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嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第3章 カムイ編
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決戦へ

僕達は如月邸から少し離れた場所にある祭壇は案内された。

「この祭壇を使って、兵や魔物を送っていたのよ。この転送システムが存在する場所は多くないわ。だからヴァールハイトに狙われたのかもしれないけど」

白夜は自嘲気味に呟いた。

「それを使ってアルカディアに戻って反撃に出るってのも、皮肉が利いてるね」

「仕方無いじゃない、船が沈んだんだし」

クスクスと笑うレイに、呆れたように返すエリン。

「ゴメンね真澄君、あたし達はここの混乱を取り敢えず収拾つけないといけないから」

雷虎が申し訳無さそうに言う。

「ううん、雷虎のお陰で糸口を掴んだんだ。十分だよ、有難う」

僕は祭壇に登りながら返した。

アリシア達も同じように祭壇に登った。

「……真澄、アリシア、エリン、レイ、アレッド、武運を祈るわ」

白夜のその声を最後に、僕達は白い光に包まれた。



「…………!」

目を開けると、広いスタジアムの真ん中にいた。

「……何処だよここ」

学園の召喚施設に繋ぐと聞いていたのだが、どう見ても学園の施設ではない。

「ここは、ドラゴニア区の闘技場ですね。召喚施設が壊れているからエラーを起こして座標がズレたのでしょう」

アリシアが冷静に分析した。

「取り敢えず、ここを出よう…………え!?」

僕は出口の方を向いて、愕然とした。

「久しぶりねぇ……ガキども」

「転送の祭壇を使った、か。一歩遅かったな」

「何故……ここにいるんですか……ドラセナ!」

「フリードまで……!」

かつて破った筈の二人(ドラセナとフリード)がそこにいた。

……本当に、あの二人なの……!?

二人とも、おぞましい闇を纏っている。

アリシアや白夜のいずれとも異なる、禁忌を感じる穢れた闇の力だ。

「何故ここにいるか、ねぇ。貴女なら分かる筈なんだけどねぇ……“真実を嗤う月(トゥルーハイドムーン)”」

ドラセナがアリシアを見据える。

「……どういう事かしら?」

エリンが怪訝そうにアリシアの顔を見た。

「……そうか、そういう事でしたか。謎は解けました」

「嘘吐き探偵の最後の推理ショーだ、拝聴させて貰おう」

フリードは斧を地面に突き立てた。

……どういう意味で最後なのかな?どちらにしろ、アリシアを死なせるつもりは無いけどね。

「全ての黒幕は、ヴァールハイト・ライアータ……かつて私に殺された筈の男です。では何故彼が今になって蘇ったのか。その答えは、ヴァールハイト死亡直後に姿を消した彼の妻……ラーミアの第二魔法体系(セカンドグリモワール)にあります」

……アリシアのお母さん?そういえば、魂を集めるどうこう言ってたような気がするけど……。

「“生と死の死神(ライフアンドデス)”……人間の魂を奪う事で自在に死を与え、その魂で人間を生き返らせる禁忌の力です」

「な……!?」

僕達は愕然とするが、ドラセナとフリードは余裕の笑みを崩さない。

「この力で殺した人間や老衰で亡くなった人間を復活させる事は出来ません。また、死体が無ければ復活はしようが無い。ラーミアはその力で自分の魂を第二魔法体系(セカンドグリモワール)ごと、ヴァールハイトに捧げたのです。結果、ヴァールハイトは第二魔法体系(セカンドグリモワール)を二つ持った異形の存在として復活した……貴方達はヴァールハイトのその力で蘇った。違いますか?」

アリシアは右手の人差し指を突きつけた。

「その通りよ。それで、どうするのよ?」

ドラセナがニヤリと不気味な笑みを浮かべながら竜炎を全身に纏った。

「あの世に送り返すまでです〈闇剣錬成(ダークソード)〉」

アリシアは明確な殺意を携え、闇剣を構えた。

「……そうだね」

僕は剣を抜いた。

「そうだな。だがアリシア、お前と真澄は出るな」

「え」

その声が聞こえた直後、僕達とドラセナ達の間に火柱が上がった。

「が……」

火柱が上がったその場所には、ヴィロワールが赤い髪を揺らして立っていた。

「学園長……!」

「ヴィロワール……!」

ドラセナが憎々しげにヴィロワールを殺意の籠った目で睨み付ける。

「久しいな、愚かな義姉よ」

その殺気をヴィロワールは涼しい顔で流した。

……そう言えば、ドラセナは学園長の義理のお姉さんなんだっけ。

「……どういう事ですか?学園長、私が出ちゃいけないとは」

「お前の推理、聞かせて貰ったぞ。それを踏まえて状況を整理する」

ヴィロワールは僕達に一切目をくれず、ドラセナとフリードに睨みを効かせながら話し始めた。

「ヴァールハイトによってアルカディアに大量の魔物が放たれた。一見すると人間のゾンビだ……恐らく、ヴァールハイトの力で蘇った死者なのだろう」

「!」

……既に侵略されていた、手遅れだったんだ。

僕達は息を呑んだ。

「学園外の魔物は殲滅済み、学園は生徒も教員も避難した状態で封鎖してある。人間しか通さない結界でな。現在の敵戦力は、学園内に残っている魔物、ここの二人、そしてタナトス区にいるヴァールハイトだ。ヴァールハイトは生殺与奪を操る力がある……私でも勝てるか分からん」

「そんな……!」

……学園長が勝てないのなら、どうすれば良いんだ。

「しかし、ヴァールハイトの狙いがアリシアと真澄の力なら、奴はお前達二人を殺さない。戦闘不能にして洗脳する手段を取るだろう……そこに勝機がある」

「!」

……そうか、ヴァールハイトは僕達を欲しがってるから殺さない。でも他の人は邪魔でしかないから問答無用で殺す。つまり、戦えるのは僕達しかいないんだ。

「……分かりました」

「うむ。コイツらは私が相手をする、お前達は行け」

ヴィロワールが炎を纏った。

「エリン、レイ、アレッド、学園長とここに残って下さい」

「!?」

「学園長も全快ではないのでしょう?」

「……流石にな」

「敵は、闇の力で格段にパワーアップしています。消耗している学園長一人では危険です」

……確かにそうだ。でも、それでは僕達がある程度消耗してからヴァールハイトと戦う事になりかねない。

「でもアリシア、それだと貴女達の負担が大きいわ。私だけでも行かせて」

エリンが真っ先に抗議した。

「エリン……」

アリシアが返事に詰まったその時だった。

「“大地の鉄槌(グラウンドハンマー)”!」

「!?」

突如出現した巨大な岩柱が、ドラセナとフリードを真横に吹き飛ばした。

「この技は……!」

ドラセナ達の背後、即ちスタジアムの出入口から茶髪の少年が歩いてきた。

「あぁ、行っちまえ行っちまえ」

クラスメイトにして、アリシアを目の敵にしている土属性の魔術師、グレーディアだ。

「グレーディア・バール、何故ここにいる?」

避難命令を出していただろう、とヴィロワールが睨み付けた。

「そこのババアをぶっ殺す為だ」

グレーディアはスタジアムの壁を見やった。

「バッ……!?」

「不覚をとった……」

ドラセナとフリードが立ち上がった。

「学園長代理を始末したのは学園長だが、その状況を作ったのはそのババアだ。だから許さねぇ」

思えば、あの時グレーディアは洗脳される事無くゲイルの味方についていた。

憧憬や尊敬の思いがあったのだろうか、だとすればゲイルを誑かしたドラセナを憎んでいるだろう。

「だから頭数は足りてる。行けよ、嘘吐き探偵の力になりたいんだろ?エリン」

「グレーディア……有難う」

「礼は要らねーよ、さっさと行きやがれ。嘘吐きとその取り巻きどもめ」

グレーディアが吐き捨てるように言った。

「分かりました」

「待て、コイツを持っていけ」

ヴィロワールが投げたモノが僕の足元に突き立った。

「これは……」

僕がアルカディアに来たばかりの頃、ヴィロワールに試しに持たされた剣だった。

「その剣の銘は“テルミヌス”。最高級の処刑剣だ」

「処刑剣テルミヌス……!」

その両刃の剣を僕は掴んだ。

「断罪の為の剣だ……頼んだぞ」

「分かりました、使わせて貰います!」

「……行きますよ!エリン、真澄!」

「ええ!」

「うん!」

僕達は走り出した。

グレーディアがドラセナ達を吹き飛ばしたお陰で、出入口を通れる。

「アルカディアを……頼んだぞ」

グレーディアの真横を通る時、そう聞こえた。

「グレーディア……」

……聞いてたのかな、アリシアの推理。

「御武運を!」

アリシアの声を残して僕達は闘技場を飛び出し、ドラゴニア区を駆け抜ける。

ふっ、今回は忘れずに投稿しましたよ。さて、超絶ひっさびさのグレーディア君ですよ。まぁ、主人公視点なので見せ場はありませんが。

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