ひとりぼっちのラム
ひとりぼっちの羊の心の成長を見届けてください。
とある牧場に ラム という羊がいました。
牧場には、たくさんの羊がいます。
けれどラムはひとりぼっちでした。
ラム以外のみんなは 体全部がまっ白です。
ラムはふわふわの白い毛以外、まっ黒だったのです。
みんなと色がちがうだけで、ラムは仲間はずれにされてしまったのです。
「あの子、どうして黒いの?」
「ぼくたちと全然ちがう」
「どこからきた子なの?」
最初から、みんなとおなじ牧場にいたのに、
ラムはひとりぼっちになってしまいました。
ごはんを食べ、空を見て、ねむる。
そうした毎日を、ラムは過ごし続けました。
そんなある日、牧場へネズミが迷いこんできました。
そのネズミは「ラット」という名前らしい。
ラットは、ラムに話しかけました。
「きみはどうしてひとりぼっちなの?」
「ぼくはずっとひとりぼっちだよ。」
ラムは答えました。
「さみしくないの?」
ラットはもうひとつ、聞きました。
けれど、ラットの言葉の意味がラムにはわかりません。
「あっちに仲間がたくさんいるでしょう?」
ラットは、ひつじの群れを指さします。
「なか、ま?」
ラムは、仲間はずれにされていたので、ずっとひとりでした。
「…仲間はずれなの?」
ラットはラムに聞きました。
「なかまはずれってなぁに?ぼくはずっとひとりだよ。」
ラットはラムのことばをきいて、心がツキンと痛くなりました。
「ひとりぼっちはさみしいことなんだよ」
ラットはそう言うと、どんぐりをひとつラムにプレゼントしました。
「ラム、ぼく、また明日もここに来るよ!」
ラットはとても元気な声で言い、来た道に帰っていきました。
その次の日から毎日、ラットはラムのところへ来るようになりました。
ラットは、牧場の外で見てきたことや、驚いたこと、楽しかったこと、いろんな出来事をラムにたくさん話してくれました。
「もうぼくとラムは友達だ!」
ラムは初めてできた友達に、最高の笑顔を見せました。
その時、ラムの心に感情が生まれたのです。ラムは初めて考えました。みんなと仲良くするにはどうすればいいのか。ラットにも相談し、勇気をだして牧場のみんなに声をかけてみることにしました。
「ね、ねぇ、ぼくも仲間にいれてくれない、かな?」
恐る恐るラムはみんなに声をかけました。
驚いた顔をする子もいれば、困った顔をする子もいました。それを見たラムが諦めようとしたその時、一際大きな羊が、ラムの方へと歩いてきてみんなの方へと向き直りました。
「みな、そのような顔をするでない。こやつも同じ羊であろう。仲間なのだ。歓迎せよ。」
みんなはそれを聞き、数匹がラムへ近付きます。
「……ラム、ごめんなさい。」
「ずっとひとりぼっちさみしかったよね、ごめんね。」
謝るみんなに対し、ラムは笑顔で応えていきました。
「私からも謝らせてくれ。本当にすまなかった。ひとりぼっちだったことに気付いてはいたが、見て見ぬふりをしてしまった。それがとても恥ずかしいことであると、身にしみて感じた。」
これからは仲良くしよう、と言うと、彼らは額を合わせた。彼らなりの歓迎と親愛の証だった。
そしてラムは気付きます。ラットの姿が見えない、と。
「ラットどこ!?ねえ!いるんでしょ!?」
牧場の隅から隅まで、走って走って探しましたが見つかりません。
項垂れ、下を向いた時にふと木の葉の手紙を見つけました。ラットからラムに宛てられたものでした。ラムは早速読み始めた。
『ラムへ。きみはもうひとりぼっちじゃないよ。あんなにたくさんの友達ができたんだもの。これからはみんなと仲良くするんだよ?ぼくは、新しい街へ旅に出るんだ。手紙でしか言えなくてごめんね?でも、ぼくたちはずっとずっと友達だよ!傍にいなくても、心は繋がってる。いつかまた会おう!ぼくの心友! ラットより。』
ラムは手紙を読み、初めて泣きました。
さみしい、胸が痛い、会いたい。
けれど、次にラットに会っても恥ずかしくないようにいよう、と決心しました。
「ぼくはもう、ひとりぼっちじゃないよ、ラット」
ラムは涙で潤む瞳で空を見上げ、離れた場所にいるラットへと語りかけました。
いかがでしたでしょうか?初めての文章、童話として纏めたかったのですが、どうにも上手くいかず童話にはなりませんでしたね。ですが、少しでも何かを感じてもらえたら嬉しいな、と思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。