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第3話 卒業試験、開始!

 学園についた俺達は、それぞれ自分のクラスへと移動していった。

 すぐに担任の先生がやってくる。


「よーし、お前らー。今日は重大な発表がある。上級生は全員中庭の石版前に集まってくれ」


 中庭の石版前ね。一体、何をさせる気なんだか。たしかこの行事は卒業試験も兼ねているんだったよな。すでに試験が始まっている可能性があるな。気を引き締めて行くか。


 俺はやや緊張した面持ちで、中庭に向かおうとすると。

 後ろから背中を思いっきり叩かれた。


「がっ……ごほっ、ごほっ……」

「なーにを、気張ってるんだい、エリクっちは」


 振り返ると、そこには同じクラスのナーシャ・エリントスがいた。


「いきなり……何をするんだ、お前は。ごほっ」

「なはは。そんな緊張しぃじゃ、何をやっても上手くいかないっしょ。もっと、気楽に行こうにゃ」

「お前はいつも気楽だろ……」


「なはは。その通り。人生、なるようにしかならないからねぇ。好き勝手に生きるべし」

 深い言葉のような、あっけらかんとしているような……正直、こいつが何を考えているのか、俺にはよくわからない。


「ま、『死』っていうのは突然訪れるもんだからねぇ」


「……」

 なんだ? 今日のナーシャは少しおかしいのか? ……いつもおかしいからよくわからん。なんだかんだで、あいつも緊張してんじゃねえの? しょうがねえやつだ。


「そんなこと気にしたって始まらねえだろ。何も考えずに生きてる方が賢いこともあるさ」

「……」


 ナーシャは驚いたような顔をしていた。

「やっぱ、エリクっちは言うことが違うにゃ。羨ましいよ、君が」


 普段、細目のナーシャが目を見開いているのを初めて見た気がする。ちょっと、ドキっとした。目を開けると、綺麗な顔してんだな、こいつ……。


 って、何を見とれているんだ、俺は。

 そんなことをやっているうちに、中庭についていた。

 ったく、ナーシャのせいで、緊張感が消えちまった。いや、それはいいことなのか?


「あー、静粛に」


 石版の前には、校長が立っていた。母さん……理事長は不在のようだ。


「こほん。それでは、発表させて頂きます。上級生の皆さんはこれから、卒業試験として……一年間の間、世界中を冒険して貰います」


「……は?」


 な、なんだってっ!? 世界中を冒険っ!? マジか。マジでいってんのか、この校長!

 当然のように、周りもざわつき始めた。そりゃそうだ。


 そんな生徒の行動を予測していたかのように、手を叩く。それも、魔法をつかって辺りに響き渡るように。


 その超音波のような音に、生徒は耳を塞いで黙りだす。


「はい。静粛に。えー、そうですね。突然の発表に驚いているかもしれません。ですが、これは決定事項です。生徒の皆さんはこれから、ここで即席のパーティーを組んで貰い、冒険に出かけて貰います。もちろん、ソロでも構いません。パーティーの人数も制限はありません。旅立つ時間の制限もありません。下準備をしっかりしてから旅立つもよし、すぐさま外の世界を踏みしめるもよし。ご自由にして下さい。ですが、先程も言いましたが。これは、『卒業試験』も兼ねています。あなた方の行動はすべて点数をつけさせて頂きますので、ご注意下さい。また、冒険の結果をレポートにして提出して頂きますので、忘れずにいて下さい。何かしらの証明になるものを用意しておくことをおすすめします。以上です」


 校長の発言に今度は全員、沈黙してしまった。状況が理解出来ていないのだろう。当然だ。いきなり、一年の間、冒険に出かけろとか。しかも、即席のパーティーだって? おいおい、マジか。とんでもねえ、試験出しやがって……さあ、どうする? どう行動する?


 まずは、パーティーを組むか、ソロで活動するか。どちらにするかを選ぶ方がいいな。早くも取り合いになっている。成績の良い生徒同士で組み合っているようだ。当たり前か。その方が効率がいいもんな。これ、めちゃくちゃ高難易度の試験じゃねえか。あらゆる行動は採点化されているんだろ? 行動一つ取るのも、慎重にならなくちゃいけない。


「ああ、そうそう。肝心なことを言い忘れていました。出発の前には、この石版に手を触れてからでお願いします。簡単な戦力のクラス分けを致しますので」


 さらっと言いやがった。下手すると、聞いていない奴もいるぞ、これ。俺は迷って行動していなかったから、たまたま耳に入って来て、聞き取れたけど。この校長……マジで、曲者だろ。石版に手を触れずに出発してたら、即アウトじゃねえか。


ほとんどの連中がパーティー組むのに必死で聞き取れてないぞ。早速、ふるいにかけてきやがった。


「校長が持ち場を離れていないにも関わらず、動き始めるのは愚の骨頂。貴方は中々冷静のようね」

「あんたは……?」


「私? 私は、セレスティア・ロレーヌ・バイトゥエン。セレスでいいわ。エリク・ユーファシア・ラディウス君」


「どうして、俺の名前を……」

「この学園で貴方の名前を知らない方がおかしなことでしょう。この学園の創設者の末裔なのだから」

「ま、たしかにそうだけど。それで、どうして俺に話しかけたんだ?」


「あら、意外と鈍いのね。それとも、試しているのかしら? 貴方を誘いに来たのよ。ラディウス君」

「エリクでいい。……て、俺を?」


「じゃあ、エリク君。私のパートナーにならない? 勿論、他に仲間を作りたいのならそれも構わないけど」


 突然、そんなことを言われてもな……まったく、面識もないっていうのに。水色の透き通った髪に、白い肌……氷のような表情。感情を表に出さないタイプだろうか。かなりの美少女だ。


「私が貴方と組むメリットは、貴方の地位が一つ。二つ目は、洞察力や冷静さ。三つ目は、戦力的な意味合い。私は貴方にそれだけの評価をしているわ」


「ど、どうも……しかし、ハッキリと言うんだな。そこまで俺に対してハッキリと権力目当てだなんて、言った奴はいないぞ」


「そう? 事実だし。むしろ、言わない方がおかしいじゃない? 一年間冒険するということは、多額の資金が必要になる。貴方なら資金調達にかかる時間をカット出来るでしょうし」


 なんか凄いなこの子……顔に似合わず、グイグイ来るんだけど。しかも、俺は案外そういうタイプに弱いかもしれない……正直、嫌な気持ちは全然なく、むしろ嬉しい。可愛いし。断る理由なんて、どこにもない。


 が、一応考えてみよう。ほら、もしかしたら学園側が用意した刺客とかかもしれないし?


「じゃあ、俺が君と行動するメリットはなんだ?」

「……そうね。私の体を好きにして構わないわ」


「……は?」


 い、いきなり何を言ってるんだ、こいつは!


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