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嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第3章 カムイ編
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両軍の誤算

僕達は学園の門を抜けた。

「……これは……!」

夥しい数の、人型の闇の塊が学園の敷地内を埋め尽くさんばかりに溢れかえっていた。

「アアア……!」

さもゾンビの如く呻きながら此方に集まってくる。

「…っ」

そのおぞましい光景に僕は息を呑んだ……が、即座に戦闘態勢に移行した。

「〈闇爆魔弾(ダークネスボム)〉」

「〈金剛氷吹雪(ダイアモンドダスト)〉」

「〈花鳥風月〉!」

闇の爆風と煌めく吹雪と不可視の真空波が、前方のゾンビ達を纏めて消し飛ばした。

「ふっ、大した事ありませんね」

「そうね……って、アリシアと真澄がやっちゃダメでしょ。何の為に私がついてるのよ」

「あ、ゴメン」

……僕達は出来るだけ消耗せずに突破しないといけないんだっけ。

エリンを先頭に、僕達は再び走り始めた。



タナトス区に通じる門が近付いてくると、ぱったりとゾンビが現れなくなった。

「……突然出なくなりましたね」

「何でだろう……?」

僕達が首を傾げていると、エリンが立ち止まった。

「……何かいるわ」

「……!」

僕達の進路上に、カムイで会った紫色の髪の青年がいた。

「君は……」

「ゼクス・アランスターだ。よくここまで来たな……幻想の世界(ファンタジアワールド)真実を嗤う月(トゥルーハイドムーン)氷華の塔(フロストタワー)!」

ゼクスは楽しそうに笑った。

「……ご存知の通り、こちらは三人全員が第二魔法体系(セカンドグリモワール)持ちです。邪魔しないでくれますか?」

アリシアがゼクスを見据えた。

……そう、普通一人で第二魔法体系(セカンドグリモワール)持ち三人を相手するなんて出来る訳が無い。

氷華の塔(フロストタワー)はさておき、お前らはボスが世界の支配者になる為に欲している。だからここはお前らを殺せない」

「ならどいて下さい」

「……なーんてな。確かに、お前ら二人は殺さず生け捕りにしろって命令だ。だが、俺という最強の駒がありながらお前らを使って世界を支配する?ハッ、下らねぇ」

ゼクスの顔から笑顔が消え、吐き捨てた。

「俺がお前らを始末し、俺とボスだけで十分って証明してやるよ」

ゼクスの足元に魔方陣が展開した。

「……随分と自信があるのね」

「ああ、お前らじゃ俺には勝てねぇ。それはお前らも知ってるだろ?」

初めて会った時は満身創痍だった、それ以外で戦ったとでも言うのだろうか。

……ん?そもそも僕達が負けっぱなしなのって……!

「……まさか!?」

僕より一歩早く結論を出したアリシアが目を見開いた。

「そのまさかだ。我が咆哮は地を震わせ、我が爪は海を裂き、我が翼は天をも狂わせる。我こそ至高にして最強の龍!今こそ目覚めん、“魔龍の力(ドラゴンストレングス)”!」

ゼクスの姿が紫色の光に包まれて消滅した。

その代わり、雲を裂いてあの魔龍が舞い降りた。

「グワォォォォ!」

「完全に誤算です……!」

アリシアが悔しそうに呻いた。

「アリシア?」

黒幕(ヴァールハイト)が私達を殺そうとしないのは予想通りでしたが、まさか命令無視で殺しに来る敵がいて、しかもソレがあの魔龍(一度も勝ててない相手)とは……!」

成程、最悪の展開だ。

恐らくヴァールハイトにとっても計画が崩れかねない故に、最悪の一手だろう。

「ソウダ、オ前達ハコノ俺ニ一度モ勝ッテイナイ」

「……喋れたんですか」

アリシアが呟いた。

「出でよ、“氷華の塔(フロストタワー)”!」

地鳴りと共に、氷の塔が出現した。

「エリン!?」

「ここは私が引き受けるわ、アリシアとマスミは先に行って」

氷の砲身が一斉に氷弾を放った。

冷気が白煙を発生させ、それが煙幕となる。

「今です」

アリシアの合図で、僕達は走り抜けた。

……本当に、これで正解なのかな……?

「マスミ、私は嘘吐きです」

タナトス区への門を前に、アリシアは立ち止まった。

「そうだね、今更何を言ってるの?」

「でも、こんな時まで嘘を吐かないといけないんでしょうか」

アリシアは拳を震わせていた。

「……何が言いたいの?」

……いや、僕も薄々分かっている。

「自分の気持ちを偽ってまで!親友を見捨ててまで!……先に進むのは、果たして正しい事なんですか……?」

……僕は、アリシアの助手だ。何が正しいのか、僕はアリシアに従うだけだ。それでも、言える事はある。

「……少数の犠牲を切り捨てて多数を優先するのも、一つの正義だと思うよ。でも、ここでエリンを切り捨てる事に正義があろうと、それが正解だとは僕は思えない」

「……マスミ」

「何?」

「ヴァールハイトを倒すのに必要なのは、私の魔力と能力です。貴方は八岐大蛇の回復力があります。言いたい事は……分かりますね?」

……まぁ、そうなるよね。

「うん。僕がゼクスを倒す」

「流石、私の助手です」

僕達は回れ右をした。

「テルミヌスを私に使わせて下さい」

「そうだね、はい」

「有難うございます」

僕はヴィロワールから預かった剣をアリシアに渡した。

魔龍には物理攻撃の方が有効で、アリシアも魔力の消費を抑えて攻撃出来るからだ。いくら何でも、アリシアが全く攻撃に参加せずゼクス(魔龍)を攻略するのは不可能だ。

「では……行きますよ!」

アリシアは足に闇のエネルギーを纏い、学園の城壁を駆け上がった。

「うん!」

僕は足元で水を爆裂させ、跳躍する。

冷気の白煙から出た僕達は、空中でエリンとゼクスの戦況を確認した。

ゼクスの攻撃力は脅威的だが、エリンの要塞としての性能が尋常でなく、文字通り自分を使い捨てて時間を稼ごうとしていた。

……エリンを死なせはしない!

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

僕達は同時に急降下し、ゼクスの背中に剣を振り下ろした。

「ヌゥ!?」

悲鳴のような咆哮が轟き、ゼクスの巨体が墜落した。

「二人とも何で!?」

エリンが声を荒げた。

「エリン、貴女を死なせる訳にはいきません」

「ま、そういう事だよ」

僕達は着地し、剣を構えながら答えた。

「ふん、これだから貴女って人は……分かったわ。でも後の事考えなさいよ?」

「勿論です。エリン、カムイでやったように空中に足場を展開して下さい。私とマスミで斬り伏せます」

「了解よ。〈魔氷の空域(フリージングエリア)〉!」

周囲に無数の氷塊が出現し、空中に足場が出来た。

「グワォォォォ!」

ゼクスが咆哮し、再び空中に飛んだ。

「流石に頑丈ですね」

「まぁ、アレで倒せる相手なら負けてないよ」

僕とアリシアは近くの氷塊に跳び乗り、次々と跳び移って高い足場に移動した。

「さぁ……始めましょう」

時間決めても守れないようなら決めない方が良いんじゃね?

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