第5話 襲撃
魔法検定士の発言に誰もが驚きを隠せないでいた。勿論、俺もだ。あまりの出来事に、ユーリカも泣き止むほどだ。結果オーライかもしれないが、えぇ!?
「ま、マジっすか?」
「マジです」
「ほ、ほんとにぃ?」
ちょっとふざけて言ってみた。
「ほんとにです」
魔法検定士の人は真顔で返してきた。すみません。
「そ、そうですよね……検定士の方が嘘つく理由なんてありませんし」
「私も未だに信じられません。学生で……SSSランクとは。いや、年齢に関係なく、百年……いや、数百年に一度現れるかどうか……少なくとも、私はギルドも含めて、出会ったことすらありません。Sランクですら、出会ったことがないというのに……SSSとは……ギルドに報告を……いや、元老院に……論文の題材にするべきか……ぶつぶつ」
とんでもないことのようだった。Sランクにすら出会ったことが一度もない検定士の方がSSSランクと出会っちゃったよーとか。うん、凄すぎてわけわかんない。
そこで俺は思い返していた。そういえば、あの謎の声がSSS称号《勇者》獲得とか、言ってたよーな……こういうことだったのか。
ま、まあ。まだLA《神話級》とかいうとんでもねえのが、残ってるし? ヘーキヘーキ。顔をつねってみた。あ、痛い。マジなやつだ、これ。
どうやら、Aより上のランクは次元が違うらしい。まあそうだよな。英雄級とか、大賢者とか、勇者とか……そら、おとぎ話の存在だよ。それが、俺っ!? マジで?
「……やはり、私などとは比べ物にならない存在だったようですね。エリク君は」
あの無表情なセレスが、ちょっと引きつってる。すげえや。
「さすがは、お兄様! ビューティフルですわぁああああ!」
「おめでとうございます。ご主人様。ぱちぱち」
「お、おう……任せとけ?」
何言ってんだろう。いや、それぐらい混乱しているんだ。突然、SSSランクとか言われても、わっかんねーよ。マジで。
おそらくだけど、17歳から時間跳躍してスタートしているせいで、この力に目覚めたのも、この歳からなんだろうな。そんな凄かったら、とっくに注目されているはずだし。
ま、まあ。いいじゃん? 強いことに損はないんだし。これなら、ユーリカのことも守ってやれそうだ。よかったよかった。
てことで……スタート開始しているんだよな。もう。開始直後から驚きすぎて忘れていたけど。
「と、とにかく。出発するぞ!」
「余裕ですわね、この冒険」
「心強いな。いつでも胸を触ってくれ。エリク君。私にはそれぐらいしか力になれない」
「あ、足を引っ張らないように、頑張ります!」
なんか一人、おかしなこと言っている人がいたけど、気にしなーい。しゅっぱーつ!
城下町の検問所前まで、俺達はやって来ていた。いよいよだな……ふう、さすがに緊張するぜ。ここから、俺達の冒険が始まるんだ……。
ドキドキしながら、俺は足を踏み出そうとした……その瞬間だった。
その検問所を走り去った少女がいたのは。
「お、おいっ!」
衛兵が慌てて捕まえようとした時。
「《ファイアー・シュート》!」
「なっ……!」
誰かが、その衛兵を後ろから焼き払った。そして、そいつらは逃げ去った少女を飛びながら、追っていった。
「な、なんですのっ!? 一体っ!」
呆気にとられている俺たちだったが……俺は、すぐに行動に移ろうとした。
「行こう!」
「え、行くって……どこへですの!?」
「追うんだよ! あいつらを!」
「えぇっ!?」
放ってはおけない。そんな気がした。俺たちの旅がようやく始まったばかりだというのに。
「いや……これが、俺達の冒険だ!」
嫌な予感がする。それと同時に、わくわく感が止まらない。そう、これだ。これが、冒険ってやつだ。俺が求めていたものなんだ!
くそ、なんて速さだ……全然、追いつけない。どうすれば……。
『《加速スキル》を使用してはいかがでしょうか?』
うわっ、びっくりしたっ! お前、いたのか……?
『はい。私は貴方をサポートする存在ですから』
加速スキルね。わかった。
「加速スキル《ハイダッシュ》!」
うおっ、すげえはええっ! やば、目が……追いつかないっ!
『脚力強化、視力強化、動体視力強化を同時に付与することをおすすめします』
「脚力強化、視力強化、動体視力強化っ!」
おぉ……凄い。レーシングマシンに乗っているような感覚だぜ。これなら、追いつけるっ!