うれし恥ずかし映像を皆に見られていたことを知りました
「フラン! あなたにあんなかわいい時があったなんて信じられないわ」
食事時に、いきなりシルビアが食堂に飛び込んできたんだけど、こいつも食事時を邪魔してはいけないという観点はないのか?
私は思わずシルビアを睨んでしまった。
やっぱり王族って人の食事時を邪魔するのが趣味なんだろうか? 我が国の陛下といい、この国の陛下といい、それにこいつといい。皆そうだ。
私の一番の楽しみ時を邪魔してくれて!
私は無視して食べることにした。
「『何でアドは出来るの?』
『私は判らないのに!』って、フランは昔から馬鹿だったのね!」
なんかとてもむかつく事を、シルビアが言ってくれるんだけど。
「いや、ちょっと待って、何故シルビアがそれを知っているのよ!」
その画像は、このまえこの食堂で見せられただけだ。何故シルビアが知っているんだ?
「だって貴族用の食堂の入り口でずうーーーーっと流れているわよ」
「な、なんですって!」
私はその言葉を聞いて思わず、立ち上がっていた。
「オーレリアン、どういうことよ? 私聞いていないんだけど」
ムッとしてオーレリアンを見ると彼は明後日の方を向いている。
「さあ、私はよく知りませんが」
いやいや、この反応は絶対に知っているはずだ。
「あっ用事を思い出した」
「ちょっと待って」
その横でわざとらしく出て行こうとしたガスペルを捕まえた。
「ガスペル、あんた何か知っているでしょう?」
「いやあ、俺は殿下に頼まれて装置を10個作っただけで」
「あの装置を10個も!」
「ごめん、嘘だ。実は20個」
「20個もどうしたのよ」
私は不吉な予感を覚えた。
「オーレリアンに渡しただけだよ」
平然とガスペルは言ってくれるんだけど、
「さようなら」
あっという間にオーレリアンが食堂からダッシュして逃げていくのが見えた。
「ちょっと待ってよ、ひょっとしてそれを町の中に置いたんじゃないわよね」
私は追いかける気力も見なく呟くと、
「ごめん、フラン、私、殿下に頼まれて、店の横に置いてもらったわ」
「私も」
「俺の所も」
お店をやっている皆が言ってくれるんだけど。
そんな、皆の店って結構王都内では有名な店で人通りも多く目立つところにあるはずだ。あんな恥ずかしい映像が、他国にまで流されているの?
私は恥ずかしさで真っ赤になった。
「でも、あのおかげでお客様の入りが多くなって」
「うちの店もよ。『あのお二人が食べさせ合っていたものはどれですか?』ってカップルが増えて、めちゃくちゃ両親が喜んでいたわ」
「本当にフラン有難う」
みんな喜んでくれているのはいいけれど、私は恥ずかしくて消えてしまいたかった。他国にまでバカップルぶりをさらすなんて・・・・というか、フェリシー先生が聞いたら絶対に何か文句を言われるはずだ。私は礼儀作法の授業に更に出たくなくなった。
「婚約者を大切にするエルグランの王太子とか、デカデカと書かれていたけれど、フランは我が国の王太子のお兄様に媚びているのに」
「ちょっとシルビア。いい加減にして。私が何故ルートンの王太子に媚びなければいけないのよ」
蒸し返してきたシルビアに私はムッとして言った。
「何を言っているのよ。あなた、そこの平民が誘拐された時にお兄様に助けてほしいって泣き込んだじゃない。あわよくばお兄様の気を惹こうとしたんでしょ」
私は頭を抱えていた。
「何言っているんだか判らないけれど、あなたのお兄様は全然役に立たなかったじゃない」
「な、何ですって」
シルビアが眉を吊り上げて言うけれど、事実は事実た。
「メラニー、私がこの国の王太子殿下に媚を売る利点はなにかある?」
私はメラニーに聞いた。
「それは、アルメリアの女の子ににやけているアドルフ殿下に対抗して、王太子殿下と親しくなる事でアドルフ殿下の嫉妬心を煽ることじゃない?」
私は頭を抱えた。そうだ、メラニーに聞いたら、絶対になにか理由づけしてくるんだった。
「ほら、見てご覧なさいよ。あなたにもちゃんと理由があるじゃない」
シルビアが私の首を取ったように自慢してくるんだけど。
「メラニー、じゃあ、王太子殿下のデメリットは」
「それはガサツなフランの相手をしなければいけないことよね。フランはわがままで嫉妬深いから、しょっちゅうアドルフ殿下は土下座されているけれど、普通の王族はあんなことに耐えられないわ」
またやってしまった。メラニーに聞くんじゃなかった。私は馬鹿だ。
メラニーの言葉に私は頭を抱えてしまった。
「本当に、アドルフ殿下はとても懐の広い方よね」
テオドラとか言ってくれるんだけど。
なにか違う。絶対におかしい。
私はムッとしているんだけど。
「ということだから、私は絶対にあなたとお兄様の事は認めないんだから」
「いや、だから元々無いから」
シルビアに私は言い切るが、あんなバカップルな映像を流す魔道具が王都中にバラまかれていると思うと私の声はいつもよりとても小さかったのだ。
羞恥心で赤くなっているフランでした。