表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第1章 アルカディア編
1/35

失われた記憶、探偵少女との出逢い

この作品は、より感情移入し易くしていただく為、主人公視点で構成されております。

逃げろ、逃げろ、逃げろ。

絶対に捕まる訳にはいかない、託された“力”を守り抜かないと。

さもなくば、絶対に大変な事になる。

「探せ、探せー!」

追っ手の声が聞こえる。

僕は雨の中、夜の森に隠れていた。

二週間前、僕の姉が村に伝わる宝剣を盗み出し、その力を僕に託した。

その後、その宝剣は行方不明になっている。

姉は予見していたのだろう、宝剣とその力を狙う敵が現れる事を。

「っ!」

突如、光魔法による照明弾とおぼしき光が僕を照らした。

「いたぞー!」

「どうしてこんな事にっ……!」

僕は走り出した。

どうしてこんな事になったのか、それは僕にも分からない。

分からないといえば、どうして姉は予見出来たのか、それも分からない。

だがそれは後で良い、今僕がするべき事はこの力を守り抜く事だ。

「もう逃がさんぞ!」

見たことの無い、布で顔を隠した異国風の装備に身を包んだ兵士達が回り込んでいた。

「くっ……仕方無いか」

僕は刀を抜いた。

「加減は出来ないよ!如月流散ノ型〈月輪散華(がちりんさんげ)〉!」

兵士達の中に飛び込み、回転斬りで薙ぎ払う。

「ぐぁぁっ!?」

文字通り華が散るように、鮮血が舞う。

「はぁ、はぁ……」

「第一小隊がやられてるぞ!」

「四肢は落としても構わん、何としても生け捕りにするんだ!」

増援が来たようだ。

彼らが幾ら束になったところで、僕を捕まえられる訳が無い、それは彼らも分かっているだろう。

彼らの目的は恐らく、僕を倒せる本命が到着するまでの時間稼ぎだ。

僕は血にまみれた兵士達を飛び越えて走り出した。

「!」

森の出口に、巨大な岩があった。

成程、先に手を打っていた訳だ。

「如月流破ノ型……」

僕は突きの構えをとった。

「いたぞ!罠にかかっている!」

「袋の鼠だ!」

……もう追い付いたのか、だがこの程度で僕を止められると思ってるのなら、嘗められたモノだ。

「〈破邪月光牙(はじゃげっこうが)〉!」

僕が放った突きは一撃で岩を穿ち、粉砕した。

「よし!…………しまった!」

岩を破壊し、森を出た僕は絶望した。

そこにあったのは、断崖絶壁だったからだ。

罠とはこういう事か、まんまと誘導されてしまった。

「……万事休す、かな」

まさに背水の陣。

僕は崖を背に囲まれてしまった。

「大人しくしていれば良かったモノを」

指揮を執っていた男が槍を構えた時には、既に僕の体は動いていた。

「如月流初ノ型〈初月一閃(はつづきいっせん)〉」

神速の居合い抜きが男の右腕を斬り飛ばす。

「ぎぁああああ!?」

男の悲鳴が合図となり、兵士達が一斉に襲い掛かってきた。

「くぅっ……!」

僕は右から左へと、ギリギリのところで捌いていく。

「しつこいよっ!〈月輪散華〉!」

対団体用の剣技で纏めて斬り伏せる。

「はぁ、はぁ……この技体力使うのに……」

僕が一息ついたその瞬間、無数の光と闇の斬閃が僕を貫いた。

「如月流奥義終ノ型〈終演如月乱舞(しゅうえんきさらぎらんぶ)〉」

「……え……!?」

僕は痛みと驚きで、悲鳴すら上がらなかった。

どうして、僕が継承していない一子相伝の奥義が僕に牙を剥いたのか。

「どう、して……」

いけない、ここで倒れては全てが水の泡だ。

僕は最後の力を振り絞って後ろに跳んだ。

僕が死ねば、もうこの力が日の目を見る事は無い。

「この、力は……守るから……姉、さん……」

僕は海に落ち、意識を失った。



「もしもーし、生きてますかー?死んでるならそう言って下さーい」

何を言ってるんだろう……

「……って、アレ……?」

僕は目を覚ました。

「あ、気が付きましたか」

焦げ茶色の帽子を目深に被った白銀の髪の美少女が、紫の瞳で僕の顔を覗き込んでいた。

とはいえ、帽子と前髪で右目が隠れているようだが。

まず、状況がわからない。

「……此処は何処なんだい?」

「此処は天国です、貴方は死んでしまいました。因みに私は担当の天使です」

僕の問いに淡々と答える少女(自称天使)

「……マジで?」

「嘘です」

真顔で言い放たれたその台詞に、安心感と殺意が湧いた。何だこの子。

「……コホン。それで、何故あんな大怪我をしていたのですか?」

「大怪我?」

そういえば、僕の身体のあちこちに手当ての痕跡が見られる。

もう痛みは無いようだが。

「えーっと、アレ?……何で僕……え?」

何も思い出せない。

これが俗に言う記憶喪失ってヤツか。

「……自分の名前は?出身は?使える魔法の属性は?」

立て続けに問い掛けてくる少女。

「……真澄。如月 真澄だ」

僕の名は、マスミ。

良かった、名前はあった。だがそれだけだ。

「……変わった名前ですね、カムイの方の出身でしょうか」

カムイとは恐らくカムイ帝国、極東の島国だった筈だ。

「分からない。名前と、常識レベルの知識しか思い出せないんだ」

「大丈夫、貴方には役割があります」

「……え?」

自分が使える魔法も、そもそも出来る事が分からない僕に役割などあるのか。

「貴方には、私の使い魔になって貰います」

「……は?」

いやいや、何故僕が。

「嘘だよね?」

「本当です、半分は」

「半分嘘じゃないか!」

とはいえ、半分本当とはどういう事だろうか。

「話を聞いて下さい」

僕の心中を察したのか、少女が語り始めた。

曰く、使い魔が欲しいからと、適当に召喚の儀式をやってみたら虫の息の僕が召喚されたらしい。

「つまり、君の手違いだよね」

「いえ、これは運命かもしれません……」

パーカーのポケットに手を突っ込み、真顔のまま照れたような声でのたまう。

「それ本気で言ってる?」

「勿論ジョークですよ」

そろそろ、僕は彼女に殴りかかっても良いかもしれない。

「事情は分かりませんが、一応命の恩人なんですよ?私」

「……僕は、自分が何者かも分からないんだ。他人に仕えてる場合じゃないんだよ」

建前ではあるが、本音も混ざっている。

「……分かりました。では、私が貴方の記憶を取り戻すお手伝いをしましょう」

「……はい?」

「これでも私、探偵なんです。アリシア・ライアータと申します。宜しくお願いしますね、マスミ」

「え、ちょっ!?」

そう言ってアリシアは、強引に決定したのだった。

どうも!初めまして、篠風 錬矢です!

嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)第1話を読んでいただき有難うございます!

今作が私の処女作となる訳ですが、楽しんでいただけそうでしょうか?

少なくとも、第1章の間は毎日23時半を目安に更新させていただきます。

それでは、第2話“アルカディア魔法学園”でお会いしましょう!До свидания!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ