったのは、負傷した殿下の方が、二年A組が優勝し易いと思ったからですか?」

「いやだ! そんなわけないですよ。私もやりたかったんですけれど、クラリスさんがやりたいって立候補されたから譲って上げたんです」

司会たちが好きに言ってくれているが、何かフランの視線が気になる。


「殿下。大丈夫ですか?」

ララが俺の汗を拭いてくれた。

「有難う」

俺は思わず礼を言ったが、


「おーっとララさんは先程剣を投げられた意趣返しでしょうか。殿下の婚約者の前で殿下とイチャイチャしていますが」

「それをフランが睨みつけていますね」

司会たちが騒いでいる。

これはやばい。


「ちょっと待て、フラン。俺はだな」

「ふんっ」

フランは目も合わせてくれなかった。

これは絶対にやばい。


「では第一問です」

「我が国の南にある我が国と交易している国は」

俺は焦っていたのだ。思いっ切りボタンを押していた。


「ピンポン」

「はい、殿下」

「ルートン王国だ」

ブブーー

間違いのベルが鳴る。


「な、何でだ?」

「まだ、問題の途中です」

「な、何だと……」

そんな馬鹿な。俺としたことが途中で押すなんて。

俺はやはり動揺していたのだ。


2回休みだ。


しかし、休みの後は得意の計算問題だった。


「第四問です。10の10乗は」

ピンポン

「はい、復活した3年A組」

「100億です」

「ハイ正解」

「流石に殿下計算高いです」

「その計算高さでフランを諦めて早くもララさんに乗り換えたんですね」

司会の言葉尻を捉えてピンク頭が言ってくれた。


「ちょっと待て、司会。俺はフラン一筋だぞ」

待て待て! 俺は文句を言うが、もう今は問題に集中だ。ピンク頭の挑発にはのらない。


それからは好調だった。


12問終えたところで三年A組が四問、二年A組が三問、一年A組と一年E組が二問だった。

フランの早押しがない分E組は苦戦していた。

このままなら何とかなるだろう。

と思っていた矢先だ。


「学園長先生の座右の銘を次から選んで下さい。1.為せば成る 2.千里の道も一歩ずつ 3.長い物には巻かれろ」


「そんなの長い物には巻かれろに決まっているじゃない。いつも陛下の取り巻きやっているし」

フランが訳の分からないことを言っているが、そんなわけは無い。あの学園長がそんなことを言うわけは無いではないか。

ここは教育者だから努力が大切という事で絶対に二番だ。あの学園長の事だから一つずつ確実にやっていけば良いと言うつもりだ。



しかしだ。答えはフランの言ったとおりだった。何でだ?


「正解は3です。長い物には巻かれろ」

「ええええ! 学園長がそんな心構えで良いんですか」

「うそ!」

「それはないだろう」

俺は叫んだが、ゴンドラが一気に下がる。

「学園長先生。これは本当なんですか」

司会が聞く。


「学園長はおべっか使いだから仕方がないよね」

「何を言っているフランソワーズ君。それは違うぞ」

学園長がフランの言葉に反論してきた。


「これはエルグラン初代国王陛下の座右の銘なのだ」

「えっ」

「そんなのあったか」

俺は知らなかった。シルヴァンも変な顔をしている。絶対に何か胡散臭い書物を掴まされたのだ。たまに学園長はあやしい骨とう品か何かに引っかかっているのだ。


「陛下は20年間、前王朝の圧政に我慢されたのだ。その時の初代ラクロワ公に『力のない時は長い物に巻かれて、我慢するのです』と言われて必死に耐えられたのだ。私もそれにあやかって、その言葉を使っているのだ」

学園長はそう胸を張って言うが、絶対に嘘だ。シルヴァンの顔もそう言っていた。


「へええええ、じゃあ学園長は今は何に耐えられているの?」

フランが余計な事を言っている。


「そんなのフランのわがままに決まっているだろう」

「そらそうだ」

バンジャマンとアルマンが言ってくれた。

それは俺も頷かざるを得なかった。

フランの突拍子もないことに学園長は翻弄され続けている。

訓練場を2回も壊されるや外国に留学したいと言い出すわ、学園長も次は何をやってくれるか気を休める暇もないんだろう。

頭が薄くなってきたのも絶対にフランのせいだ。


本人は全くそうだとは思ってもいないみたいだが……



「さて、第14問です」

「フェリシー先生は二年生の学年主任の先生ですが、厳しいことでも知られています。一年A組のとある生徒が1ヶ月間補講を受けたのでも有名です。さて、そのフェリシー先生にこの4月から一番叱られた生徒のいるクラスを次から選んで下さい。1.一年A組、2.一年E組、3.二年E組」

「そんなのエーリックのいる1年A組に決まっているじゃない」

フランだけだ。そんなこと思っているのは。

みんな判っているのだ。これ間違えた奴は余程の馬鹿だ。


「ええええ!」

みんなの回答を見て、フランだけが叫んでいた。

なんと全面『3』になっているのだ。

「ちょっとどういう事よ。メラニーまで3にするなんて」

フランが叫んでいるがそれは仕方がないだろう。


「いやあ、すごいですね。1や2を押したのは0クラスって言うのも」

「まあ、私でもフランだと判りましたから」

司会とピンク頭がそう言っている。


「なんでそうなるのよ」

フランの叫び声だけが響いていた。



「では第15問です」

「昨年、1学期のテストで一年E組が本校始まって以来初めて平均点で一位を獲得した事は皆さんの記憶にもあると思います。その一方でわが校の歴史始まって以来の最低点を取得した生徒がいるのも事実です。その者のいるクラスは次のうち何クラスでしょう。1.二年A組、2.二年C組、3.二年E組」

「こんなのフランのいるE組に決まっています」

ピンク頭が言っているが、本人が言うなよ。俺は言いたくなった。


この問題、良く知らない1年の一部がフランだと思ったみたいだが。

馬鹿だ。フランは俺に比べれば点数は低いが、大半の生徒よりも頭は良いのだ。


「はいっ、正解は1のAクラスです」

「ええええ! 誰よ。グレースなの」

最後までピンク頭は叫んでいたが……



三択問題が終わって、

「さあて、ここ現在は2年E組がトップです。1問差で三年A組と二年A組、二問差で一年A組とE組です」


三択は2年E組が得意だったみたいだ。

学園長の座右の銘が効いた。

だがまだ十分に逆転圏だ。


ピンポンピンポン

そこでチャイムが鳴った。

最後の特別問題だ。

これを取れば優勝だ。

俺は絶対に勝つ気でいたのだ。


「では、特別問題です。我が国エルグラン王国の初代国王陛下の名前はフェリペ、では第31代国王陛下のお名前は何でしょう」

俺は押そうと思ったのだ。

でも、全くわかっていないキョトンとしているフランを視界の隅に入れてしまって押すのが遅くなったのだ。

キョトンとするフランは昔からとてもかわいいのだ。

その可愛さに思わず、ボタンを押すのが遅くなったのだ。


でも、現国王が31代だという事くらい覚えておけよ。

未来の王妃だろうが!


さすが俺は言いたかった。

ボタンを押すのが遅くなった俺はララに白い目で見られるし。

いや、俺は知っていたよ。

知らないのはフランだけだ。そのフランに見とれてしまったのだ……


俺は最後の最後で腹黒い弟に優勝を持っていかれてしまったのだった。


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