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極道の娘が異世界転生?  作者: みーちぇ
学園編
11/26

第11話

部屋の戸を叩く音が聞こえた。


「はい」


私が返事をするとベルが部屋に入ってくる。


「あら~? お嬢様おはようございます~。私がお呼びする前に起きていらっしゃるなんて珍しいですね~」


「ちょっと早く目が覚めたの。今日は特別な日だから2度寝する気にもならなくて」


「そうですか~。今日はとうとう待ちに待ったあの日ですからね~」


私はベルと共に部屋を出て朝食をとりに向かう。屋敷の食堂は立ち入り禁止だから、庭のテラスを使っている。

冬は寒いが今日のような天気の良い小春日和は心地が良い。


「兄様はもう来てる?」


「はい~。ジギル様はお嬢様よりも早起きですからね~」


私の部屋から庭まではそう離れていない。

少し歩くとすぐに庭が見えてくるため、ベルと話をしていると着いた。

庭師が丁寧に仕事をしてくれているおかげで毎日綺麗な庭を見ながら食事をとることができる。


綺麗に咲いた花や整った植木の横を通りテラスへ向かう。

話の通り先に着いていたジギルが紅茶を飲んで情報誌を読んでいた。

20歳になったジギルの整った顔立ちからは幼さは完全に消え立派な1人の男性だ。

丁寧にセットされた銀髪や安物でも高級品のように着こなす姿から、彼の見た目への拘りがよく分かる。


こちらに気付いたジギルが緩やかに微笑む。


(実の兄ながら、乙女心が擽られるわ)


「おはよう、エレナーゼ。誕生日おめでとう。よく眠れたか」


穏やかな口調で問いかけながら頬に口付けを落としてくれる。

いつも通りの朝だ。


「ありがとうございます、兄様。でもドキドキしちゃって早くに目が覚めちゃったの」


「そうか。でも僕の妹なら上手くやれるさ」


「そうかしら」


そんなことより、と付け加えながら私の額を軽く撫でるように叩く。

もちろん痛みは全く感じない。


「兄様、じゃなくて兄さんと呼べと言っただろう? もう僕は()()()()()()()()()()()()()()んだ。様は使わなくていいぞ」


「そうでした、ごめんなさい。慣れなくて。……兄さん?」


ジギルは満足気に頷いた。

タイミングを見計らったかのように使用人がが朝食を持ってきてくれる。

今日は私の特別な日、というのもあってか私の好物ばかりが並んでいる。


私はジギル以外の家族には恵まれなかったが、使用人たちには恵まれた。

ここにいる使用人たちは、元々はハイルウェルツ家に雇われていたが父たちに気に入られず居場所を無くした者達ばかりだ。

似たもの同士な捨てられた私達に自分の子のように愛情を注いでくれる。


「でも、まさか兄さんが家と縁を切るなんて……」


「僕はこの家に必要とされていないからな。縁を切るのは簡単だ。それに僕もこの家を必要としていなかったからな」


「私もそうしたいわ」


「エレナーゼは駄目だ。僕は男だからまだどうにでも暮らし方があるが、エレナーゼには不自由無く暮らしてもらいたい。それに僕はベルが居たからな。この家は邪魔にしかならない」


聞いた時は驚いたがジギルは20歳になったのを機に家と縁を切った。

ハイルウェルツの名を語らない事を契約とし使用人の1人という名目でこの家(まぁ離れなのだが)で暮らしている。


それでも使用人たちはジギルを使用人扱いはせず今まで通りに接した。

ジギルは使用人と同じで良いと言ったが、今更扱いを変えるのは難しい。と返されたらしい。

だが、それは使用人たちの優しさなのだろう。



そして、いつの間にそんなフラグがたったのか知らないが私の乳母のベルと婚約した。

年の差10歳以上である。


(ベルのことを魔法で吹き飛ばしたり、『少し生意気』なんて言っていたジギルがベルと婚約だなんて。人生分からないものね)


「だからベルには同じ席について食事をとってもらいたいものなのだがな」


ジギルは私の後ろに立ち控えているベルにそう言葉をかける。

ベルはひとつ微笑み


「私、公私混同はしないタイプなので~。今の私はエレナーゼお嬢様のいち使用人ですから~」


「あら、私はいいのよ?」


「駄目ですよぅ~」


ベルは見た目や穏やかな喋り方とは裏腹に仕事に対してキッチリと線引きをしているようだ。

私もそんなベルに好感を持つ。


「ふふ、でもまさかベルが私の姉さんになるなんて」


「あら~、30歳超えた姉は嫌なのですか~」


そう、ベルは今も昔と変わらぬ美しさを持っているが年齢は30を超えている。

だが、何処からどう見ても20代にしか見えない。私は密かにベルを魔女だと思っている。


「まさか! 家族みたいに思ってたベルが本当に家族になるなんて夢見たいよ。嬉しいわ!」


「ありがとうございます~ お嬢様」


「おい、僕は置いてけぼりか? そうやって、いつも2人で仲良くするんだ」


どうやらベルとの会話に夢中になってジギルがむくれてしまった。

ジギルは常々丸くなったと感じる。

私とベルは目を合わせて笑いだした。


「全く……。さ、楽しいお喋りはおしまいだぞ。学校への挨拶は何時からなんだ?」


「昼過ぎからです。まだ時間はあるわ」


「でも準備をしなくちゃ、ですね~。お嬢様の晴れ舞台ですもの~。誰よりも目立たせなくちゃ~。さ、食事の片付けはお任せして準備にかかりましょ~」


私はベルに背中を押されるようにしてテラスを後にした。











今日から私はルフレード学園高等部に通うのだ。

この世界に転生して初めて身内以外の人間との関わりを持つことになる。


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