水流がフェリシー先生を直撃、元隣国王女が骨折したことが判りました
大量の水は私の制御できる量を超えてしまったのだ。
水滴を出そうとしたところにシルビアが現れて、私は水を出し始めていたことを忘れていたのだ。更にシルビアがアドの余計な事を言うから、私の怒りが水の量を知らない間に増やしていて、気づいたら私の制御できる範囲を超えていたのだ。
すさまじい大量の水が私たちの真上から襲ってきた。
バケツをひっくり返した……というより風呂桶の水がひっくり返った、いや違う、巨大なプールをひっくり返したような大量の水が私たちの頭の上から叩きつけられたのだ。
一瞬息ができなくて、私は死ぬかと思った。
巨大な水流にみんな流されたのだ。
でも、水はずぶ濡れの私達を残してすぐに屋上から流れ落ちたのだ。
水死しなくてよかった。
一瞬の大洪水の跡、私は何とか立ち上がった。
「ゲホゲホ、皆大丈夫?」
「俺はなんとかな」
「俺も」
男たちが立ち上がる。
皆完全に濡れネズミだった。
「皆、ずぶ濡れで、大変じゃない」
「ああ、フランはこれ以上やらなくていいから」
私が巨大な焚火をしようとして慌ててメラニーに止められた。
「えっ、でも」
「今度は校舎を燃やす気?」
「えっ、いや、そこまでは」
メラニーに言われて、私は慌てて火の玉をひっこめる。
そうだ。私がやると確実に校舎が燃えてしまう所だった。
私は何も無くてほっとした。
「風魔術得意な人は温風出して周りの人を乾かして。オーレリアンとエドガルドとガスペルは皆いるか点呼を、テオドラとルフィナはけが人の治療をして」
メラニーがてきぱきと指示をしだした。
屋上にフェンスがあったので、外に弾き飛ばされる者が居なくて本当に良かった。
「クラスの全員の無事を確認したぞ」
「けが人はほとんどいないわ」
オーレリアン達が、報告してくれた。
「ちょっとフラン、あんたも悲惨よ」
メラニーが乾かしてくれる。
「あっ、有難う」
私はみんなが無事でほっとしていた。
私は何かを忘れていた。誰か足りない人がいることを……
「しかし、本当にフランは規格外だよな」
「あんな巨大な水塊初めて見たよ」
「本当に死ぬかと思ったわ」
皆、口々に言い出した。
「だって、シルビアが変なこと言うから」
「そういえば殿下は?」
メラニーが聞いてきた。
「あれ、確かさっきまでいたよね?」
「どこ行ったんだろう?」
私達はきょろきょろした。
そういえば階段の扉が開いていた。
ひょっとしてそこから落ちた?
大丈夫だろうか?
私は、慌てて下を見に行こうとした。
そこに全身濡れ鼠のおばさんがぬっと現れたのだ。
誰だ? これは?
私は一瞬誰か判らなかった。
「フランソワーズさん」
地獄からの使者の声もかくやというガラガラ声がした。
この声は?
私はその女性をまじまじと見て、固まってしまったのだ。
これはやばい奴だ。何故、この先生がここにいるのだろう?
「あなたはいったい何をしてくれたのですか」
そこにはフェリシー先生の罵声が響いたのだった…………
それからが大変だった。
フェリシー先生の罵声が延々二時間続いたのだ。
叱責の中で、この先生がここにいた理由が分かった。
私の声がしたので、心配して先生は見に来たというのだ。本当に余計な事をしてくれた……先生が聞けばまた一時間余分に怒りそうなことを私は思わず考えてしまった。
そして、階段を上っている途中で水の大洪水の直撃を受けて、下まで落ちていたそうだ。
私の事なんて見に来なければ良かったのに!
そんなことは本人の前では言えないけれど。
その叱責の間に飛んで来た騎士たちやほかの先生たちは、これ以上先生の機嫌を損ねないために、静かに去っていった。
そして、嬉しいことに……決して喜んではいけないんだけど、怒りのあまり乾かそうと言い出せなかった濡れ鼠で説教した先生は風邪でしばし寝込んでくれた。
でも、休校と喜んだ私がばかだった。
私達は宿題で一万字の反省文を書かされたのだ。それなら余程授業の方がましだった。なおかつ私だけ特別補講が課せられたのだ。
もう踏んだり蹴ったりだった。
屋上は何も無かったからまだ被害は少なかったけれど、階下はそれ以上に悲惨な状況になっていたのだ。
階段から水と一緒に落ちたシルビアは何故か怪我一つしなかったそうだ。ソニアはシルビアの下敷きになったのか骨折したそうだ。
本当にシルビアに付き合わされただけなのに、可哀想なことをした。
これで演劇での私の魔術の使用禁止が決まった。
本番でこれをやると講堂内の人が水死しかねないから良かったけれど。
罰として校舎中の水を拭くのがまた大変だった……
私はしばらくは魔術を使うのは止めようと心に誓ったのだった。







