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異世界転生したらオタクと腐女子に分離してた LEVEL 0 プロローグ

LEVEL 0


来た!来た来た!!遂に来た!!!ようやくMMOとVRが繋がる日が!


 しかもあの エンジェルズ ガーデン の世界にVRで入れるなんて、しかもその為にリメイクして全冒険者が最初から冒険することになるなんて!


 今までのデータの引継ぎは出来ないらしいが俺はそこが気に入った。

VRであの素晴らしい世界をいちから手探りで冒険出来るんだ。


 まだ正式稼働の日程は決まってないが幸運にも俺はαテストに参加することが出来ることになった。


 αテストの段階ではまともにプレイ出来るような期待は出来ないらしいがVRであの世界を見て歩ける、それだけ出来れば十分に嬉しいと俺は思う。


そして今日は待ちに待ったαテスト開始の日だ。


 テスト開始の時間は間もなく、0:00時スタートだ。俺はVR機器とマウスを手にその瞬間を待った。どうせなら一番乗りしてやる。


3、2、1、


 日付が変わると同時に俺は最高に高揚した気分でログインボタンを押した。


 バツンッ!!



 え?バツンッって何だ?


音にびっくりして閉じてしまった目をそっとあける。


見知ったマイルームが自分が本当にそこに居るかのように眼前に広がっていた。


 俺はマイルームをVRで見渡した。


・・・え?なんで?


「「なんでマイルームに女がいるんだー!?(男がいるわけー!?)」」


 すぐ横には


いるはずのない女プレイヤーが

いるはずのない男プレイヤーが


いた


―――――――――――


ズン!…ズン!ズン!!ズン!!!


 四足歩行の獣のような巨大な魔物が僕のほうを向き一直線に突進してきた。


ズン!と一歩近づいてくるたびに地面の揺れが大きくなり、僕は脱兎のように逃げだした。


 僕はホビット族の中級冒険者で種族特有の豊富な魔力を用いた攻撃魔法を得意とするソーサラーだ。

中級といっても新米に毛が生えた程度なのだけれど。(※ ソーサラー=魔法で攻撃をする役)


――――――

 数時間前、街でたまたまレベル上げに誘われ6人でレベル上げをしに来ていた。


 レベル上げの内容は自分より強い魔物を6人で倒すという、冒険者の間で浸透しつつあるポピュラーなものだった。


 何事もなくレベル上げは終わり、魔物から得た戦利品とレベルが上がったことで僕は気分が良かった。


 テレポート(転移の魔法)で街へ戻り解散しようと話していたところ、パーティのリーダーが遠くに大型のレアモンスターを発見し、せっかくだからと挑戦してみようということになった。


作戦は格上モンスターなのは間違いないので倒せそうならじっくり戦い、無理と思えばすぐにテレポートで撤退するという作戦に決まった。


――――――


 戦局はやや押され気味ではあったがナイトとプリーストのヒール(回復魔法)で魔物の攻撃に耐えつつエンハンサーのポイズン(毒魔法)等の弱体魔法、小規模な攻撃魔法で着実に魔物の体力を奪っていた。(※ナイト=盾役 プリースト=回復役 エンハンサー=味方の強化や敵の行動を阻害する役)


僕は全く魔物の意識が自分に向いてないことを確認するとレベルが上がって使えるようになった大規模魔法のフリーズを詠唱しはじめた。


あんなに大きな魔物だ、これくらいじゃビクともしないだろう、僕はレベルが上がったことで慢心していた。


 大きな氷塊を発生させる大規模魔法フリーズが魔物の頭上に氷塊を発生させる。

それは魔物の頭へと直撃し、フリーズを受けた魔物は激昂し、現在の状況になってしまった。


 軽率な行動を後悔しながら後ろへ逃げる、地鳴りとともにどんどん魔物が迫ってきている、肩越しに魔物の巨体を見ると、魔物はその大きな爪を僕に向かって振り下ろすところだった。


もうダメだ!振り下ろされる大きな爪の動きがゆっくりとコマおくりのようにみえた。


どこかで致命傷を負う時、どうにかして助かろうと脳がフル回転し、時がが止まったかのように見えると聞いたことがあった。


だが現実は残酷にも自分が魔物の大きな爪でズタズタに引き裂かれるイメージをつくる時間を与えただけだった。


次の瞬間くるであろう衝撃に身をこわばらせた時、僕と魔物の眼前に閃光が現れた。

閃光は一瞬で破裂し僕の視界は真っ白になった。


――――――――


 「ナイトの俺から敵のタゲが自分達に移ったら俺の後ろに回れ、 かばいながらタゲを取り戻す。」


「後衛がタゲをとったら迷わず”前”へ走りナイトの後ろに回ること、絶対に”後ろ”に逃げないこと、いいわね。」

(タゲ=ターゲット)


 真っ白な視界の中、僕は戦闘前にこのパーティを仕切るナイトとプリーストに言われた言葉を、ようやく思い出した。


 ピッ 僕の頬を何かがかすめた。ヌルリと熱いモノが頬をつたう…それは僕の血だった。


ナイトのホーリー(閃光)で視界を奪われた魔物があたりかまわず前足を振りかぶっていた。口から火が出そうなほど怒り狂っている、・・・いや実際に口から炎が漏れ出している。


「ひっ!」


 エンハンサーの女性が引きつったような声をあげる。


「ファイヤブレスで前方を焼き払うつもりよ!」


 魔物の前方には僕の他に二人の魔導士がいる。今もファイアブレスが放たれると言った例のプリーストとエンハンサーだ。

体力と防御に乏しい魔導士にとっては致命傷になりそうなブレスだ。



 その顎から今にも炎が飛び出そうとした時、ホーリーを放ったナイトが雄たけびと共に盾で魔物のわき腹を強打した。


一瞬魔物の息が止まり、口内の炎が消えた。”バインド”したのだ。(※バインド=動きが一瞬止まる事)


彼は続けざまに剣と盾を打ち鳴らし魔物を”挑発”し強烈な斬撃を繰り出した。


 魔物は怒りの矛先を彼へ向け、その巨体をひるがえした。


すかさずナイトは二歩後ろへステップする、魔物は彼を正面にとらえたようと向きを変える。


「テレポートをかけるわ!全員私のそばに来なさい!」


 後衛を仕切っていたプリーストが声をあげるが僕達は半ば混乱していた。だが彼女は言い終わると即座に魔法の詠唱にはいってしまった。


「ボサっとするな!詠唱中は喋れんしテレポートの詠唱は長い!ここは俺が時間を稼ぐ!」


 ナイトに叱咤され、僕達はプリーストの側へ駆け寄る。


「お前の相手は、俺だ!」


彼の体から聖なる輝きが放たれる”インビジブルシールド”(不可視の盾)だ。


ほんの30秒だが生命を燃やすかのような聖なる輝きは絶対防御の壁をうみだし、どんな攻撃であろうと傷一つ付けることは出来ない、同時に聖なる輝きは魔物にとっては忌むべき光だ。


 魔物は巨体に浮かぶ血管をうねらせながらがむしゃらに彼を攻撃している。


 詠唱中のプリーストの元へ駆け寄る、ふと気づけば彼女の位置は魔物の側面から僅かに離れた位置、ブレスや打撃の範囲外、かつナイトを含めた全員のテレポートの範囲内、冷静かつ完璧な位置取りで詠唱をはじめていた。


 僕は彼女のテレポートの詠唱が無事終わることを祈る事しか出来なかった。


 とてつもなく長く感じる数十秒の間僕は自分が魔物に恐怖するあまり”後ろ”に逃げ、後衛全員を危険にさらしたことを後悔していた。

後衛が崩れればテレポートもヒールも使えずパーティが全滅すること、そしてその原因を作ったのが自分だという事実を理解した途端一気に罪悪感が押し寄せてきた。


そして魔物に切り裂かれそうになった恐怖がやってきて肌が泡立った。その時負った頬の傷口からはまだ血が出ていた。


 プリーストのテレポートの詠唱が終わり、同時にナイトのインビジブルシールドの効果も切れる。

テレポートの光に包まれていく中、ナイトとヒーラーの冷たい視線を感じ、僕は魔物以上に、この二人に畏怖した。


 「みんなお疲れ様でした。最後はレアモンスター倒せなかったけどギリギリの戦局だったし最後までMPも持たない感じだったから、撤退のタイミング測ってたんだよ。

だから気にしなくてもいいからね。」


「経験値は沢山稼げたし、戦利品も結構取れたし終わりよければ全て良しね。」


ナイトとプリーストは笑顔で手を振って街の奥へ消えていった。


「当たりパーティだったよな、俺こんなに経験値稼げたのはじめてだぜ。」


「俺も俺も。」


前衛アタッカーをしていたウォーリアの言葉に同じく前衛をしていたベルセルクも同意した。


「あたしは最後ちょっと怖かったけど、流石”二人の賢者”よね、あんな修羅場でも予知してたみたいに涼しい顔で乗り切っちゃうんだもん。」


「え、あの二人が噂の”二人の賢者”なの?俺はてっきり賢者っていうから魔導士コンビなのかと思ってたよ。」


エンハンサーの女の言葉にベルセルクが感嘆の声を漏らす。


「なになに?二人の賢者って、俺初耳なんだけど、詳しく聞かせてよ。」


ウォーリアは初耳だったらしく興味津々といった様子で話しに加わる。


「いいけど、疲れたから続きはカフェで話そうよ。」


キミも一緒にどう?とエンハンサーに声を掛けられたが僕はとてもそんな気分にはなれず丁重に断った。


 三人はワイワイと喋りながら城下町のカフェがある方角へ進んで行った。


「あれが二人の賢者・・・ベルとリン・・・。」


 僕も噂だけなら聞いたことがあった。


 僕はついさっき起きた出来事を振り返る。


二人の賢者は戦闘前に”後ろ”ではなく”前”に逃げろと言った。


それは正解だった、目の前の巨大な魔物に向かっていけば痛烈な一撃はもらうかもしれない、戦闘不能になるかもしれない、だが後衛全員がブレスを受けることはないし、すぐに彼が間に入って僕をかばい、挑発等を駆使してにタゲを戻してくれたことだろう。


しかし僕は後ろに逃げた、その結果大惨事を引き起こすところだった。


だけど、さっきと同じ状況になったって僕はあの巨体に向かっていくことは出来ないだろう。


想像しただけで胃に穴があきそうだ。


 ・・・・・もうやめよう、冒険者じゃなくなってもいいじゃないか、僕には彼等のような度胸もなければ実力もないんだ。


 そして彼は、名も知らぬソーサラーの卵は、孵化することなく、杖を置いた。



 「今日もハズレだったな、あ~あせっかく好きな声優さんのボイスだったのにな~。」


マイルームでベルが大げさに残念がって剣と盾を置いてベッドに大の字に倒れこむ。


ベルはヒューマン族の中では背が高く185cm以上はあるだろう、体付きも筋肉質だ。肌は褐色みをおびていて銀髪に赤い瞳、髪は戦闘で邪魔にならないように短めにしている。



「ベルも毎度毎度よくやるわね~”試験”あの中じゃ合格しそうなのなんていなかったじゃん。」


リンが半ば呆れたようにかえす。


リンもヒューマン族だ。身長は160cm程だろうか、腰まであるサラっとしたストレートの黒髪に赤の瞳、全体的にスラリとしていてモデルのような体型だが、その胸は薄かった。


「いや、万が一って事もあるだろ、女の子も可愛かったし、男子もカッコイイのいたし、あー俺もあんなスペックで生まれたかったなぁ!」


ベルがベッドのに突っ伏したまま手足をバタバタさせる。


「わたしはあの中じゃCPは考えられないわね、ボイスが良いのは認めるけど中身があんなボンクラじゃ意味ないっての!声の神様に謝って声かえしてこいって言いたかったわ。」


「何でCPの話になんだよ!っていうかCPとかそういうことしたがる感情はやっぱもう分かんねぇよ!」


リンの理不尽な怒りっぷりに、ベルは声を荒げる。


「・・・まぁそういう話は置いといて、ほれ、あのレアモンスターのドロップ狙いだったんだよ、リンもどーせ分かってるだろ?

勝てるか微妙だったけど”試験”も出来るし一石二鳥じゃん、結局他の奴らが凡人だったから勝てなかったけどよ。」


ベルが脱線してしまった話を元に戻す。


彼等がいう”試験”とは レベル上げの際、近くにレアモンスターが居れば、レベル上げが終わった後に戦いを挑み、戦闘センスを見る ことだ。


レアモンスターは強さも不明、挙動も不明、故に不測の事態が起こる、いや正確には「起こす」になるのだろうか。

彼等は戦ったことがあるはずがない魔物のことを”身体が覚えている”ので難なく勝ててしまいそうなレアモンスター相手には うっかり タゲを他の前衛や後衛にとらせてしまう そうしてパーティメンバーが 不測の事態 が起きた時どう対処するのか、また不測の事態に常に備えているのかを試す。


その試験に合格した者が一次審査を通る。


「確かにあの魔物がドロップするアクセサリーは”現環境”だとナイト的には欲しい装備ね。

今回は相手が格上過ぎたし、勝てなかったのは残念だけど仕方ないわね。」


リンは”現環境”と言った。


ベルとリンはこの世界 エンジェルズ ガーデン の現在と未来の知識を”完全に”知っており、共有しているのだ。


さっき戦った魔物の事も、強さも挙動も、ドロップアイテムでさえ。


「一次審査通るくらいの奴が後衛だったらちょっと消耗アイテム使えば勝てそうだったんだけどな。」


「その一次審査だって通ったことある人なんて数人しかいないじゃん。二次審査は一人も通らないしさ」


ベルとリンは「はぁ~」とため息をつく。


二人が言う二次審査とは、言ってしまえば好みの問題だった。


戦闘センスが優れていても、容姿、声、喋り方が気に入らなかったらパーティの固定メンバーに迎える気はないのだ。


 2人は知っている、ストーリーを進めていくことは2人では不可能なこと、旅路が長く険しいものになること、だからこそ本当に気に入った人でなければ真の仲間にはなれない。


「ところでさっきの戦闘中、誰かに 調べ られなかったか?」


ベルがリンに問う。


「そう言われてみれば普通の視線の他に 調べ られた気がするわね。

まぁ、ハッキリとは言えないけど。」


リンが答え、部屋に沈黙が落ちる。

「あ~あ、なーんでゲームの世界でさえ上手くいかないかなぁ。」


ベルがまたため息をつく。


「わたしにとっては上手くいかない現実を差し引いても嬉しいことね、女としての肉体を持てたわけだし。ベルもスペック高く生まれ変われて良かったじゃん。」


ベルとは対照的にリンは嬉しそうだ。


「高スペックに生まれ変わったことだけは良いとしてもよ、このまま何もしないでだらだらしてたら魔族の世界になっちまって死んじまうか一生魔族の過ごすことになっちまうかもしれねーって忘れたわけじゃないだろ。」


「そうならない為にもちゃんとパーティメンバー集めないとね。

せっかく別々に分かれて高スペックな身体に転生出来た知わけだし、がんばるしかなくない?」


「ま、そうするしかねぇわな・・・。」


ベルがようやくベッド突っ伏していた姿勢からベッドの端に座りなおす。


そもそも何故こんな事になっているのか。ベルもリンも”あの日”の事を思い出さずにはいられなかった。


LEVEL 0 終

世界観に統一性を出すために全て見直しをし、LEVEL 3-2 までの全文を改訂しました。


5/15 最後の戦闘中に誰かに 調べ られる感覚があったという描写を追加しました。


7/15 タイトル変更に伴い全文見直しをしました。

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