アド視点4 婚約者とデートの途中で王弟の息子と公爵家の娘に出会いました
「何なのよ。アド。最悪だったじゃない。これならアドがいないほうが余程良かったわ」
補講が終わった後、食堂で俺はフランに散々文句を言われていた。
元々、俺を補講に呼んだフランが悪いんじゃないかと言いたかったが、そんな事言った日にはキスさせたくせに、とかまた機嫌を損ねそうだ。
俺はここはフランの機嫌を直させることに注力することにした。
「まあ、フラン、そう怒るなよ。お詫びに今度奢るから」
「えっ、本当に」
フランはすぐに食いついてきた。本当にフランは食い物につられやすい。
「ハッピ堂が市内にカフェをオープンしたんだ。その招待券があってさ」
「うそー。行くわ。絶対に行く!」
ということであっさりと許してくれた。
ここで新入生たちにも俺達がいかに仲が良いかを知らしめる必要がある。今はフランに手を出そうとしている輩はいないみたいだが、何しろフランは人気がるあるのだ。俺の婚約者だと改めて周知徹底しないと。
「なんかデートしているみたいね」
でも、フランがそう言ってくれた。一体どういうつもりなんだ!
こいつにも思い知らせる必要がある。
「何言っているんだ。婚約者と手を繋いで二人でいるんだから完全にデートだろ」
「まあねそうだけど。でも、昔からよく二人で街にも降りているから」
「昔からデートだ。俺はそのつもりだった」
俺はフランの言葉にはっきりと言ってやったのだ。
そう、俺は昔からフランとはデートのつもりだったのだ。
視察という言い訳の名のもとに。
そして、ハッピ堂カフェの前の大画面を見てフランは唖然としていた。
小さい頃の俺が王宮の庭園をバックに映っていた。
そして、いきなりフランの前で跪いたのだ。
「フラン、僕と婚約してください」
「はい、私の王子様」
そう言って小さいフランが俺の手を取ってくれたのだ。その時の映像だ。
フランは本当に可愛かった。
「きゃあ」
「可愛い、王子様」
「フラン様もおませ」
観客が声を上げてくれるし。
フランはもう真っ赤だ。
ここまでやれば嫌でも俺の婚約者がフランだと判るだろう。
本人も含めてだ。
何しろこの大画面を王都内の若者に人気の店で大々的に流しているのだ。
婚約11周年のテロップとともに。
収益の一部を孤児院に寄付しているとの一言でフランは抗議の声も上げられなかった。
そこで二人で食べさせやって、更に二人の仲を周りに見せつけたのだ。
「殿下」
「期待してます」
「頑張って下さい!」
観客の声援に答えつつ、ここまでやれば手を出す奴らはいまい。
俺はほくそ笑んだ。
そんな中だ。俺の目が点になったのは。
とある高級レストランの前に馬車が止まって、中から、王弟の息子の所のカミーユが、なんと、調整のトルクレール公爵家のクラリスをエスコートして降りてきたのだ。
俺はびっくり仰天した。
確かにカミーユもクラリスも婚約者はいなかったはずだ。
二人が一緒にいても問題はない。
しかし、殆どを国外で過ごしていたカミーユと公爵家のクラリスが仲が良いとは聞いたことがなかった。
「ねえ、アド、カミーユとクラリスって付き合っていたっけ?」
フランまでが聞いてくる。
「いや、そんなのは聞いていないが」
俺らの目の前を二人は連れ立ってその高級レストランの中に入っていったのだ。
王弟は今まで国外にいたこともあってあまり、仲の良い貴族もいなかったはずだ。
王弟を次期国王に押す勢力もほとんどいないはずだった。
しかし、トルクレール公爵家はルブランとラクロワの間に挟まれて影が薄いとはいっても、エルグランでは一定の影響力がある。
何しろ腐っても公爵家なのだ。
それも元々王族だ。
それが王弟の息子と婚姻を結ぶとなると押そうと思えば王弟を押す一大勢力になり得る。
無視できない勢力になるだろう。
まあ、ルブランにしてもラクロワにしろ王家の血は十二分に引いてはいるが。
俺はフランとデートしながらそのことの意味を考えていたのだ。
フランと夕焼けを見ながら俺は早急にこの事を調べる必要性が出てきたと思ったのだ。
ここまで読んでいただいて有難うございます。
次回はフラン視点です。
明日更新予定です。