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本当に好きな人は あなた

ナンパされた真優を助けようとして、恭介がケガをしてしまったことに、責任を感じた真優。

完治するまで、恭介を助けることにしたけど……。

 翌日、学校が終わると、千紗にもついて来てもらい、品川君を迎えに学校へ行くと、ちょうど、奏多と品川君が校舎から出てきた所だった。


「奏多君、恭介君。バイバイ~!」


 女子2人が、奏多と品川君に手を振っていた。


「また、明日ね~!」


 奏多も品川君も、笑顔で手を振っている。


「奏多君……結構、モテるんだね……」


 奏多がモテるのを知って、千紗は、動揺を隠せない様子だ。


 本当に信じられない。付き合っていた頃は、モテてる感じはしなかったのにー。



「恭介、ケガしてると不便でしょ?あたし達と一緒に帰ろ~」


 今度は、別の女子達が2人を囲んだ。




 でも、品川君が、あたし達に気がついて、こっちに歩いてきた。


「石井さん。約束通り来てくれたんだ?」


「恭介ー。その子達、誰?」


 今まで、奏多達を囲んでいた女子達が、一斉にこっちに注目した。


「誰って、あっちは奏多の彼女で、こっちはこれから俺の彼女になる子だけど?」


「ちょ、彼女になる気はーー」


 あたしが言いかけた時、品川君に口を押さえられてジタバタしていると、


「奏多君の彼女にしては、普通すぎない?それに、恭介も見る目なさすぎ」




「って言うか、まだ、彼女じゃないわけでしょ?あたし達にも彼女になるチャンスがあるわけだ~」



 みんな、好き勝手言いたいほうだいだ。



「悪いけど、彼女にするのは、この子って決めてるから、お前らは有り得ないから」


 品川君は、優しくあたしの肩を抱いた。



 それを聞いて、みんな何も言えず、悔しそうにあたし達から離れた。



「何、あれ」


 呆れかえったように、千紗は溜め息をついた。



「助かった~!毎日、言い寄られてて困ってたんだ」


 品川君は、ホッと胸をなで下ろす。


「……もしかして、そのために、あたしのこと迎えに来させたの……?」



 女避けのために、あたしのことダシに使うだけなら、迎えに来なければよかった。



「違う違う!言い寄られてて困ってはいたけど、そんなことで来てもらったんじゃないことは、石井さんがわかってることだろ?」


「……」


 品川君に言われて、何も言い返せない自分がいる。


「ま……石井さん。恭介の足になってあげて。歩くの不自由そうなんだ」


 奏多が心配そうに、品川君のケガしている足の方へ目をやった。


「うん……」


 返事はしたけど、奏多の顔も殴られた所が、痛々しく残っていた。


「さ、澤谷君も大丈夫?顔、腫れてるけど……」


 少し奏多のことが気になって、声をかけた。


「石井さん。俺より、奏多の方が心配?」


 品川君に聞かれて、少しドキッとしてしまった。


「石井さんが心配しなくても、奏多は湯沢さんに任せておけば、大丈夫だと思うぜ」


 品川君はチラッと千紗を見る。



「真優は、面倒見が良いからケガしている人がいたらほっておけないんだよね~」


 千紗が、あたしの肩をポンと叩いた。


「そ、そうなの……」


 あたしは苦笑いをする。



「じゃ、あたし達は寄るところあるから。奏多君、行こう!」

 千紗は、奏多の腕に手をやった。


「あ、ああー。石井さん、心配してくれてサンキュー」


 帰り際に、奏多は軽く手を上げてお礼を言うと、千紗と肩を並べて帰って行った。



 奏多にお礼、言われちゃったー。


 胸の辺りがキューンとなりかけた時、品川君があたしの顔を覗き込んだ。


「何?もしかして石井さん。奏多に気があるの?」


「えっ、まままさか~」


 つい、声がうわずってしまう。


「怪しい~」


「何?その顔……。大体、澤谷君は千紗の彼氏だよ?そんなはずないじゃない!」



 そう言ったけど、奏多のこと気になるのは本当だ。


 やっぱり、まだ奏多のこと好きなのかな……?



「わかったから、そろそろ帰ろう」


 品川君はあたしを促すと、松葉杖をつきながら、歩き出した。



「石井さんは、何で通学?」


「電車だけど」


「俺も電車!」


「えっ、品川君も?今まで、逢ったことないね」


「俺、7時45分の電車だから」


「あたし、その次の電車だー」


 一本違うんだから、逢わないのは当然だけど、不思議なことに帰りも逢わない。





 駅まで来たものの、階段を上るのに、品川君に肩を貸してあげたりと電車に乗るまで一苦労。

おまけに、電車は混んでいて、座れそうな席はなく、出入り口近くに立っている状態だ。



「ごめんなー。俺が松葉杖に馴れれば、もう少し移動も楽にできるんだけど」


 品川君が、すまなさそうに言う。


「松葉杖に馴れる前に、足のケガ治さないとね」


「それもそうか~」


 品川君が苦笑いした時、電車がガタンと揺れて、品川君に抱きつくような状態になってしまった。



「大丈夫?」


 品川君は、あたしの顔を覗き込んだ。



 ドキン……。


 何、ドキドキしてるのよ、あたし!



「あ、あたしは大丈夫。品川君の方こそ足、大丈夫?」


 あたしは、ドキドキした胸を押さえながら、品川君に言った。


「あんな揺れくらい、平気」


 品川君は、平然な顔で応える。


「あ、あの。品川君……この体制はちょっとー」


「何?俺に抱きつくような感じだからイヤとか?」


「……」


 イヤと言うか、心臓がドキドキしすぎてヤバい。


 品川君のこと、別に何とも思ってないのに、どうしてドキドキが止まらないの?



「その顔は、そんな感じ?でも、ごめん。混んでるし、今の状態で我慢して」


「……」


 確かに、車内は混んでいて、身動きできそうもない。





 走行しているうちに、電車は駅に到着した。


「俺、次の駅だから。また、明日」


「うん。また、明日」


 あたしは電車から降りると、手を振って見送った。





 それから、毎日こんな状態が続いて2週間が過ぎた頃。



 品川君の足も良くなり、松葉杖も使わなくなって一安心と思ったのに、



「今日、学校の帰りに病院に行く予定なんだけど、石井さん一緒に付き添ってね」


 突然、品川君から電話がかかってきた。


「えっ、もう良くなったから付き添いはいらないって、言ってたよね?」


 そう、それはつい3日前のことだった。


 いつものように、学校へ迎えに行った帰り道。


 足の痛みも治まってきたし、もう迎えも付き添いも必要ないとか言っていた。


 それなのに、病院に付き添えってどういうこと!?




「じゃあ、待ってるから」


「あっ、ちょっと!応えになってないんだけど?」


 電話を切ろうとしている品川君に、問い詰めたけど、一方的に切られてしまった。



「もう、何なの……」


 あたしは、溜め息をつきながら電話を切った。



 3週間近く品川君といて、段々、品川君の性格がわかってきた。



 チャラそうに見えて、本当は一途な所。それにドSだったことが判明。


 奏多とは、正反対のタイプだ。





「石井さん」


 学校が終わってから、品川君の所へ行くと、少し足を引きずりながら、奏多と品川君が正門から出てきた。


「石井さん、もう恭介の付き添いは終わったんじゃなかったの?」


 品川君の横で、奏多が驚いた顔をしている。


「病院に行くから付き添いを頼まれてー」


 あたしは、少しムスッとしながら応えた。


「ごめんねー。やっぱり、完全に治るまで責任とってもらおうかなと思って」


「おい、恭介。いくらなんでも、石井さんが可哀想じゃないか」


 奏多が心配そうに言ったけど、


「でも、責任感じてるから、こうやってまた、来てくれたんだよね?」


 品川君に言われて、何も言えない自分がいた。


「ちょっと、石井さん」


 奏多があたしを呼ぶと、小声で言った。


『真優。恭介の奴、本当はほとんどケガ治ってるんだ。いつまでも、付き合ってあげると、つけあがるだけだぞ。悪い奴ではないんだけどなー』


『今日だけだから……って言うか、あたしがしてることに、口出ししないで!奏多は、千紗だけ心配してればいいでしょ』



「おーい、2人とも!何、こそこそ話してるんだよ?」


 不審の目で、品川君はあたし達を呼んだ。


「な、何でもない。そろそろ、行こう品川君」


 あたしは、慌てて奏多から離れた。


「あ、ああー。そうだな」


 腕時計を見ながら、品川君は返事をする。


「じゃあね、澤谷君!これから、千紗とデートでしょ?千紗、待ってるから行ってあげなよ」


 元気よく言うと、品川君と歩き出した。



「何か、怪しいなー」


 歩きながら、品川君は独り言のように呟いた。


「何が?」


 あたしは、キョトンとさせながら聞いてみた。


「奏多と石井さん。始めて会った時も、始めてじゃないような感じがしてたけど、さっきだって、親密そうに何か話してたし」



 元カレだってバレてる?



「あ、ほら。千紗から何度も話聞いていたし、写メも見たことあったから……」


 何とか誤魔化してみたら、


「あ、そっか!だからかぁ~」


 何も疑いもせず、品川君は納得した顔をさせた。



「ねぇ、品川君。それより、足のケガがほとんど治ってるって本当なの……?澤谷君が、言ってたんだけど」


「ごめん!嘘ついて。でも、病院予約してあるから、行くことにはなってるけどー」


 バツ悪そうに、品川君は言う。




 治るまでの約束なのに、どうして奏多の前で嘘ついたのだろう……。



「本当は、石井さんに話があったから、来てもらったんだ」


「……?」


 あたしは、キョトンとした顔で品川君をみた。


「3週間近く一緒にいて、俺、石井さんのこと段々、好きになってることに気がついたんだ」


「そ、そんなの……あたしが責任感じて付き添ってたから、情が移っただけじゃないのかな~」



 突然のことで、あたしは慌ててしまう。



 品川君が、あたしを好き?

全然、気づかなかった……。



「俺、真面目に言ってるんだけど?さっきだって、奏多とこそこそ話してる時、奏多に嫉妬してたし」



 品川君は恥ずかしそうに言った後、真っ直ぐな瞳であたしをみる。



 品川君の澄んだ瞳は、嘘をついているようには思えない。



「あ、あの。品川君……」


 どうしていいか分からず、目を背けてしまう。



「今まで、何回も告白されて、好きになれそうな子はいなかったー。でも、石井さんに逢ってから、こんな気持ち始めてなんだ……俺と付き合ってくれないかな?」


 品川君は、真剣な顔であたしに告白した。


「ご……ごめんなさい」



 品川君のことは嫌いじゃない。

三週間近く一緒にいて、最初の印象とは違ったし、良い人だっていうこともわかった。


でも、奏多のこともあって、今は誰とも付き合う気にはなれない。



「参ったなー。そんなすぐに断らなくても。俺のこと嫌い?」

「……」


 品川君に聞かれて、あたしは無言で首を振る。


「嫌いじゃなかったら、お試しで1ヶ月でいいから付き合う。その間に、気持ちも変わるかもしれないし」


 品川君は、神頼みするように手を合わせた。



「……」


 そんなに凄く真剣な顔で言われたら、動揺してしまう。



 しばらく考えた後、結局OKすることにした。

君は、神頼みするように手を合わせた。



「……」


 そんなに凄く真剣な顔で言われたら、動揺してしまう。



 しばらく考えた後、結局OKすることにした。



「良かった!少しでも石井さんに振り向いてもらえるように、頑張るから」


 品川君は凄く嬉しそうに、あたしを抱きしめた。



「喜びすぎ……」


「だって、お試しでも嬉しいんだから、仕方ないだろ」


「……」


 こんなに、喜んでくれるとは思わなかった。


 品川君に抱き締められながら、複雑な気持ちでいた。

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