クラス対抗戦6 婚約者の仇を地面に這いつくばらせました
「アド!」
私はアドが負けたのを見て、思わず立ち上った。
即座にアドに駆け寄ろうとしたが、
「キャーーー」
「殿下!」
悲鳴を上げた女どもがアドに群がるのを見て、固まってしまった。
ついでにアドが女どもに世話されて喜んでいたのを思い出す。
そうだ。アドはあんなことではびくともしないだろう。
それに倒れても相変わらず、女どもに囲まれているなんて……
私はムッとしていた。
立ち上がれないアドを見ても、こいつ、女どもの同情を引くために倒れているのか、と思わず思ってしまうほど、心はやさぐれていた。
「そうよ、フラン。その怒りをあの顔だけ気障男に叩きつけてやるのよ」
なんか後ろでメラニーが私を煽ってくるんだけど。何か違うと思うんだけど。
なんだ、このむしゃくしゃ感は?
「さしもの殿下も婚約者を怒らせた事に気づいて動揺させられて、倒されてしまいましたね」
「1年A組もなかなかやりますね」
司会の言葉にピンク頭まで頷いているんだけど。
「そこの司会。これは俺の実力だ。勝手なことを言うな」
顔だけ気障男が叫んでいるんだけど。
「なんか言っていますけれど」
「破壊女にはどんな手を使ってくれるんでしょうか」
「ふんっ、破壊女なんかは一瞬で倒してやるわ」
興味津々の司会達にエーリックが叫んでいる。
まあ、そこそこ剣術は出来るみたいだ。
しかし、このエルグラン王国の最後の砦の騎士は私だけ。
それもルブランの名を背負っているのだ。
不甲斐ないアドが負けちゃって、責任は私の肩にかかっているんだけど。
「あなたのアドルフに対する態度が悪いから負けたんじゃないの?」
そう、王妃様に怒られそうだし。
負けたら、負けたで母も切れそうだ……
ここは負けるわけにはいかなかった。
「では、決勝を始めます。二年E組フランソワーズさん
私は審判の先生に呼ばれて前に出た。
「フランがんばれよ」
「絶対に勝つのよ」
「頑張って」
私のクラスを中心に声援が起こる。
「一年A組エーリックさん」
「キャーーー」
「エーリック様」
「素敵」
「がんばって」
一年生を中心に大声援だ。
「さあて、300年前に屈辱を受けた旧帝国の遺臣と、破壊女として名高いルブランの令嬢の戦いが今、始まろうとしています」
「私としては破壊女に負けてほしいんですけど」
煽る司会と落とすピンク頭。
「しかし、フランソワーズさんの戦績は凄まじいものがあります。
我が国の王太子殿下を張り倒すのは日常茶飯事、帝国の皇子や教皇猊下を張り倒し、近年ではアルメリア国王まで張り倒しています」
ピンク頭が余計なことをペラペラ言ってくれて、
「でも、張り手を出すのと剣術では違うと思うんですけど」
「まあ、そうなんですけれど、剣を掴んだフランの側には近寄りたくありません」
司会の疑問にピンク頭が言ってくれるんだけど……
「それは私もそうです」
司会まで頷いてくれた。
私は生きる狂気か!
倒れたアドの所にクラリスが近づいて、ヒールをかけるのが見えた。
クラリスがアドを抱きかかえるようにしているんだけど、なんで?
私が少し動揺した時だ。
「始め」
「ウオーー!」
審判の合図に雄叫びを上げてエーリックが斬り込んできた。
しまった! 私はアドをクラリスに抱きしめられて動揺していたのだ。
エーリックは凄まじい斬り込みだ。
私はその素早い剣たちを次々に受ける。
しかし、一方的に斬り込まれて、私は下がった。
「おおおお、フランソワーズ嬢苦戦か」
司会が叫ぶ。
「ちょっとフラン、何しているのよ。あんた負けたら学園の外壁10週させるわよ」
メラニーの叫び声が聞こえるんだけど。
「なんでそんな事させられないといけないのよ」
私はその言葉にムッとした。負けた奴はいっぱいいるのに私だけが罰ゲームは嫌だ。
集中しなければと思うのだが、視界の片隅でクラリスがアドに抱きついているように見えた。
今までそんな素振りは全く見せなかったのに。クラリスが抱きついている?
その私の動揺を見て取ったエーリックが
「隙きあり」
ニヤリと笑った。
剣を目にも留まらぬ速さで私に突き刺そうとした。
モロに食らっていたらいくら私でもひとたまりもなかっただろう。
でも、私はルブラン家のフランなのだ。
突っ込んできたエーリックを瞬時に横に躱すや勢いを殺せないエーリックの真上から剣を叩きつけたのだ。
その結果、エーリックは地面と激突したのだった。
動揺してもフランはビクともしませんでした。
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次はクイズ戦です。
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