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平民の後輩視点 命の恩人の公爵令嬢を繰り人形になって殺そうとしてしまいました

私はヴァネッサ・ジボール、港町トゥーロン出身の平民だ。


父はすでに亡く、母と妹の三人で生活していた。しかし、妹は病弱で一度医者に診てもらうと、高価な薬を飲まないと三年ともたないと言われたのだ。

でも、そんな薬を買う金なんて我が家には全然無かった。


母も私も途方に暮れたのだ。


そんな時だ。親切な神父さんに助けられたのは。

なんと、ズンダーラ教の神父さんが薬をくれたのだ。

更に、神父さんは親切にも魔力の高い私に勉強を教えてくれて、王立学園に入学できるまでにしてくれた。その時は私には感謝の言葉しかなかった。


「神父様、私達にしていただいたことはどれだけ感謝してもしきれません。何とお礼を言ったらいいか」

私はトゥーロンを出て王立学園に向かう前に神父様に感謝の言葉を伝えたのだ。


「ヴァネッサ、全ては神のお導きなのです。私にお礼を言う必要はありません」

神父さんは本当に神の使いのようだった。


「そうは言われても」

私は戸惑った。


「そうですね。どうしてもというのならば、何時か神のために必要な行いをすることをお願いするかもしれませんが、その時はよろしくお願いしますね」

神父様が真剣な顔をして頼んできた。


「判りました。なんでも言ってください。なんでもしますから」

私はそう言ってしまったのだ。

そう、その時はこんなことを頼まれるなんて思ってもいなかったのだ。



学園は貴族の方もいらっしゃるという事でとても緊張した。

でも、いろんな人に会えるのが楽しみでもあった。

私は早くに目が覚めてしまって、まだ早すぎると思ったのだが、早めに寮に行ってしまったのだ。

絶対に迷惑だったと思う。


そんなところでお会いしたのが、フラン先輩だった。先輩は姉御肌で、とても気さくな方だった。

一学年先輩で、同じEクラスだって聞いたからてっきり平民の先輩だと思ったのだ。



でも、そのフラン先輩が、食堂でこの国の第一王子殿下に頭を下げさせているのを見て私は唖然とした。


流石に姉御でもこれはまずいのでは。とフラン先輩のために思ってしまったのだ。

でも、先輩方はそれを見ていても何も言わないのだ。と言うか、いつもの風景を見ているみたいに無視しているようにも見えた。絶対に変だった。


「どうなっているの?」

私は隣の席の子に聞いたら

「何言っているのよ。あなた知らないの?」

その友達は呆れて私を見てきたのだ。


「あの方は第一王子殿下の婚約者のフランソワーズ・ルブラン公爵令嬢じゃない」

「えっ、じゃあ破壊女」

別の子が思わず言ってしまった。


「それ、帝国がそう呼んでいるんでしょ。彼女は我らの金髪のヒロインよ」

「えっ、じゃあ、侯爵の反乱を未然に防いだのも」

「そうよ」

「じゃあ、アルメリア王国の海賊を粉砕したターザン女なんだ」

皆好きなことを言っている。


何か褒めていない言葉もあったけれど、フラン先輩は我がエルグラン王国の誇るスーパーヒロインだったのだ。

そして、未来の王妃様だったなんて!


「嘘! 私その未来の王妃様にカバン持ってもらった」

私が言うと


「私もよ、とても気さくな方よね」

「まあ、平民と仲良くしすぎるって貴族の方たちの人気はもう一つだつて言うけれど」

「でも、そんな方と一緒に学べるなんて凄いじゃない」


「そんな事言ったら私達のクラスには第二王子殿下もいるし、そのフランソワーズ様の弟君で未来のルブラン公爵様もいるのよ」

「本当にこの王立学園は凄いわね」

私達はため息をついた。



そして、自分の両親から結構相手を見繕えと言われている下位貴族の子たちは必死に殿下たちにアプローチして轟沈していた。

でも、私はこの学園で楽しく過ごせて、好成績を上げて王宮にでも勤められればいいなと思っていた。


フラン先輩は公爵令嬢だと知れ渡っても私達に対する態度は変えられなかった。

本当に気さくな方だ。

そんな彼女に勉強を教えてくれるといわれた時は驚いた。

そんなの未来の王妃様に教えてもらえたら、一生の自慢ごとだ。


でも、フラン先輩は流石に物理は苦手みたいで、かわりに第二王子殿下や未来の公爵様から教えて頂いた。それだけでも、一生自慢できる。Eクラスで本当に良かったとおもった。

周りの皆からも羨ましがられたけれど。



そんな中、私は荒くれ者に拐われたのだ。


私は奴らの慰み物になろうとした時だ。

フラン先輩が助けてくれた。

白馬に乗ったフラン先輩が扉から突入してくれたのだ。

本当にヒーローみたいな登場の仕方だった。

私は更にフラン先輩の崇拝者になったのだ。



しかしだ。サマーパーティーを前にフラン先輩は第一王子殿下とキスしたからと反省房に入れられた。


たかだかキスくらいで、と私は思ったが、噂では裸で第一王子殿下と抱き合っていたとか、それは絶対に無い。私はそんな下卑た噂を流していた男のやつを睨みつけていた。

それにこのクラスにはフラン先輩命の第二王子殿下や弟君のジェラルド様がいるのだ。下手な噂をするものはあっという間にいなくなった。



でも、そんな時だ。トゥーロンの神父様が私を訪ねてきたのだ。


私は喜んで神父様を迎えた。

「ヴァネッサ。私はあなたに頼みがあってきました。私が指示する食事をルブランの小娘に差し入れてくれますか」

私は最初、神父様が何を言ったか良く判らなかった。


「我が神の敵、ルブランの小娘を毒殺してほしいのです」

私のポカンとした顔に神父様は不敵な笑みを浮かべられて再度言ってくれた。


「えっ、しかし」

「ヴァネッサ。あなたは私の頼みなら何でも聞くと言いましたよね。あれは嘘だったのですか」

私は初めての神父様の高圧的な態度に驚いた。


「しかし、フラン様は未来の王妃様です」

私は必死に言い返した。


「何を言っているのです。ルブランの小娘は教皇猊下の敵なのです。あなたは妹や母親の命が惜しくないのですか」

私は顔が笑っているが、目が笑っていない神父様を初めて見た。


そして、絶対に逆らったら妹も母も命がないのを悟ったのだ。

神父様はこの時のために、私に優しかったのだ。


でも、私には、優しくしてくれた未来の王妃様を殺すなんて出来る訳はなかった。

そもそも、フラン先輩は命がけで私を助けてくれた命の恩人なのだ。そんな方を裏切れるわけはなかった。私は妹と母に心の中で謝った。


「神父様。やはり私には……」

私は神父様に断ろうとした時だ。


神父様の目が爛々と輝きだしたのだ。


私はその瞬間意識が霞んだのだ。



次に気付いた時は神父様に連れられてワゴンを押してフラン先輩の前にいたのだ。

だめだ。この食事は毒だ。フラン先輩に食べさせてはいけない。


私はそれを伝えようとしたが、私の意志に関係なく、体が勝手に配膳していくのだ。

私は焦った。でもどうしようもなかったのだ。

必死に「食べないで」と叫びたかったが、叫べなかった。

私は神父様の繰り人形になったみたいだった。


私は必死に悲鳴を上げたが、フラン先輩には全く伝わらなかった。

その毒の盛られた食事をフラン先輩はむさぼり食うように食べだしたのだ。


そんな、馬鹿な。優しいフラン先輩が死んでしまう。

私は必死に体を動かそうとした。でも、体はびくともしなかったのだ。

そんな。私は絶望に囚われた。


でも、いくら食べてもフラン先輩はびくともしなかった。

私はほっとした。毒が少ないか何かの手違いがあったのだ。

横の神父様はとても慌てていた。


良かった。私は少しホッとした。


しかし、今度は慌てて食べすぎたのか、フラン先輩が喉につまられたみたいで苦しみだした。


「今です」

神父様はこの機を逃さないかのように私に指示をした。


私は私の意志に関係なく神父様の合図で、傍にあったナイフを掴んで振りかぶるやフラン先輩に突き刺しそうとした。フラン先輩はつまらせて苦しんでいるところで避けようがなかったのだ。


そんな馬鹿な。止まれ!


私は心の中で叫んだが、止まらなかった。

ズブリ

そのままナイフを突き刺したのだった。


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