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嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第1章 アルカディア編
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焔の断罪と竜の魔炎

「何故貴様がここにいる!?」

ゲイルが吠えた。

「学園長……!?」

「誘拐された筈では……」

そう、誘拐された筈のヴィロワール・アルカディアが現れたのだ。

「ふん……あの程度の結界で私を封じたつもりか?私の代理である君にそう思われていたとは、実に心外だ。私に焼き尽くせぬモノなど無いというのに……ああ、“元”代理だったな。君は解雇する」

「ぬ、ぬぅ……」

いつもの相手を見透かすような微笑だが、その赤い瞳には明確な怒りの色があった。

「……ふむ、成程な。状況は理解した、君達は下がれ」

「でも学園長、奴はカレン会長を……!」

「分かっている。大方、君はカレンに託されたのだろう?」

「は、はい……」

「それとアリシア、よくやった。カレンは私が病院に送った、後は彼女次第だ」

「!」

僕達は顔を見合わせた。

「さて、裁きの時だ。先程解雇と言ったが……アレは嘘だ。ゲイル、君にはここで灰塵へとなって貰う、今までご苦労だったな」

「ひっ!?」

口元に獰猛な笑みを浮かべたヴィロワールに、ゲイルの血の気が引いていく。

ヴィロワールの足元に“天秤”を象った赤い魔方陣が展開された。

「ヴィロワール・アルカディアの名に於いて告げる。我は焔を以て裁きを下し、万象を焼き尽くす者。今こそ断罪の劫火を解き放たん。“浄火の審判者ブレイズジャッジメント”」

ヴィロワールの左手に焔の短剣が生まれた。

「く……〈暴風の聖剣ストームエクスカリバー〉!」

ゲイルが最大威力の斬撃を放った。

「危ないっ!」

「……」

僕は叫ぶが、アリシアは黙っている。

「効かん」

斬撃がヴィロワールの短剣に触れた瞬間、風の力は焼却され、塵と化した。

「裁きは絶対だ……」

ヴィロワールはゆっくりと左手の短剣を掲げた。

「〈暴風の神槍(ストームグングニル)〉!」

渦巻く風の魔力が槍となり、ヴィロワールに向かって放たれた。

「あの槍はカレン会長をやった……?」

「そうですね、しかし……」

「〈断頭の魔焔(メギトギヨティーネ)〉」

短剣を振り下ろした。

直後、太刀筋の延長線上に焔が迸った。

「ぐぁ、あぁぁぁぁ!」

ゲイルは瞬時に骨の髄まで焼き尽くされ、灰となって風に消えた。

風の槍は当然消滅し、床や天井をも溶断していた。

それどころではない、ゲイルがいた側の壁など吹き飛んでいた。

「な……」

僕はその火力に愕然とした。

ここは召喚施設だ。

強大な魔物が召喚され、暴走しても良いようにかなり頑丈な造りになっている。

それをたったの一撃で半壊させてしまったのだ。

「学園長……召喚施設大破、機能停止……です」

アリシアが言いにくそうに言った。

「む?……あっ……まぁ、問題無い」

一瞬“やっちまった”って顔をしてから、すぐにいつもの表情に戻った。

「やれやれです」

「ま、これで飛竜も来れないね」

ともあれ、これで事件は解決……とはいかない。

「さっきゲイルは引き渡す、とか何とか言ってたよね」

「はい……つまり、ゲイルも駒に過ぎなかった……と」

「それなら、“ドラゴニア区”の闘技場へ向かえ」

学園長が言った“ドラゴニア区”というのは、南にある竜の門の先にある。

闘技場くらいしか無く、何かの祭典の時は屋台が大通りに立ち並ぶそうだ。

「何で闘技場なんですか?」

「私がそこに幽閉されていたからだ。私が見張りを薙ぎ倒して脱出した以上、敵も戻ってきているだろうからな」

成程、しかし気になる点があった。

「僕達が行くよりも、学園長が向かった方が良いのでは?」

「いや、私は拘束や支配されている学生を解放せねばならない。負傷者がいれば病院に送る必要もある」

「……分かりました。行きましょう、マスミ!」

「うん!」

「任せたぞ」

ヴィロワールの言葉を背中に受けながら、僕達は走った。



僕達は竜の門を目指して走っているが、やはり邪魔が湧いてくる。

「逃がすなー!」

「何としても捕らえろー!」

この兵士達は一体何者なのか。

「ゲイルは倒れました、もう貴方達は私達を狙う必要は無い筈です!」

「大人しく出て行け!」

とは言ったものの、まだ本当の黒幕が健在なのだろうが。

「はっ!あんなじーさん知るかよ!」

「まだドラセナ様がいらっしゃる!」

「ドラセナ、ですか」

「それが黒幕の名前だね」

「うぉやっべ、言っちまった」

「馬鹿野郎!」

何で僕達は敵の漫才を見てるんだろう。

「アリシア、戦える?」

「ドラセナ戦まで出来る限り魔力を回復しておきたいですね。マスミが魔力供給して下さるなら大丈夫ですけど。カレン会長の魔力心臓(マギアハート)を継承したマスミの方が魔力の絶対量多いですし」

「どうやってやるの?」

「古今東西、魔力供給の方法なんて口づけに決まってるじゃないですか」

真顔で言ってのけるアリシア。

「うぇっ!?いやいや、無理だよ!」

そんな恥ずかしい事出来る訳が無い。

「私も無理です」

「おい」

僕は思わずツッコむ。

「俺達を忘れんじゃねー!」

「あ、漫才終わった?」

実を言うと忘れかけてた。

「そんじゃ、〈激流水天嵐げきりゅうすいてんらん〉!」

「うぉあぁぁぁぁ!?」

巨大な水の竜巻が兵士達を飲み込んだ。

「結構消耗大きいなコレ……」

「当たり前でしょう、水の大魔法ですし。っていうか、何でそんな気軽に撃てるんですかソレ」

確かに、大魔法は一朝一夕で身に付くモノではない。

ましてや、僕はついさっき初めて魔力を獲得したばかりだ。

「水の使い方が分かるんだ、きっとカレン会長の想いだよ」

僕は本気でそう思っていた。

才能だなんて思う程、自惚れていない。

「或いは、“世界(ワールド)”とやらのお陰でしょうか」

「さぁね。敵さん達も伸びてるし、先を急ごうか」

「そうですね」

僕達は兵士達を飛び越えて竜の門へ向かった。



“ドラゴニア区”は驚く程静かだった。

「何であの兵士達いないんだろう?」

「……マスミが指揮官としたら、絶対に見つけられたくないモノがあればどうします?」

「兵士に守らせ……あっ」

「気付きましたね、そこに戦力を割くというのは守りたいモノがあると公言しているようなものです。ましてや、この先に潜むのは本当の黒幕です。最高戦力だとすれば、わざわざ役に立たない護衛をつけて目立つ必要はありません」

「成程……でも他に人がいないのは?」

「何の大会も控えてないからです。ここには住居も商店もありませんから。期間限定営業の屋台と宿泊施設と食堂のみです」

「……にしても閑散とし過ぎだよね……」

「まぁ……だからドラセナもここを選んだのでしょうけど…………ドラセナ?」

「知ってるの?」

「……いつか新聞で読んだ気がします。私の思い違いでなければ、アルカディアを狙う事には合点がいきます」

という事は、僕が狙われる理由は分からないという事か。

「まぁ、良いか。行こう」

僕達は闘技場のスタジアムに入った。

その瞬間、僕達の足元から光の柱が天を貫いた。

視界が眩い閃光に覆われると同時に、全身に焼けるような激痛が走った。

「うぐっ…!」

「あぁぁぁぁ!」

僕は歯を食い縛ったが、アリシアが悲鳴をあげた。

光が収まった。

「アリシア、大丈夫!?」

「くっ……光属性のトラップ、ですか」

成程、それなら闇属性のアリシアには効果抜群だ。

「あら、まだ意識があるのねぇ。折角念の為に闇属性殺し(ダークネスキラー)のトラップを用意したのに」

コロシアムの中央で青紫の髪の女性……ドラセナが気味の悪い笑顔でこちらを見ていた。

「やはり、貴女でしたか……“竜の魔女(ドラゴンウィッチ)”」

「“竜の魔女(ドラゴンウィッチ)”?」

「ゲホッ……ドラセナ・アルカディア……六年前、アルカディアを追放された……うぐっ!」

何処からか飛んできた光属性のレーザーがアリシアを貫き、意識を奪った。

「アリシアっ!?…………ドラセナ、貴様ァ!」

会話中に攻撃、それも何処かに仕掛けたトラップでだ。

僕の怒りが頂点に達した。

「私は竜属性……闇属性の“(ムーン)”とは相性最悪なのよ。高くついたけど、用意した甲斐があったわ。お金なんてアルカディアを取り戻せばどうとでもなるし」

「取り戻すだって?……まぁどうでも良いよ、君はここまでだ」

「どうかしらね?」

「〈水流槍〉!」

水の槍を三本同時に放った。

「〈魔竜咬(ドラゴンファング)〉」

紫色の炎が竜頭の形となり、水の槍を咬み砕いた。

そのまま竜炎は僕の方へ向かってきた。

「おっと……嘘ぉ!?」

僕は回避したが、竜炎は曲がってきた。

「うわっと、ととととと!」

僕は逃げるが、何処までも追ってくる。

「無様ね、ほらもう一発」

二発目の竜炎が放たれ、追跡を開始した。

「……失敗したかな」

いつの間にか僕は壁に追い詰められていた。

「安心しなさい、殺しはしないわ!」

竜炎が加速し、突っ込んでくる。

「〈聖水結界〉!」

水で防壁を張った。

「無駄よ!」

「うわぁぁぁっ!」

竜炎は防壁をあっさり貫通し、僕に直撃して爆発した。

「はぁ、はぁ……追尾式の魔法なんて厄介な……」

「ふふふ……見事でしょう?アルカディアは長女たる私が継ぐべきだったというのに」

「君は……学園長の姉という事か」

「そうよ、義理のだけど」

成程、アリシアの言っていた“アルカディアを狙う理由”は何となく分かってきた。

「成程ね……講釈ご苦労さん、〈激流水天嵐〉!」

「!?」

ドラセナは水の竜巻に呑み込まれた。

「引っ掛かったね。僕の残った魔力では、コレをすぐに撃つのは出来なかった。だから逃げて時間を稼いだのさ!」

僕は回復が早い。

それは魔力もそうかもしれないという賭けだったが、上手くいった。

「はぁぁぁぁ!」

紫色の爆発が、竜巻を打ち破った。

「嘘でしょ!?」

「決めたわ、貴方はここで殺す。私にとって大事なのはアルカディアよ!記憶を失った“世界(ワールド)”なんてどうでも良いし、ハナから興味も無いわ!」

「……え?」

ドラセナが右手を掲げた。

膨大な魔力が渦巻き、ドラセナの頭上に巨大な球体を作っていく。

まさに、竜炎の太陽。

「ここで終わるのは貴方の方だったみたいね」

「……くっ」

僕は絶望した。

どうも、篠風 錬矢です!

流石は学園長、チートですね。

さて、第1章のラスボスが遂に登場しました。

次回でアルカディア編は最終回となります。

ではまた次回、До свидания!

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