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嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第2章 シャンバラ編
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竜騎士見参

「やれやれ、そりゃ門番いない訳ですよ」

門をくぐって早速、アリシアが溜め息を吐いた。

罠だ、僕達は囲まれていた。

「何よコレ……」

「見覚えあるなコイツら」

そう、アルカディアを襲った謎の兵士と全く同じ外見だったのだ。

「来たぞ!」

「捕らえろー!」

兵士達が襲い掛かってくる。

同時に、さっきくぐったばかりの門の鉄格子が降りた。

「門が……うぐっ!?」

僕は頭痛と眩暈がした。

「マスミ!?」

アリシアの声も僕には届かない。

そうだ、やはり僕は彼らを知っている。

失われた記憶とおぼしきビジョンが途切れ途切れに走馬灯の如く思い浮かぶ。

そうだ、僕はあの時もこうして囲まれていた。

何故だ、分からない。

どうやって解決した?

それは……

気が付くと、僕は剣を抜いて兵士達の中に飛び込んでいた。

「マスミっ!?」

誰の声か、聞こえない。

集中させてくれ、この追憶のビジョンに……!

「〈月輪散華〉」

何が起きたのか、僕が何をしたのか、分からない。

ただ、身体が先に動いた。

兵士達の鮮血が散り逝く華のように舞っていた。

「ぐぁぁぁ!」

血にまみれながら周りの兵士達が倒れた。

「え?僕は……」

「貴様ぁ!」

自分のした事に唖然としていた僕は背後に斬り込んでいた兵士に気付かなかった。

「〈邪閃光(イビルレーザー)〉!」

「ぐふっ」

間一髪、アリシアのレーザーが兵士を貫いた。

「何ボサッとしてるのですかマスミ!」

「分からない……分からないよ!」

僕の記憶の一部が一瞬だけ戻っていたのだろう、気がついたら僕は未知の剣技を放っていた。

否、未知ではない。

きっと、僕の本来の技なのだろう。

自分の技に肉体も思考も追い付かない僕は立ち尽くすしか無かった。

「アリシア!敵の増援がどんどんくるよ!」

「このままじゃジリ貧だぞ!」

「どうするのよ?リーダー」

レイ達が兵士達を倒しながらアリシアに問う。

「突破しようにも撤退しようにも、マスミがこの状態だと厳しいですね」

本当に申し訳無い。

ついでに言うと、急に凄まじい速度の技を放った反動で筋肉が悲鳴をあげて動かない。

どうしたものか、どうしようも無い。

そう思っていた時だった。

「グガァァァァ!」

飛竜(ワイバーン)の咆哮が轟いた。

「飛竜!?こんな時にかよ……!」

アレッドが悪態をついた……が。

「グガァァァァ!」

「ぎゃあぁぁぁ!?」

兵士達のいる場所に凄まじい勢いで飛竜が着地した。

五人程の兵士が下敷きになり、動かなくなった。

……何だコレ。

「焼き払え!」

飛竜の上に乗っていた人影が飛竜に命令を下した。

「グガァァァァ!」

紫の炎が兵士達を薙ぎ払う。

「うわぁぁぁ!」

「て、撤退!撤退ー!」

兵士達が逃げていった。

「ケガはありませんか?」

飛竜に乗っていた人影が降りてきた。

カレンと同じくらいの少女だ。

翡翠色の髪と瞳が特徴的で、洗練された身のこなしからかなりの手練れである事が分かる。

……十中八九、シャンバラのエースだろう。

まさか飛竜使い(ワイバーンライダー)だったとは。

「はい、お陰様で」

「問題無いわ」

「大丈夫だよー」

「ありがとな」

僕以外が応じたので、僕も思考を中断して応じる。

「……あ、うん大丈夫。有難う……えーっと」

「シャンバラ代表騎士団団長、シルフィン・エメラルドと申します。お待ちしておりました、アルカディア代表騎士団の皆様」

シルフィンはにこやかな笑みを浮かべて一礼した。

首都の危機だというのにこの余裕、余程の強者かはたまた能天気か。

「我々公国の拠点は少し離れたところにあります。今からご案内しますので、ついてきて下さい」

そう言うとシルフィンは飛竜に乗った。

僕達の自己紹介がまだなのだが、また敵が来たらたまったものではない。

「やりなさい!」

「グガァァァァ!」

飛竜が尻尾を叩きつけて、門の鉄格子を破壊して外に出た。

良いのかそんなあっさり壊して。

「何ていうか……態度と裏腹に豪快な人だな」

僕の隣でアレッドがぼやいた。

全くもって同感だ。



首都から1時間程馬を走らせたところに、小さな砦があった。

「ここがシャンバラの防衛拠点にして、現シャンバラ奪還軍前線基地“ザ・キープ”です。正式名称は別にありますが、情報漏洩を避ける為にそう呼んでいます」

僕達はここまでの道中で、自己紹介を済ませていた。

「どうぞ、馬はあちらに繋げて下さい。陛下のもとへご案内致します」

シャンバラはシャングリラ公国の首都だ。

故に、シャングリラの長がいる。

公国とは貴族が治める国の事である。

元々王国であったが、愚王が続いた為に有力な貴族に潰されてしまったというのは一般常識らしい。

旧王家を教訓として、筆頭貴族が新王家になってから賢王とまではいかずとも、愚かではない王が続いているらしい。

出発の前夜に、そうアレッドに教えられた。

僕達は馬を繋げて、シルフィンの後に続いた。

「しかし、マスミ殿といいましたか」

「ん?」

殿呼ばわりはやめて欲しいが、話の腰を折るのも悪いので気にしない事にした。

「不思議な感じが致します」

「不思議な感じ……?」

僕は首を傾げる。

「恐らく、魔力心臓(マギアハート)が貰い物だからでしょう。マスミは元々魔力心臓(マギアハート)を持ってなかったのですが、先輩から継承したのです」

成程、と僕はアリシアの説明に納得した。

最も、僕の身体の事だから僕自身で説明出来なくては駄目なんだろうけど。

「いえ、そうではありません」

「え?」

シルフィンの否定に、僕達は思わず聞き返した。

「マスミ殿にはソレとは別に、本来あってはならない力を感じるのです」

「本来……あってはならない力……!?」

どういう事だろうか、僕の記憶と関係しているのだろうか。

「……覚えが無いなら、気のせいですかね。忘れて下さい」

シルフィンはそう言って話を終わらせたが、僕は釈然としない。

確かに、彼女の気のせいだと切り捨てるのは簡単だ。

しかし、飛竜使い(ワイバーンライダー)は感性が鋭く、常人には感じ得ない事も第六感で感じとる事があるが故に、そう易々と忘れる事など出来なかった。

「姉上」

いつの間にか、僕達の目の前に僕と同じくらいの身長の少年がいた。

琥珀色の髪と瞳に不思議な凛々しさに感じる。

「どうしました?リディオ」

「どうしたもこうしたも、大公殿下のもとへご案内する前に客室へ案内するよう申し上げておいたでしょう!」

リディオと呼ばれた少年は、腰に手を当てて言った。

何というか、似ていない。

本当に姉弟なのだろうか?

「あ、申し遅れました。僕はシャンバラ代表騎士団副長、リディオ・アルトヴェルンと申します。姉上共々宜しくお願い致します」

そう言ってリディオは頭を下げた。

……ん?アルトヴェルン……?

確か、シルフィンの苗字はエメラルドだった筈だ。

「二人は血が繋がっていない姉弟なの?」

レイが真っ先に訊いた。

彼女程能天気な人材がいると、訊きにくい事も訊けるというものだ。

「はい、僕は養子……というか拾われたんです。それで、姉上(シルフィン)の弟として育てられました」

「成程……すみません、レイがデリカシー無くて」

アリシアが頭を下げる。

とはいえ、アリシアも気になっていたと思うけど。



僕達は少し広い部屋に案内された。

部屋が足りないらしく、まさかの五人部屋だ。

「いやいや、流石に無いでしょ」

僕はぼやくが、他の四人は平然としている。

「打ち合わせし易いじゃないですか」

「アリシアが問題無いというなら問題無いわ」

「マスミもアレッドも変な事しないでしょ?」

「おう」

「まぁそうだけどさ」

……変に意識してるの僕だけですか。

「ベッドは無いんですか?」

「クローゼットにハンモックが畳んで入ってありますので、それをお使い下さい」

アリシアの問いにシルフィンが応じる。

僕はアリシアの家ではハンモックを使っていたので大丈夫だが、他の皆はどうだろうか。

とは思ったが、誰も特にリアクションしないので大丈夫なのだろう。

僕達は荷物を置いて、シルフィンとリディオに連れられ大公のもとへと向かった。

どうも、篠風 錬矢です!

やっと新キャラ登場しました。

……活躍するとは言ってませんけど。

おっと失礼、二章では真澄君がしっかり活躍しますので、どうかご期待下さい!

それではまた次回お会いしましょう!

До свидания!

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