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裏方ver「私が聖女ではない?嘘吐き?婚約者の思い込みが残念なので正してあげます。」

「お前が聖女のわけないっ!この○○女め!」

「!まぁ…」


「わぁお」

 目の前で繰り広げられるのは,まるでドラマのワンシーン。それもドロドロの恋愛ものだ。

 怒鳴り散らしている男は見目麗しいイケメンの子爵フィンリー様。艶やかな黒髪に翠色の瞳,いかにも高そうなジャケットはほっそりとした体型によく似合う。自分の魅せ方を知っている着こなしだ。

 そして怒鳴られているのはフィンリー様に劣らぬ金髪の美少女,私の親友のシエナだ。中古のワンピースは着古した感満載だが,彼女の美しさを損なうことはない。その瞳を見つめれば,男はみんな彼女の味方だ。

 そんな美しい男女の修羅場。

 もし孤児院の同僚たちがいれば、面白いものを見たと沸き立つだろう。でも残念ながらこの物陰には私しかいない。そして私は、そういう修羅場にはちょくちょく巻き込まれているので,「他人事で面白いなぁ」より「また面倒なことしてるなぁ」という呆れの方が大きい。できる限り,巻き込まれなくないのが本音だ。


「泣きそうになっている子を無視するとは、何が子ども好きだ」

 何を言っているのかな。シエナは根っからの子ども嫌いだよ。嘘でも好きとは言わないと思うなぁ。それともフィンリー様の気を引くための作戦とか?いや,シエナに限ってはありえないな。

「はぁ。そう言われましても。私、子どもは嫌いなので積極的に関わらないようにしてますの」

「嫌いだと!?では修道院で面倒を見ていたというのは偽りだったのか!!」

「いえ、面倒は見てました。それが仕事なので」

 

 言い切った!ビジネスライク!さすが親友!

 シエナ、ずいぶんと本音トークしてるけど、フィンリー様が婚約破棄の空気出してきたから猫かぶるのやめたのかな。彼女は素が敬語だからよく勘違いされるけど、中身は過激派だから,猫いなくなったら大変だよ?

 あー手遅れかな。多分、キレてる。


 そのままやりとりを見ていると、少し前にあった問屋騒動の話になった。確かにフィンリー様はその場にいなかったけど、婚約者や身内が関わっていたのに気づかなかったのかな。知らないフリ…じゃない。「そんなことあったの?初耳だけど」みたいな顔してる。イケメン台無しだなぁ。


「そもそも聖女かどうかも怪しいな!」

「怪しいというか、私、聖女ではありませんよ」

「は?」

「聖女と名乗ったことはありません。貴方様が勝手にそう呼んでるだけです。この町の皆が知っています」

「みんな!?待て、初めて聖女に会うために修道院にきた時、お前のところに案内されたぞ!」

「初めて…ああ!いましたね!聖女の隣に座ってました」

「あの時はお前と貧相な子供しかいなかっただろ!」

「その子同い年です。太れない体質で痩せ型なんですよ」


 それ、私ね。

 フィンリー様も言うなぁ。取り繕うという努力はみえるけど,全くなってない。いや、そこの美人な親友と比べないで。負け戦だってわかってるから。

 いや、シエナもフォローしないでよ?美人にフォローされるのも胸が痛いからね。ていうか、私がここで聞いてるのわかってるよね!?わかっていってるよね!?

 

「あと、おしとやか、でしたか?確かに私と比べればそうですね。人を立ててくれる優しい子です。問屋騒動が解決したのは、本当は彼女の力が大きいのですよ」

「問屋騒動で?」

「王都の売り込み担当をお願いしたら、いつの間にか王族の方と宰相の御子息様、あと将軍の御子息様とご縁ができたみたいで。売り込みは成功したのですが、先日全員からプロポーズされて悩んでいると相談されました」

「王族と宰相と将軍」

「まだお答えしていないようなので、チャンスはありますよ。あ、私の方は慰謝料を頂ければ婚約解消しますのでいつでも言ってください」

「またくる」

「お待ちしてます」


 来た時よりやつれた様子のフィンリー様を影から見送ると、私はシエナの前に顔を出した。

「やっと帰ったね。お疲れー」

「本当に疲れました。あの方、慰謝料払ってくれるかしら。帰り際は魂抜けてたから話を聞いていないかったと思いますし」

 疲れたと言いながらスッキリしたようにみえるけれどね。

 お似合いに見えたし,優良物件かと持っていたけど,やはりフィンリー様ではシエナを満足感させられなかったのだろう。

 私は親友を労って肩を叩いた。

「その辺はあとで請求すればいいよ!ぜーんぶ向こうの勘違いだし!」

「たった三ヶ月のお付き合いですが時間の無駄遣いでした。はぁ。婚約解消って噂が広まるのかしら」

「王都に行けばイイオトコ見つかるって!本物の聖女より可愛いし!」

「はいはい。ありがとうございます聖女様」

「本心で言ってるのよ。とにかく王都で住む場所は確保したわ。幼馴染と一緒じゃないと嫌!って言ったから二部屋ね。明日には出発よ」

「そうですね。慰謝料待ちで王都行きを伸ばすのは馬鹿らしいわ。あの人の別邸が王都にあるはずだから、慰謝料はそちらに請求しましょう」

 気持ちを切り替えられるのがシエナのいいところだ。

 私は頷いて明るく答えた。

「これで子どもの世話する日々ともおさらばってね!」

「あなた、私より子ども嫌いですね」

「キャンキャンうるさいじゃん。仕事じゃなければパス!そうだ、子どもで思い出した。例の王子の方も誤解してるの。最悪。子供はたくさんほしいとか言い出してさー。無いわー」

「無いですね」

「で、宰相の息子の方は…」


 親友との今後の方向性について話し合いは、孤児院の子供たちが外遊びから戻ってくるまで続いた。

 シエナの婚約が解消されれば,これからは身軽に行動できる。2人で王都にいって新生活を始める計画が現実に近づいたのだ。


 聖女,もといカボチャ姫、王都にいく。

 悪くないよね?


短編作品の「私が聖女ではない?嘘吐き?婚約者の思い込みが残念なので正してあげます。」を裏で見ているシーンでした。そちらはシエナ視点なので気になった方は読んでみてください。

次回は、時間が少し巻き戻ります。

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