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嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第2章 シャンバラ編
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疾走の激闘

翌朝、僕達は学園都市アルカディアの出口に集まった。

全員、支給された紀章を身につけていた。

団長であるアリシアのものだけ、少し装飾が異なる。

「昨夜決めた通りの編成で行きます」

僕の他にも、エリンが馬に乗れなかった。

だから僕はアレッド、エリンはアリシアの馬に乗る事になった。

走行中に魔物に襲われた場合、僕とエリンで迎撃する事になっている。

因みに、レイは一人乗りだ。

「向こうに着くのは夕方だよね」

「はい。なので途中、お昼休憩を摂ります」

僕の確認に、アリシアが応じる。

「打ち合わせは済んだようだな」

「学園長!」

ヴィロワールがボルグレスと衛兵を連れて現れた。

三人とも、馬を一頭ずつ牽いている。

「一番良いのを用意した。しっかり戻ってこい」

「分かってます」

アリシアが応じながら馬に乗った。

エリンもその後ろに乗り、アリシアに掴まる。

……嬉しそうだねエリン。

「ほらマスミ!」

「あ、うん」

アレッドは既に乗っていた。

張り切ってるなぁ……アレッドに掴まる僕としてはあまり熱くならないで貰いたい。

気合いどうこうじゃなくて、普通に炎的な意味で。

僕は何とか馬に乗り、アレッドに捕まった。

「宜しくね」

「ヒヒーン」

レイは既に馬と打ち解けていた。

普段世話をしてるのだろうか、そんな事無かったと思うんだけど。

という事はアレだ、えーっと、才能?もしくはレイが動物っぽいとかだろう、うん。

「もしもーし、マスミこっち見て何考えてるのー?」

「……顔に出てた?」

「出てましたね、かなり失礼な感じで」

「うっそ!?」

「嘘です」

やられた。

「良いから早く行け」

「は、はい!」

ヴィロワールに急かされ、僕達……いや僕は違うな。

アリシア達は馬を走らせた。



「へー、外ってこうなってたんだ」

学園都市の外には草原が広がっていた。

近くに森も見える。

爽やかな向かい風が心地良い。

「ああ、出るの初めてか」

「うん、そもそもアルカディアに来てまだ日も浅いしね」

何気に馬に乗るのも初めてだ。

いや、もしかしたら乗った事あるのかもしれないが、僕にそんな記憶は無い。

記憶喪失というのは、なってみると不思議なモノである。

というのも、そもそも自分に足りないのは何の記憶か分からないからだ。

アレを忘れた、コレを忘れた、どうしよう、という事にはならない。

自分の記憶が失われた実感が無いのだ。

能力や“世界(ワールド)”の事も、僕の失われた記憶に違いは無い。

だが、元々そんな記憶があったかすら僕には分からないから、大して喪失感が無いのだ。

そんな事より、今こうして一緒にいてくれる仲間がいる方が僕にとっては大事な事だ。

……アリシアは僕が記憶を取り戻す手伝いをすると引き換えに、と僕を助手にした。

なら、僕が記憶を取り戻した時、彼女は僕の隣にいてくれるだろうか?

そう思うと、僕は急に不安に思えてきた。

「ピィィィィ!」

甲高い声が響いた。

「何!?今の声!」

僕は思考を中断し、空を見上げた。

「今の声……グリフォンだな。後ろを見てくれ」

アレッドに言われ、僕は後ろを見た。

「ピィィィィ!」

いた。

獅子の体に、猛禽類の頭と翼と前足を持った魔物だ。

空を走るように飛んで僕達を追ってきている。

「常時のスピードなら馬と同等だが、一時的な加速する時が」

「ピィィィィ!」

突如、数倍の速度になって突っ込んできた。

「来たよ!?」

「散開っ!」

アリシアの号令に応じ、全員が離れた。

さっきまで僕達がいた地面にグリフォンが突っ込んだ。

その前足が地面を砕き、クレーターを作る。

「私、アレッド、レイは回避に集中!エリンとマスミで迎撃して下さい!」

「分かったわ」

「了解!」

僕は剣を抜いて水を纏い、再び飛翔したグリフォンに切っ先を向ける。

「〈氷剣展開(アイスソーディアス)〉」

八本の氷剣がアリシアの馬の周囲に展開された。

僕もああいうタイプの技が欲しい。

カレンに教えて貰えるだろうか。

「ピィィィィ!」

グリフォンが羽ばたき、その鋭い羽根が矢のように僕達に襲い掛かる。

「当たるかよ!」

「僕も狙えないよ!」

アレッドが馬を動かし羽根を避けるが、揺れて僕も狙いが定まらない。

成程、グリフォンはそれも狙ってのこの攻撃なのだろう。

なかなか知能が高いようだが、それはそれで腹が立つ。

「馬じゃなかったら障壁張れるのに……!」

「……狙いが定まらないわ」

エリンも僕と同じらしい。

このままじゃ埒があかない、下手な鉄砲も数撃てば当たると先人の言葉もあるし反撃しよう。

「〈拡散水流槍かくさんすいりゅうそう〉!」

三本の水の槍を生成し、射出。

それぞれが分裂し、水の槍の弾幕となる。

「ピィ?」

そもそも射出角度がダメだった、一発も掠りさえしなかった。

先人の言葉、もう信じない。

発射(シュート)

エリンの氷剣がグリフォン目掛けて射出されるが、全て回避された。

このままでは狩られてしまう。

……そういえば、レイの姿が見当たらない。

「アレッド!レイがいないよ!?」

「マジかよ!?」

僕とアレッドは周囲を見回すが、レイの姿は何処にも無い。

「レーイ!?」

「はーい!」

「!?」

グリフォンの真下にレイが現れた。

「そうか、〈不可視の光陰(インビジブル)〉だ!」

アレッドが言った。

そういえば、透明になれるとか何とか言っていた気がしなくもない。

レイがドヤ顔で右手を掲げた。

「〈破壊光線(バーストイレイザー)〉!」

「ピ!?」

放たれた巨大なレーザーをもろに受けたグリフォンは、その場で爆発四散した。

何というか……狡い。

透明化は卑怯だと思うんだ。

まぁ、攻撃する時は姿現してたから、透明化したまま攻撃は出来ないという事だろう。

「あっはっは、大勝利!皆時間稼ぎありがとー!」

「汚いですねレイ流石汚い」

「嘘で真実を塗り替えれるアリシアにだけは言われたくないなぁ……」

レイは笑いながら言い返した。

ごもっともです。

「もう少し進んだらお昼にしましょう」

「了解!」



「この辺りで良いでしょう」

アリシアは綺麗な川を見つけ、そこで馬を止めた。

「まず馬を繋ぐので、少し待って下さい」

「あっ、ちょっ」

アリシアが馬を降り、エリンは一人取り残された。

アリシアは馬全員を縄で繋ぎ、川沿いに杭を打ち込んでそこに繋げた。

随分と慣れた手際だ。

何度もやった事があるのだろうか。

「お待たせしました」

アリシアがエリンに手を貸して降ろしたのを見て、僕達も馬を降りた。

「ねぇアリシア」

「何ですか?マスミ」

「随分慣れてるようだったけど、こういうの慣れてるの?」

「勿論ですよ」

「だよね」

「嘘です」

「!?」

僕達は驚愕した。

慣れてないのにこの手際か。

「そんな事より、食事の用意手伝って下さいよ」

「あ、うん」

僕達は慌てて荷物を降ろすのだった。



アリシアが作ってきたサンドイッチを食べて休憩を済ませた僕達は、再び馬を走らせる。

グリフォンとの戦いで馬も疲れていたのだろう、休憩を摂ったからか、かなりスピードが出ている。

昼も過ぎて日射しが強くなってきたが、それ以上に草原の澄んだ空気を向かい風で受けるのが心地良い。

これが戦地への派遣でなければどれ程良いか。

「あんまり飛ばさないで下さいよ、夕方まで休憩無しで行くんですから」

「おう!」

「はーい!」

うん、良い返事なんだけど、二人ともスピード緩める気無いよね。

僕がそうツッコんでも無駄だろうし、僕は聞かなかった事にしよう、うん、僕は何も知らない。



夕方、首都シャンバラに到着した。

アルカディア同様、都市全体が壁に守られている。

「…おかしいですね、都市の正門に誰もいません」

「本当だ……」

占拠されたというのなら衛兵がいないのは仕方無いのだが、敵勢力の兵士すらいなかったのだ。

僕達は怪訝に思いながら、馬を繋いで門を開けた。

はいどうも、篠風 錬矢です!

今回の戦闘で、レイさんが実は透明化とかいう公認チート持ちなのが判明しましたね!

結構大事ですよコレ。

それではまた次回お会いしましょう!

До свидания!

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