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陛下の執務室に乗り込んで、引退するという公爵と令嬢を強引に撤回させました

私は寮の部屋を出ると走り出した。

確かにクラリスには色々言われたけれど、あれは呪いの髪飾りのせいだ。

それに無茶振りをいろいろしていたのは私とグレースで、確かにそれで振り回されていたのはクラリスなのだ。はっきり言って彼女は被害者だ。


そこをカミーユや呪いの髪飾りに付け込まれて最終的には魔人となってしまったけれど、それで処刑は無いはずだ。

何しろ彼女も可愛い後輩なのだから。



頭に血の登った私は完全に周りが何も見えていなかった。


校門のところに行ったが、生憎と馬車は無かった。あれば馬車を拝借しようと思ったのに……


馬術部に行って馬を連れてくれば良かったと一瞬後悔したが、今はそれどころではなかった。時間は一分一秒が惜しい。



「ええい、こうなったら仕方ないわ」

私は腹をくくった。

そう、私は王宮に向かって駆けだしたのだ。

絶対にクラリスを死なすわけにはいかないと心に決めて。


勝手に、クラリスの処刑なんて許すわけはない。何のために私が苦労して、魔人から救いだしたと思っているのよ!


私は怒りに燃えていた。


途中で人は轢かなかった? と思う。

何しろ私が本気出して駆け出すと馬並みのスピードなのだ。


王宮の門の前で誰何されそうになったが、


「退いて!」

叫んで、門番と騎士を退けた。

門番らは唖然としていたみたいだけど。

自分の命を取ったみたいだった。


私はそのまま王宮に飛び込んだのだ。


そのまま陛下の執務室に向かう。


執務室の前では騎士たちがぎょっとして私を見た。


「ええい、そこをどきなさい」

「いや」

「ちょっとフラン様」

私の形相に驚いたのか、騎士たちは慌てて飛び退いた。


私はそのまま陛下の執務室の扉を蹴破っていたのだ。


ドカーーン


という音とともに、扉が吹っ飛んでいた。


またやってしまった。でも、今はそれどころではないのだ。


「陛下、クラリスが処刑になると聞きました。どういうことですか?」

私は唖然として私を見ているソファの上の陛下を見つけると陛下に近付いた。


「えっ、いや、そのような事実はないぞ」

陛下は私の剣幕に慌てて答えた。


「そうなのですか? でも、巷ではそのようなうわさが出ているそうですが」

私はさらに陛下に近付く。


「いや、処刑も何もクラリス嬢はここにいるが」

「えっ」

私は陛下の前に座っているクラリスを見た。


「フランソワーズ様。このたびは本当にいろいろご迷惑をおかけしました」

立ち上がったクラリスが私に深々と頭を下げて来たのだ。


「良かった。クラリス」

私はクラリスが無事だったのを知って思わず抱きついたのだ。


「フランソワーズ様」

クラリスは驚いて私を見た。


「あなたが処刑されるかもしれないと聞いて心配で飛んで来たのよ」

涙目で私は言ったのだ。


「御心配をおかけしました。陛下のご配慮で私、修道院に入ることにしたのです」

「えっ?」

クラリスの言葉に私は驚いた。修道院に入るという事は俗世を捨てるという事で二度と貴族界には戻ってこないという事だ。まあ、ピンク頭のように戻ってきた例はあるが……



「クラリス嬢は今回魔人になって人々を傷つけたのは全て自分にあると責任を取ろうというのだ」

「そんな。クラリスは旧帝国の呪いの髪飾りのせいで魔人になっただけで、別に何も悪くないではないですか?」

陛下がおっしゃるんだけど、そんな責任はクラリスに呪いの髪飾りをつけさせた大公らに取らせれば良いのではないか?


「此度の事はクラリス嬢にカミーユが呪いの髪飾りをつけさせた事に原因があるとはいえ、クラリスが付け込まれたのも事実。奴らの兵士たちを学園に引き入れて事をなす手助けをしたのも事実なのだ。本来ならば反逆罪に加担したという事で死罪じゃが、情状酌上の余地もあるので、修道院に入るという事で事を収めようと思うのだが」

陛下が説明されるけれど、私はなっとくいかなかった。


「私も今回の責任を取って引退しようと思います」

その横でトルクレール公爵も言ってくれるんだけど。

その横で陛下が頷いているんだけど、それで良いのか?


「陛下。トルクレール公爵のが引退されるには少し早すぎるのではありませんか」

私は思わず言っていた。


「しかし、フランソワーズ嬢。クラリスがこのような事をしでかしたのだから、引退も致し方ないのでは」

「しかし、我が父とそちらのラクロワ公爵が喧嘩しだしたら誰が止めるのですか? 陛下がその責を担われるのですか?」

私の言葉に陛下はぎょっとした顔をした。

ラクロワ公爵も嫌そうな顔をしている。


「えっ、それは無理だろう」

「無理とおっしゃられても、ガメラ対ギャオスを止められる者など他にいらっしゃいませんが」

「何じゃ、そのガメラとかギャオスというのは」

陛下が驚いて聞いてきた。


「では騎士団長がその任に当たられますか」

「滅相もございません。私では到底お二方には太刀打ちできません」

私がふると中央騎士団長は即座に否定した。

「では外務卿が」

「フランソワーズ嬢。私には到底出来るわけはないかと」

必死に外務卿も逃げようとしている。


「ではやはり陛下しかいらっしゃいませんが」

「何故私になる。フランソワーズ嬢でも止められるのではないか」

陛下が私に振ってきたんだけど。


「怒り狂った父を私が止めようとしたら下手したら王宮が崩壊する可能性がありますが」

「……」

皆私の言葉に絶句した。


でも、みんなその可能性は十分にあると思ったのだ。

何か顔が青い。


「そもそも、今回クラリスが付け入られた原因は私とグレースがクラリスに無茶振りしていたのも一端はあるかと」

「グレースは関係なかろう」

ラクロワ公爵が話してきたが、


「閣下は自分の娘だけを庇われるのですか」

私が白い目で見ると


「それは多少はあったかもしれないが、フランソワーズ嬢が、中等部の生徒をダンジョンなんかに連れて行ったのが、一番大きな原因ではないのか」

「まあ、そうかも知れませんが、閣下はグレースに責任が全然ないとおっしゃるのですか」

「いや、そこまでは言わんが」

私の言葉に流石に頷けなかったようだ。


「なら良いではないですか。トルクレール公爵家にはいつも我が家と閣下が喧嘩した時に仲裁に入ってもらっているんですから。もしここで引退されたら、陛下が仲裁されることになりますよ。陛下にご迷惑をおかけして良いとおっしゃるのですか」

「いや、そうは言わんが」

「あっ、そうだ。うちの父と閣下に言うことを聞かせる人を思い出しました。王太后様にお願いします」

私はちょうどよい人物を思い出していた。


「ちょっと待て、フランソワーズ嬢」

陛下がぎょっとして口を挟んできた。

「そうだ。フランソワーズ嬢。グレースにも確かに悪いところはあったと思うぞ」

「だから、何も王太后様に御出になってもらわなくても」

「そうです。そのような恐れ多い」

皆必死に避けようとしだしたんだけど、何でだろう?


「えっ、そうですか。私は久しぶりに王太后様にお会いしたいんですけど」

「トルクレール公爵の引退はまだ早すぎるな」

私の言葉に陛下が慌てて前言撤回しだした。


「そうでございますな。クラリス嬢の件にしても、まあ、フランソワーズ嬢とグレースがもう少し気を使えばよかったということで1ヶ月の修道院での奉仕で良いのではありませんか」

修道院に入ると言うクラリスと引退するというトルクレール公爵を周りの人間は脅し透かしてなんとか撤回させてしまったのだ。


私はこれで全てが丸く収まったと思ったのだ。私は肝心な人のことを忘れていたのだ。








すみません。

最後が残りました。

明日完結になります。


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