ハンバーグの中には
ハンバーグの中には玉ねぎが入っている!
これは、信じていいことなんだよ。ママのお出かけで、パパが作ったハンバーグを食べたときに、はじめて気がついたんだ。
それでぼくは、パパに聞いてみた。
「ママも、玉ねぎのみじん切りを入れていたの?」
すると、パパは言ったんだ。
「そうだよ」
とてもショックだったよ。だって、ぼくは玉ねぎが大きらいなのに、ハンバーグは大すきってことになるんだから。それって、なんかおかしいよね。
でも、これではっきりしたんだ。ハンバーグの中には玉ねぎが入っている。
どうして、パパが作ったときに、気がついたんだろう。もしかしたら、いつもとちがう玉ねぎだったのかもしれない。
それでぼくは、ママに聞いてみた。
「パパのハンバーグは、いつもとちがう玉ねぎをつかったの?」
ママは、首をよこにふった。
「いつもと同じ八百屋さんのよ。どうして?」
ぼくが、そのわけを話すと、うなずきながらママは聞いてくれたんだ。それから、こう言った。
「ハンバーグにつかっているものは、パパもママも、ぜんぶいっしょよ」
ぼくは、うでを組んで考えた。なにがちがうんだろうって。
するとママは、ウィンクしてから、ヒントをくれたんだ。
「玉ねぎのつかい方は、ちがうかもよ」
いつもママは、ぼくが思いつかないことを、教えてくれるんだ。ありがとう、ママ。
さっそく、パパに聞いてみることにした。
「ハンバーグを作ったときに、玉ねぎで気をつけたことってある?」
パパは、めがねをさわって、少し考えてから言った。
「とくにないなぁ。ただ、みじん切りがうまくいかなかったんだよ。あと、いためる時間が少なかったかな。パパのハンバーグ、まずかったかい?」
「そんなことないよ。ママの味とちがったから、聞いてみただけ」
ぼくは、パパをがっかりさせないように気をつけた。おとなのあいても、なかなかたいへんさ。
つぎは、ママに聞いてみることにしたんだ。
「ハンバーグを作るときに、玉ねぎで気をつけていることはなに?」
ママは、エプロンで手をふきながら言った。
「みじん切りの大きさが、ぜんぶ同じになるようにしているわね」
「どうして?」
「そうすると、口に入れても、気にならなくなるのよ」
「へぇー」
ママは、ぼくのために、そんなことをしてくれてたんだ。
さらに、ママは言った。
「それから、しっかりといためるの」
「そうすると、どうなるの?」
「からーい玉ねぎが、あまーくなるのよ」
やっとぼくは、ハンバーグに入っている玉ねぎに、今まで気がつかなかったわけがわかったんだ。ママのハンバーグが、おいしいわけもね。パパには、わるいけど。
じつは、もう一つわかったことがあるんだ。
それは、ぼくが玉ねぎを食べられるってことさ。
だって、ずっと知らずに食べてたんだもの。これからも、ハンバーグが大すきだもの。
ハンバーグの中には玉ねぎが入っている!
今こそぼくは、パパやママといっしょに、玉ねぎたっぷりの、すぶたやハヤシライスも、食べられるような気がする。