《疎遠・決心》
《疎遠》
太郎が中学高に入ると、母と会う回数は極端に減っていった。
母は、酒を大量に飲むようになり、
家に帰る事が極端に減ったのだ。
どのくらいだろう。
母の顔を見るのは、週に2回あれば多い方だった。
それも一瞬。
母は、色々な男性と付き合うようになり、
おかしくなっていった。
毎週月曜日に、テーブルの上には500円が置かれている。
この500円で月曜日から日曜日まで、食い繋がければいけない。
要は私に与えられたの1週間分の食費は、
500円だけである。
家にはお米だけが常備されている。
母はこの時、どう思っていたのだろう。
母は仕事はしているものの、
毎晩、外で飲酒を繰り返し、当時付き合っていた男性に暴力を受けていた。
男性はいわゆる怖い方だった。
何度か見た事があったが、家には入らなかった。
ある日、家に戻るとその男性が母と二人で鍋をしており、母の顔は満面の笑顔。
しかし顔はアザだらけだった。
あまり母とは会っていなかったが、
無性に腹が立ち、男性が家を出た時に
詰め寄った。
『母に暴力を振るわないでください』
怖かった。
本当に怖かった。
男性が言った。
『そんな事は知らん』
『ガキは向こうに行け』
怖さで立ち尽くすしかできなかった。
そんな自分に腹が立った。
家に戻ると、母は酔い潰れて寝ている。
皿、箸などは下に転がっている。
昔の綺麗好きの母からは想像できないくらい変わっていた。
その日の、私の食事は
500円の中で買ったシーチキン1缶だった。
《決心》
14歳になった時、母が入院したと
親戚から連絡が入った。
今すぐ、病院に行きなさいと。
病院で見た母の顔は、腫れあがり、
片脚は引きずっていた。
その横には、付き合っていた怖い男性が
母の腕を肩に回していた。
誰にやられたのかを、母に聞いた。
母は答えなかった。
そしてその男性も答えようとしなかった。
その雰囲気を見て分かった。
この男性がやったのだと。
決めた。
この男性と本当に闘わなければいけない。
私は、彼が住んでいるアパートと見つけた。
夜に自転車で彼の家に行き、ドアを叩いた。
彼がドアを開け、私は怒号のように罵った。
『お母さんに手を出すな、クソ野郎』
言った瞬間、殴られた。
彼は、その勢いのまま、
私を自分の車に乗せエンジンをかけた。
どこに連れて行かれる分からないまま時間だけが過ぎて行った。
車内では、罵声を浴びせられ続け、
震えていた私はどうする事も出来なかった。
1時間程だろうか、山道に入っていき、
途中で降りろと言われ、降ろされた。
ここかどこなのかは、分からない。
そのまま、そこに降ろされ車は去って行った。
とりあえず、山道を下った。
空が明るくなりだした時、
見慣れた場所が見えた。安心した。
遠くに来てなかったようだ。
団地が見え、帰宅し風呂に入り泣いた。
その日、母の病院に行った。
母の横には、またその男性がいた。
翌日の事は、母には言わなかった。
母は笑顔で私に話しかけていたが、
私の異変には気付かなかった。