小さい願い
保育室に設けられた園児よりも遥かに高く、手を伸ばしても届かない大きな笹竹。
そこには、願いが込められた短冊が飾りつけられている。
そう、今日は7月7日――七夕の日。
『かめんふぁいたーのおもちゃがほしい』
『ビュティキュアになりたい』
『さっかーになる』
覚えたての歪な形をした文字の羅列。
先生たちにだって、本人だって読めないかもしれない。
それでも小さな願いが叶えばいいな、と私も園児たちと一緒に手を合わせた。
……?
不意に笹竹の上の方に丁寧な文字で書かれた短冊に気がつく。
決して字が上手いわけではない。
でも、読む人に配慮した丁寧な文字。
『せんせいだいすき』
ほかの短冊とは違う小さな願いが書かれた短冊ではないけれど、想いがいっぱい、いっぱーいに溢れる1枚の短冊だった。
私は、いつも甘えてくれる男の子の方へ視線を向ける。
男の子の恥ずかしそうに目を背ける仕草。
あの短冊は、男の子が私のために書いてくれたものであるとすぐにわかった。
――ふふっ。
わかりやすくて可愛い。
――ありがとう!
――センセーも大好きだよ!
男の子の耳元でそう告げる。
すると、男の子は顔を真っ赤にして、逃げていった。
直接伝えてくれてもいいのにと思いながらも、恥ずかしがり屋な男の子が文字にして想いを伝えてくれたその事実にキュンときた。