山頂に早く着きすぎて薪がなかったので近くの山頂の三本杉の1本を薪にして燃やしてしまいました
私は快調に鍋を背負って駆けていた。
何十キロもある鍋も、私にとっては背負っていないのと同じだ。
魔の森の訓練に比べれば魔物が出てこないだけ、余程ましだ。
まあ、最近は私の気配を感じるだけで魔物が逃げていくので、出会うことはあんまりなかったが・・・・
「あれ?」
ふと後ろを振り返ると、誰一人付いて来ていない。
「ちょっと、何、皆、遅れているのよ!」
私はムッとした。
我が家の騎士達ならこれくらい余裕で、ついてこれているはずだ。
待つこと3分、やっとエドガルドが見えて来た。その後ろに騎士志望の者達がやっとついてきている。
他ははるか下だ。
「エドガルド、遅いわよ!」
私が文句を言うと、
「申し訳ありません。でもフラン様が速すぎます!」
ゼイゼイ言いながら、エドガルドが言い訳するんだけど。
「私これでも、まだ、スピードをキープしているんだけど」
私の言葉に皆、絶句しているんだけど・・・・
一人の騎士はひっくり返っているし・・
未だ4分の1も来ていないのに!
「あんたが異常過ぎるのよ」
後でメラニーに散々怒られたんだけど。
今ここではメラニーなんて影も形も見えなかった。
ここは少しでも早く行かないと料理を作る時間がなくなる。
「皆、ゴールまで頑張るわよ、ファイト!」
「1発・・・・」
「元気が無い! もう一度!」
私の言葉に四人はげんなりしたみたいだが、
「ファイト!」
「1発!」
騎士候補生はもう、エドガルドにしても、他の者にしても、やけくそだった。
「行くわよ!」
仕方なしに私はゆっくり登ることにした。
「ほら、もっと頑張って!」
私がいくら言っても、騎士候補生でも、バテバテだった。
他の者はもっと苦しんでいるだろう!
このままではまずい。
私は料理をする時間が無くなる事を危惧した。
取り敢えず、私は火を起こして、鍋を火にかけてお湯を沸かすことを始めようと思ったのだ。
お湯さえ、湧いていればなんとかなるだろう。
鍋奉行のメラニーは荷物をほとんど持たせていないので、1時間半で登ってくるだろうと勝手に予想した。メラニーは私が味付けするのをとても危惧していたのだ。
1時間半待っても来なかったらいるメンバーで味付けすると言ってある。
どんな事をしても、登ってくるはずだ。
オッチラ登っている騎士候補生の4人を置いて、私は一気に頂上に向かったのだ。
何かとても急な上りがあったが、何のそのだ。
私は一気に頂上まで駆け上がったのだ。
「あなた、どこから登って来られたんじゃ?」
山頂に居た老人が驚いていたが、
「えっ、登山道じゃ・・・・」
「登山道はこっちじゃぞ」
おじいさんが右手の道を指差してくれた。
じゃあ私の登った道って何・・・・
確か、頂上が見えたので、最短距離で登ってきてしまったみたいだ。
何か道なき道を駆け上がったような気がしたが、まあ、魔の森では道なんかないので、よくあることだ。うん。
「うーん、聞きしに勝るお転婆じゃな」
何かおじいさんに飛んでもない事を言われたような気がしたが、私は無視することにした。
そう、それどころではない。
うーん、私だけで登ってきたけれど、あるのは鍋だけだ。
まず薪を探さないと。あの調子ではドミンゴは一番最後だし、多分間に合わないだろう。
山頂近辺は背の低い木しか無い。
「こんな小さな木を燃やしてもなかなか火がつかないんじゃない」
私が周りを見渡すと、ちょうどいい大きさの木が三本並んでいるのが見えた。
そのうちの一本の根本を剣で叩き斬った。
バシンっ
木が大きな音を立てて倒れてくる。
その木を剣で適当な大きさに叩き斬っていく。
おじいさんはその様子を唖然としてみていた。
疲れ切ってエドガルドらが頂上に上がって来た時には薪が積み上がっていたのだ。
「良いところに上がって来たわ。エドガルド、薪が作れたからすぐに火をつけて」
エドガルドが持ってきたチャッカマンみたいな魔道具で薪に火をつけてくれた。
私が魔術でやると下手したら爆発が起こるのだ。山頂にクレーターを作って、標高を低くしたとかなるとまた、フェリシー先生に何を言われるか判ったことではなかった。
石を組んで即席のかまどを適当に作ると早速鍋を火にかける。
騎士候補生らが持ってきた水を鍋に入れる。
蓋をして、後は煮えるのを待つだけだ。
その間にどれだけ食材が着くかだが。
男性陣が荷物の軽い女性陣に応援されながら食材を持って上がってくる。
「後もう少しよ。オーレリアン」
ふらふらしながら白菜を10個担いだオーレリアンがメラニーに応援されてやっと着いた。
「ガスペル。後100メートルよ」
その後ろからルフィナとテオドラに背中を押されながらガスペルが上がって来る。
「もう、死ぬ。荷物持ってくれ」
「何言っているのよ。もうそこよ」
ガスペルの弱音をルフィナは無視して、なんとか火の前まで連れてきた。
「ああああ! フラン、何楽しいことしているのよ」
ふらふらしながらシルビアが上がってくるなり、どこにそんな元気があったのかと言うくらい大声で叫んできた。
「それよりも、フラン、この薪はひょっとして頂上名物の三本杉の一本の成れの果てなんじゃ・・・・」
役立たずディオが言ってきたんだけど。
「ええええ! この杉ってそんな有名だったの?」
「当たり前よ。ルートン山の三本杉って言えばガイドブックにも必ず載っているほどなのよ」
シルビアの声に私は唖然としたのだった。
その三本杉が私が一本を薪にしてしまったので、二本杉になっている。
やばい、このままではまた、フェリシー先生に怒られる!
私は唖然としたのだった。
またやってしまったフラン!
どうするのか?
更新は今夜です。