異世界転生したらオタクと腐女子に分離してた LEVEL 1-4
LEVEL 1-4
「更に状況を理解してもらったところでもう少し話に付き合ってもらいます。」
フェアリーがげんなりしているベルとリンに、にこやかに話しかける。
「貴方達は本来この世界で戦闘不能になってしまったらどうなるかご存知ですね?」
ベルとリンが頷き返事を返す。
「大人しくこのマイルームに戻る、もしくは」 「ヒーラーであるプリーストが一定時間内にリザレクションをかけるか。」
ベルの1つ目の方法を言い、リンが2つ目の方法を言った。
「その通りです、貴方達がゲームに取り込まれこの世界の住人になってもこの世界の理は変わりません。
戦闘不能になり身動きが取れなった時、強制送還要請の信号を発信する、もしくは自身で強制送還要請の信号を送れない程の、生命にかかわるような重症を負った時、冒険者全員に王国より支給されている緊急安全装置が作動し、その冒険者はマイルームに強制送還されます。
しかし、今やこの世界は貴方達にとってはゲームの世界ではありません。
よってゲームの世界にはなかった五感があります。」
「マジで!?、すげーな!冒険もいいけどハイスペックに生まれ変わったんだし彼女作らない手はないな、へっへっへ。」
「なに、その如何わしい手の動きは、気持ちわるっ、っていうか、私に体があって五感があるってことはいよいよ女として生きていけるわけで、そしたら、あの王国騎士の方々にお声がけすることも、あっ、私なんぞがそんな尊い方々のお耳を汚すわけには・・・ぐへへ。」
ベルとリンは五感があるという言葉を聞くなり妄想の世界にはいってしまう。
「こほん、・・・ゴホンゴホン!」
フェアリーが大きく咳ばらいをし、二人を妄想の世界から引き戻す。
「いいですか、五感があるということは痛覚も存在するということです。」
「ほ、ほあーっ!つまり現実世界ではどうあがいても経験出来なかった痛覚を体験出来ると!?ということですか!?決して如何わしい意味じゃなくてですね?あ、もちろん暴力ふるう男は嫌ですよ!?」
「・・・俺の体内にあんな魔物が巣くってたんだな・・・。ま、暴力ふるう男になりたくねーってのだけは賛成だけどよ、フッ」
ゴス!ガス!
再び妄想の世界へ入っていた二人をフェアリーが小さな身体で足元に落ちていた駆け出し冒険者用の木の杖で二人の頭を力いっぱい殴った。
「いいですか!このように殴られれば痛いのです!
はぁ~!・・・はぁ~!・・・・・
ふぅ・・・ではここで問題です、なぜ戦闘不能から回復した時、デスペナルティや衰弱が発生するのでしょうか。」
「デスペナルティと衰弱がないとオフゲーみたいにリアリティがないから」
頭にコブを生やした二人が全く同じ答えをかえす。
「確かに、オンラインゲームとしてリアリティを持たせる、という意味はあるでしょう。
ですが貴方達がこの世界の住人になったからにはよりリアルな意味となります。
端的に言えば、緊急安全装置が作動する時は”死”と同等の痛みを体感する事になります。」
フェアリーの言葉に二人は唾をのんだ、ベルの喉ぼとけが大きく上下する。
「そしてデスペナルティと衰弱が意味することは、本来なら回復魔法では手に負えない程の重症から回復するには時間がかかります、それを無理やり蘇生魔法で回復させるわけですから肉体に急激な負荷がかかり、回復をしている時間はまともに動く事もままならない、というわけです。」
フェアリーはようやく言いたいことが言え、ふぅ~と長い息をついた。
「・・・ちょっと僕達、浮かれてる場合じゃないみたいだね?リンさん?」
「そうね、ベルさん、痛覚の つ の字も知らない私が魔物に攻撃されたらと思うと変な汗が出てきたわ。」
ベルとリンはいつの間にか正座をしながら冷や汗をかくことになっていた。