小雪、キャラメイク。
ーーようこそ!VRMMO、剣と魔法とドラゴンの物語(オールフィクション)へ!
ーー会員登録を行う為に、まずはあなたのVRキャラクターのキャラメイクをはじめるよ!
目を閉じてボタンを押すと、強制的に睡眠させられていくかのように眠くなり、意識を失いかけたかと思えば、目の前がぱぁっと明るくなった。
今私がいるこの場所は、真っ白な何も無い空間。だけど、どこからともなく流れてくる音楽が殺風景な景観で抱く不安を期待へと導く。
今から私はキャラメイクをするみたいだけど、今の身体の状態はどうなっているのか。少し気になるので、本などではありがちな行動、手を見てみる……が、見つからない。視点の移動は出来るみたいだけど、この空間には私の身体を含め、何も無いようだ。
ーーまずはじめに、あなたのお名前を決めるよ!お名前は……っとと、ゲーム用のお名前でも現実世界でのお名前でも、どちらでもいいんだよ!さあ、教えてっ!
私が少しだけ新たに抱いた不安をよそに、天の声みたいな変に陽気な声が名前を聞いてきたと同時に、お名前は?という白い色の、周囲の色に混ざらない文字が目の前に浮かんできた。これは喋れば良いのだろうか?
「……!」
声が出ない。どうすればよいのか……
ーーあー、ごめーん!頭の中で思い浮かべればそれでOKだよ!
それを早く言いなさいあなた。
(小雪。小さい雪と書いて、小雪)
私がそう思い浮かべると、目の前の文字の下に、同じ色で“小雪”という文字が浮かび上がってきた。
ーーこのお名前で間違いないですかー?一度お名前を決めると、もう変更は出来ませんよー?よろしいですかー?
よくのびる語尾になんとも言えない感情を抱きながらも、それでOKと思い浮かべると、目の前の文字が光り輝き、そして消える。
ーー次はキャラクターの性別、容姿、体型や年齢などを決めるんだけど、現実世界でのものでよかったら、リアルスペックと思い浮かべてね!
次はゲーマーが一番時間をかける姿形の調整だけど、私は自分以外の身体を使う気は無いので、
(リアルスペックで)
と、そう思い浮かべる。すると、光の塊だった私の身体がみるみるうちに慣れ親しんだ私の身体へと変貌する。
ーーこのお身体でよろしいですかー?
(はい、これで)
ん……?話しが進まない。
ーーあ、またまたごめーん!今度はオッケーだったら、声を出して伝えてね!
「だから先に言いなさいな……これでお願いします」
このゲーム、キャラメイクの時点で苛立って辞めるって人が少なからず居そうな気がする、などと考えているうちに、辺りが目を開けていられない程輝き、光がおさまったころ目を開けると、景色が一変……芝生のような短い草が生え広がる広大な大地に、青空と雲とのバランスが丁度良い、とても気持ちの良い空、それらを目でやると、一陣の少し冷たい風が吹き抜け、程よく暖かい気候、恐らく春の中頃程度の気候に身を置く私を清々しい気持ちにした。
そして、どこからともなく、また先程の陽気な声の持ち主が言った。
ーーではでは改めまして。剣と魔法とドラゴンの物語(オールフィクション)へようこそ!小雪さん!