不思議の国のアレ
いろいろ伏線を散りばめながら書いてみました。是非味わって読んで頂けると幸いです。
本当にそれでいいのか、どうすればいいのか。
「やっほー!」
その女性は山の頂上に敷設されている展望台から、仕事で溜まった鬱憤を晴らすかのように力強く叫ぶ。
「やっぱ山の空気はうめぇなぁ!」
うー!、と背伸びしながら山の空気をこれでもかというほど肺に取り込む。
「仕事なんてやってられっか!あんの糞上司め!客も客だ!少しはこっちの気持ち考えろっつーの!」
展望台は平日ということで人足は疎らだが、いないわけではない。
いくつかの視線がこちらに向けられているようだが、気にしない。
「ふー。」
気の済むまで暴言を吐いた彼女は手すりに寄りかかって瞼を閉じる。
ーーーーーーーーーー
「ねえおねぃさん。」
「え?なに?」
いつの間にか眠ってしまったようだ。目を擦りながら声のした方へ顔を向ける。
そこには女性の中でも小柄な彼女の胸あたりまでしか身長のない人が立っていた。いわゆる子供だ。
「おねぃさんは満足してる?」
「は?」
子供とは言え、初対面でいきなり意味不明な言葉を投げられた彼女はさすがに眉をひそめてしまう。
「おねぃさんは楽しい?」
やはり訳がわからない。
障害のある子とか、そういうことなんだろうな、と自分に言い聞かせようとするも、大人気なくイライラしてしまう。
「さあ?そういう君はどうなの?」
取り敢えず適当に合わせればいいか、と考えて子供に質問を聞き返す。
彼はニコッ、と作り物のような笑顔をして言う。
「うん!楽しいよ!」
次の瞬間、彼の鼻は前へと大きく伸びる。
非現実的な出来事に、彼女は再度目をこするも、幻ではなさそうであった。
若干引きながらも続ける。
「そ、そう、満足してるのね。」
「うん!」
ぐん!とまだ伸びるは彼の鼻。
彼女もついには目眩を起こすが、なんとか意識を手放さないよう堪えて返す。
「そう、良かったわね。」
彼はそれまでの表情が嘘だったかのように顔から感情が消える。
「本当にそれでいいの?」
「え?それって…」
どういうこと、と言い終える前に、とうとう目眩に耐えきれなくなった彼女は意識を落としてしまう。
ーーーーー
「はっ!」
気づいたときには夜の帳が降りかけていた。
「まずい!帰りのリフトに乗れなくなる!」
駆け足でリフト乗り場へと向かう。
なんとか間に合った彼女。一息ついて深緑の景色を楽しむ。
「お疲れ様でした。」
山の麓で降りると、施設の出口へと向かう。
ふと、なにかが目の端に映り込んだ気がした。
気になって見てみると、それはポスターであった。
「こ、これって…」
しかし、そこに描かれていたのはこの公園のマスコットと思われる、デフォルメされた鼻の長いキャラクター。
彼女が頂上の展望代でみた子供そっくりのものだった。
「す、すいませんこの子ってなんですか!」
彼女はあわてて近くにいた職員に尋ねる。
「はい、これは高穂山に古くから伝わる妖怪をモチーフにしたマスコットです。」
職員さんはニコッと微笑む。
「あ…あ…」
彼女は恐怖を感じて腰を抜かせる。も、這いつくばってでも最寄りの駅へと向かう。
職員さんは先程と変わらない笑顔で彼女を見送るのであった。
それがわかれば苦労しませんよね。




