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異世界への片道切符

以前エブリスタのほうで同名で投稿してました。


パクりではありません


 「ふむ」


 思わず、そうつぶやいて視線を下げ、周囲を見渡した。

 いや、つぶやきざるをえない。と、いった方が正確か。


なぜなら、目の前に広がっているのは、無数の魔法陣、魔法陣、魔法陣。

数えるのも嫌になるほどの量である。


 しかも、そのほとんどが帰りかたの確立されていない、異世界への片道切符だ。


「すげー数だな。おい、ニート」


横の銀髪馬鹿が、目の上に手をかざしながら聞いてくるが、なんという不名誉な名で呼んでくれるのだ。


「ニートというなフリーターが」


「いや、おまえもフリーター言うなよ。俺は、振汰だ」


 横の馬鹿が生意気にも、文句を言うので別の呼び方を考えてみる。



「じゃあ、フリータ」


「・・・なぜだろう一つ線が消えるだけで、3段変形が得意な悪役が頭に浮かぶのは」


 まだ文句がありそうだ。


まったく我を煩わせるとはつくづく生意気な。


「ならばフリーダム」


「ガン○ム!?いや、じゃなくて!なあニートあれ、いくつ見える?」


 馬鹿いや、振汰が指すのは、無数の魔法陣。


 こいつにもあれがみえるということは、こいつも呼ばれているという証拠だ。


 それに我は眉をひそめながら答えた。


「ニートと呼ぶなと言っている。我が名は、仁兎だ。


魔法陣のことならパッと見、前方70、後方50、右30、左20、上空5ほどだな。


そこまで数えて、諦めた。

実際はその倍ほどか?


フリーター、貴様にはいくつ見える」


 自分で言っておきながらなんだが相変わらず、鬼畜な数だな。


少し現実逃避気味に遠い目をしてみるが、魔法陣は消えちゃくれないし、むしろ遠い目をした先でまた増えた。

えげつないが過ぎないだろうか。


「うわっ、鬼畜・・足の踏み場もねぇじゃねぇか。あー、俺は前30、後10、右5、左3、上1くらい?あ、増えた。」


ふむ、とまた思う。


 我ほどではないが、こいつに見えている数もなかなかに多いな。

少し考えて、結論を出した。


一つ頷いて、


「ならばこのまま、電線の上を歩いたほうが得策か」



「賛成」


振汰はあっさり肩をすくめて同意した。


我々の立っている現在地は、電信柱の上だった。


 大体、あの手の魔法陣は展開するのに広さと面積が必要となる。

それゆえに電信柱、電線の上などは、広さも面積も足りないために、かなり安全と言える。がしかし、端から見ればかなり怪しい。


怪しいが、どういうわけか魔法陣が展開している時、辺りに人影は一切なくなるので問題はない。


まあ人に見られても、余り驚かれはしないだろうが…。


 なにせ、この街にはあの人がいる。


我々2人の師匠であり、下宿の大家であり、最強の男。

 あの人がいる限り、大体の奇行は見過ごされる。


 さすがに裸でうろつくというのは許されないが、電信柱の上で話したり、電線の上を走ったりしても、警察には通報されない。


むしろ、警察の方々に哀れみの眼差しを向けられ、『頑張れよ!』と励ましと菓子が飛んでくる。


とても、美味しい。


 聞いた話しによると、そのあたりは師匠が若いころから、よく見られたらしいが一体あの人は何をしていたんだろうか……。


あと、今でも若い師匠の若かりし頃とはいつなのだろうと、門下生一同首を傾げたのは良い思いでである。

 


そんなことを考えながら、足を進める。


 ちなみに我々の履いている靴は、対電性に優れたすごい靴だとか言って、師匠がどこかから持ってきた。



 この靴は、重い。


 常に体重制御の術を体にかけねば、生活に支障をきたすレベルで、物凄く重い。

比喩ではなく、リアルで地面にめり込む程と言えば、想像つくだろうか。


 まずは、靴に慣れることから始めて、次にどんなところに行っても生き残れるように、戦闘訓練。


 それに平行して、電線のように細いところも歩けるように綱渡りなどの曲芸じみたことなど、みっちり教え込まれた。


 あの時の師匠は、怖かった。

 思わず半泣きで振汰と逃げる算段をつけてしまうほどに…。


 キャラ崩壊?


 お互いを罵りあっている?


そんなもの気にならないほどに恐ろしかったのだ!!


しかしあっさりと逃げる算段は潰え、師匠にばれてその後地獄の特訓MAXを受けさせられた。


 なぜ、我々がそんな修行を受けなければならないのか、それは我らの厄介な体質にある


我と振汰は、異世界召喚体質である。


 振汰は5回程勇者召喚され、我は勇者から始まって、魔王、魔神邪神などの類いの召喚にあっている。


数多の世界を救えば救う程に、幾千の世界を渡れば渡る程に、呼び出される量は増えていく。


 年齢はなぜか、こちらの世界に準拠しているようで、帰って来たときに戻っているが、実際はかなりの年齢であると、ここに宣言しよう。


 さて、今思えば懐かしい…いや、思い出したくない記憶に浸っていたところで、下宿の玄関に着いた。


 玄関というよりも、巨大な門だな。

 巨大な門の奥にさらに巨大な屋敷があるのだから流石に呆れる。


ちょっと、ある種のテーマパークと言われても違和感が無い。


我々、下宿者兼門下生にとっては家の玄関であると同時に、地獄の門と表記したほうが正しいがな!!!


 さて、その門の前には4個の魔法陣がひしめいているのだが、どうしたものか…



 屋敷の中には、召喚除けやら、その他いろんな危険をよける結界がはってあり、門の上からは行けない。


「あれ?ニート行かねえの?」


振汰(馬鹿)が、きょとんとした顔で言ってきた。


 なんかイラッときたのだが、我は頷き冷静に指示を出した。


「よし、馬鹿(振汰)先に逝け」


「ひっでぇ!!いま馬鹿って…ってか、漢字ちがくね!?」


 そんなことを言いながらも振汰は、今立っている電信柱から跳ぶ。


 ちなみにここから跳んでも、門の中には一歩届かないので、一度門前に着地しなければならない。


 さて。あいつには、どの魔法陣が見えて、どの魔法陣が見えていないのか。


「よっと」


 振汰が危なげ無く着地したその足元には、紫色に輝く魔法陣。


反応がないところを見るに、どうやらあいつには、あの魔法陣が見えていないし、お呼びでも無いらしい。


しかし、後ろを若干気にしているようだから、後ろの魔法陣は見えているのだろう。


 ならば我が、とる行動は一つ。


 我はためらう事なく電信柱から跳ぶ。そして、振汰の頭を踏み場にして、門の中に入った。


「てめっ何しやが…って、ぎゃああああああ!?」


 ふむ、どうやらあいつ後ろの魔法陣に落ちたようだな。体幹がなっていないんじゃないか?


だが、


「ふっ、許せ勇者よそれは、前回我を犠牲にした罰だ」


 そう、あの馬鹿は前回我を犠牲にして、召喚フラグを回避しやがったのだ。


 おかげで200年ほど、邪神をやるはめになったわ。

 


  ガシッ


「ん?なんだ?足に何かまとわりついて…。」


左足を見る。我の左足はまだ少し、門から出ていた。


そして、その足には、黒い手がまとわりついていた。


その手は、先ほど振汰が落ちた魔法陣につながっている


「なっ嘘だろ…これは、まさか、真理の手!?


や、やめろ我は、人体錬成などしておらん!!!!ましてや、真理に興味もないぞ!?」


 真剣に馬鹿なことを言っているうちに、足を掴んでいる真理(仮)は、その範囲をのばす。


「くそっ左足が持ってかれる!?」


まだ馬鹿なことを言っている自覚は有る。有るにはあるが、余裕は余りない。


 我は、門の柱に捕まって全身でしがみついた。しかし、いかんせん真理の力が強い


「くっ、負けてたまるかあああ」


 叫び声をあげる。そして、力の限り門にしがみつく。


今なら、コアラの気持ちがよく分かる。

いや、必死でしがみついているのだから、子猿か?


どっちにせよ、腹のそこから声を出して門にしがみつく図と言うのは、端から見たらそりゃあ、滑稽だっただろう。


 その声を聞きつけてか、屋敷から人が出てきた。

 そして、その人物があげた言葉は、


「てめえら、うっせえんじゃ!!!!!!!ごらああああああああ」






 だった。


 師匠だった。それも荒ぶる師匠だった…。


昼寝の邪魔でもしてしまったんだろうか。


すみません!!!!


 その声に驚いて思わず手を門から離してしまう。


 慌てそのまま宙を掻くがどこにも届かなかった。


真理は、さらにスピードを速めて範囲を広げ始めた。


 ここまでか…と、半ば諦めたところで、パシッと何かに腕をつかまれた。


 師匠だった。にっこりと

笑って、我の手を掴んでいる。


 思わず、その笑顔にほっとするよりゾッとした。


「夕飯前には、帰るんだぞ」


 そして、ぱっと離される手。


 我は、振汰の落ちた魔法陣に急転直下。


「あ、ちょっま!!!ああああああああああ!?」


 そういえば、一度上げてから落とすと、いうのはあの人の専売特許だったなと思った時には既に穴の底だった…。



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