皆のためにやったつもりが礼儀作法の先生の補講が更に近付くことになってしまいました
その日の放課後、図書館には我がクラスの有志40名、なんと全員揃っていたのだ。
「何でできるあんたがいるのよ?」
私が散々反対していたメラニーを咎めると、
「私も判らないところがあるのよ。別にいてもいいでしょう!」
ムッとしてメラニーが言ってくる。
「そらあいいけれど」
そして、ミーテイングルールの反対側には、お邪魔虫1名に、一年E組の39名が揃っていた。
何故か一年E組はヴァネッサ一人だけいないんだれど、どうしたんだろう?
「ジェド、ヴァネッサさんは?」
私が聞くと
「ああ、トゥーロンの出の平民の子だよね。姉上がかわいがっている」
「別の用ができたんじゃないですか」
ヴァンがあっさりと言ってくれるんだけど。
「変よね。昨日約束したのに」
私は戸惑った。あまりの私の教え方の下手さ加減に逃げ出したのだろうか?
彼女に限ってそんなことは無いはずだ。昨日は確かに約束したのだ。
「ちょっとフラン、お前、物理を教えて欲しかったら俺に言えよ」
横からお邪魔虫のアドが文句を言ってきた。
「はああああ! 私、対抗戦でのあなたの態度をまだ許していないんだけど」
私はムッとして言った。
そもそも、昨日、私が苦労して探している時はいなかったくせに、何故今頃出てくる?
その時に出て来なかったアドが悪いのだ。
「いや、あれは倒れてダウンした俺を看病してくれただけで……」
必死に言い訳するアドを私は無視した。
いてほしい時にいなくている必要のない時に出てくるなんて最低だ!
私は自分の都合で考えていた。
「そうですよ。兄上。昨日みたいにクラリスと一緒に仲良く生徒会室に籠もられればどうですか」
ヴァンが教えてくれた。
そうか、昨日は生徒会室でクラリスと二人だけで仲良くしていたんだ。
私はアドの事がよく理解できた。
「ちょっと待て! フラン、誤解だ。昨日生徒会室にいたのはいたが」
「さようなら」
私はアドの前で思いっきりドアを閉めたのだ。
「ギャッ」
アドは足を扉に挟んで悲鳴を上げたみたいだ。
ふんっ、いい気味だ。
「フラン、誤解だ。二人きりじゃなくてオーレリアンや、側近たちも皆いたって」
アドの悲壮な声が外から聴こえてくる。
「ララさんも一緒にいて楽しそうにしていたって僕は聞きました」
ヴァンが更に詳しい情報を教えてくれたのだ。
私が物理が判らなくて悶々としている時に、アドは生徒会室で楽しんでいたんだ?!
「フラン、誤解だから」
外から聞こえるアドの声を無視して
「外野はどうでもいいから、先生。授業をお願いします」
「じゃあ、姉上はこちらで」
「何言っているんだ義姉上はこちらで」
私がお願いするとジェドとヴァンで言い合いを始めたんだけど。
でも喧嘩をしている時間がもったいない。
「じゃあ、今日はヴァンに教えてもらうわ」
「ええええ!」
ジェドが文句を言って叫ぶが、ヴァンは満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ、早速始めましょう」
真ん中でさっと防音壁を張ってヴァンの講義が始まったのだ。
私はヴァネッサがいないことなど完全に忘れていたのだ。
「……というわけです。ご理解いただきましたか」
ヴァンの講義が終わった。
「比熱がなんとかわかったわ」
私は喜んだ。
アドに比べれば今ひとつだったが、物理の教師に比べれば天地雲泥の差があるほどよくわかった。
「本当に、殿下は教え方がお上手ですね。判らなかったところが良く判りました」
散々反対していたメラニーが感心して言うんだけど。
なんだかなと思わないわけでも無かったが。
「メラニー物理まで出来るようになれば無敵じゃない?」
ノエルが言うんだけど、確かにメラニーは今でも一位なのに、メラニーが苦手としている物理の点数が上がると更にメラニーが抜けなくなるのは確実だった。
とすると、クラス平均点でトツプに立たないと確実にフェリシー先生の補講となるのが決まったようなものだ。
「皆、一点でも多く取って絶対に平均点を上げるのよ」
私が顔をひきつらせて言うと、
「そうよ。夢の白鳥城に行くのよ」
「任せろ」
ノエルとかは言うけれど、古臭い城にそんな価値はないと思うのだけど、皆やる気になっているので、私は水を指すのは止めたのだ。