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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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変身

変身せよ!コミックマン!!

 炎に包まれる研究所。あちこちで保管されていた可燃物質や爆発物に引火して誘爆を起こし、既に研究所は原型を留めていないほどだ。

「任務完了だ。これより帰還する」

 既にサンプルは回収し、下っ端たちが天竜寺グループ本社に送り届けている頃。最後に残った反逆者の始末も、目撃者と一緒に灰になった。これで、グループの上位エージェントへの昇格も目前だろう。

 サソリ怪人の姿から、元の若者の姿に変身を解く。人影はないし、万が一見られたとしても消せばいい。

 炎に包まれた研究所に背を向け歩き出す。だがその時、明らかに燃えている以外の破壊音が聞こえた。

 振り向けば、そこにはターゲットを肩に担ぎ、炎をモノともせず悠々と研究所から姿を現したヒーローの姿があった――――。




「あーもしもし?ちょっと知り合いの家が燃えてるんです。消防車と救急車、後警察にも連絡お願いします。住所は…」

 変身したまま、一応119番に連絡する。うわっ、すっげえスマホ使い辛い。このヘルメット邪魔!

「き、貴様は誰だ!?」

 やっぱりいやがったなサソリ野郎。けど、今は人の姿をしてるみたいだ。こいつも変身するのか?

「誰かって…?そりゃ、お前の敵に決まってんだろ!」

 悪いとは思うけど、まずは博士を道端に寝かせて俺は頭の悪そうな男が変身したサソリ野郎に向けて殴りかかる。思ったより走ると速度出るし、目線もいつもとちょっと違って戸惑うけど、取り敢えずこのサソリ野郎をぶん殴らねーと。

「うおりゃっ!!」

 渾身の力を込めたパンチが、いきなり振り返ったサソリ野郎の背中の甲羅に当たって弾かれる。結構硬い。けどだからって効かないワケじゃないだろ。

「たぁぁぁぁぁ!!」

 パンチにキックを何度も叩き込む。が、背中じゃダメだ。なんとか正面に回り込まねーと。

「正面なら、勝てると思うか!!」

 が、いきなり振り向いてきたサソリ野郎は両腕の鋏で不意打ち気味に俺を突き飛ばす。結構痛いが、耐えられないほどじゃない。けど、下手に近づくと背中の甲羅で受け止められるんじゃ殴りがいがない。

 どうする。このままジリ貧の戦いを続けて勝機を探るか、博士を連れて逃げるか。

 だけど、博士はこいつに殺されたんだし、俺だって一度は殺されたようなモンだ。復讐のつもりはねーけど、こんな奴をのさばらせておきたくはない。せめてここで、二度と人を殺せなくなるまで叩きのめしたい。

「どうやら貴様はまだ戦い慣れていないようだな。好都合だ!生け捕りにしてくれるわ!!」

「くっ…」

 咄嗟に横に避けると、ついさっきまで立っていた場所にサソリ野郎の尻尾から飛んできた液体が飛び散り、煙を上げて溶け始めた。

「毒か!」

「そうだ!イマジネーターの身体と言えど、この毒の前では耐えられまい!」

「イマジネーター?なんだそりゃ」

「そんなことも知らんのか?天竜寺グループが開発したナノマシンに適合し、進化した人間のことだ!」

「こんな不細工なサソリ野郎が人間の進化?笑わせんな!」

 イマジネーターだかなんだか知らないけど、この力を博士は最後の希望だって言った。なら、あんな化物と一緒になんかされたくはない。

 それに、この身体は俺の漫画のヒーローそのものなんだ。負けるわけにはいかない。

「実際にやるとは思ってなかったけど、やるか」

 左腕には俺のデザインした通りのガントレットが装着されている。なら、やれるはずだ。

 ガントレットに右手で触れ、思いっきりスライドさせる。するとガントレットの一部が銃弾のように飛び出し、サソリ野郎は車にでもはねられたかのように吹き飛ぶ。

「俺のヒーローの唯一の武器、ボードブレード。騙し討ちにも出来るスグレモノってな」

 ぱっと見はただの少し大きめスノボみたいな形をしているが、俺が決めた設定ではサイズを自在に変えることが出来て、空も自由自在に飛び回れる。これに乗って空を飛ぶことも出来るし、何より内側の取っ手を持って大剣として使うこともできる。

「ぶった切ってやるぜ!」

 手元に飛んできたボードブレードを構え、サソリ野郎に斬りかかる。今度はサソリ野郎も背中でガードする訳にもいかなかったのか両腕の鋏で受け止める。だけど、こっちもこれで終わりじゃない。

 あえてボードブレードを手放して空に向けて飛ばす。するとサソリ野郎の鋏はお手上げポーズで固定される。

「おりゃあ!!」

 渾身の力を込めたキックがサソリ野郎の腹部にクリーンヒット。さらに二発目のパンチを入れ、トドメを刺すべく一度距離を取る。だが、その瞬間目に見えない何かが俺に襲いかかってきた。

「ボ、ボス!?」

「引け。もうすぐ野次馬が集まってくるぞ」

「くそっ!逃げるのかよ!!」

 どこから聞こえてくるのかも分からない声。どうやらこれがアイツのボスらしいけど、これじゃあ逃がしてしまう。せめてあのサソリ野郎だけでも。

「誰かは知らんが…いずれその命は奪わせてもらうぞ!!」

「待て!!」

 最後の台詞と共に一際強烈な一撃をくらい、俺は変身解除させられて地面に転がる。微かな意識の中で、唯一見えたのが近づいてくる救急車と消防車のサイレンだけだった。




『旅行なんて本当に久しぶり。貴方、全然休みなしだったんだから』

『当たり前だろう。漫画家に週末も年末年始もお盆も無い。これはある意味奇跡だな』

『ズバットは隔週連載も多いんだから、毎週毎週書き続けてる貴方がおかしいんじゃないの?』

 親父と、母さんの声。ならこれは、あの時の夢か。二人が死んだ時の…。

『それにしても、隼人たちは元気かしら。外国でグループの手伝いをしてるって聞いてるけど』

『知るものか。どうせ研究ばかりだろう』

『あら?会いに来てくれなくて拗ねてるの?』

『そんなことはない。ただ、そうだ。奴が天竜寺の会社に悪影響を与えていないか不安なだけだ。奴はとんでもない研究ばかりしているからな』

『素直じゃないんだから。和也はこんな風にひねくれちゃダメよ』

『何を馬鹿なことを…』

 ちょうどこの瞬間、隣を併走していたトラックが蛇行運転を始めたんだ。気づいた親父がハンドルを操作するけど、完全にトラックは車を巻き込む形で接近してくる。おまけに目の前はちょうどカーブだ。

 親父はブレーキを踏むけど、それより先にトラックがこっちにぶつかってきて、俺たちの乗った車はトラックと高速道路の壁に挟まれた。さらにその衝撃でトラックの荷台に積まれていた大量の金属片が降り注いでくる。

『和也!!』

 隣に座っていた母さんが、俺を抱き抱えるようにして庇う。そして、俺の目の前で母さんの身体を大量の金属片が貫いた。そして母さんの身体を貫通した金属片が俺の右頬を切り裂き―――。

「っ!?」

「おお、目が覚めたか?」

「…立花さん?」

「事件に巻き込まれたと聞いて来てみたんだが。大変な目にあったみたいだな」

 周りを見てみればそこは病院の病室で、立花さん以外にも警官らしき人たちが結構居る。ってことはここは警察病院か?

「そう言えば…立花さんって俺の身元引受人でしたね…」

「忘れてたのか?まあいい。動けそうか?」

「動けますよ。怪我はそれほどじゃなさそうなんで」

 ベッドから起き上がると、あの研究所での事件と戦いが不意に頭をよぎる。そうか。博士、死んじゃったんだよな…。

「話は聞けそうですか?」

「大丈夫ですよ。話くらいできます」

「あまり無理するんじゃないぞ。俺は病室の外に居るからな」

 立花さんが退出すると、警官たちの内の一人が近づいてきた。まあ本当のことは話せないし、取り敢えずうまいこと辻褄のあった話を考えないとな。




「災難だったな。それにしても、お前に漫画を読ませる知り合いが居たとはな」

「まあ、つい最近知り合ったばかりでしたけどね」

 事情聴取を終えて、健康にも問題なしと判断されて立花さんの運転する車で自宅に帰る途中のことだった。一応後ろには警察の覆面パトカーがついて来ているらしい。

 事情聴取では、書いた漫画を読ませに行ったら覆面かぶった二人の強盗が居て、博士を刺した上に火を放って逃げ出したと話した。他には犯人らしき相手の背丈や服装を聞かれたが、あまり詳しくは思い出せないといえば警官も納得していた。まあこんなもんだろ、と一人が呟いていたのが聞こえた。

「どうする?その漫画。完成してるんだろう?」

「ああ…どうしましょうか、これ」

 本当に読んで欲しかった人はもう居ない。それに何より、ついさっきまで俺はこの漫画のヒーローになっていたんだ。

 やがて俺の住んでいるアパートのすぐ近くまで来ていた。

「立花さん」

「お、なんだ?」

「立花さんは、生きてる内に何かやらなきゃいけないことってありますか?」

「なんだいきなり」

「なんででしょうね?でも、聞きたいんです」

「そうだな…」

 立花さんが路肩に車を止め、タバコに火をつける。それにしても、どうしてこんな突拍子もない質問に真剣に考えてくれているんだろう。

「取り敢えず、俺のやることなんてお前たちが書いた漫画にケチ付けて突き返すことだけだ。だけどな。ただケチつけるだけなら漫画を読まなくたってできる。けど俺がケチつければ、その分お前たちはもっと面白い漫画を書いて持ってくるんだ。こんなこと、俺たち以外に出来ることじゃないってんなら、これは多分、俺が仕事って以前にやらなきゃいけないことなんじゃないかって思うのさ」

「自分じゃなきゃ出来ないこと…」

「そうさ。自慢じゃないが、お前の漫画にケチをつけれるのは俺だけだって自負してるのさ」

 そうだ。立花さんの言うとおり、俺には俺にしか出来ないことがあるはずだ。きっとそれが、俺の望んでいたことじゃなくても。

「変なこと聞いてすいません。後、来週には新作持ってきますから待っててください」

「あ、おい!」

 立花さんの車を降り、俺は一人で歩き出す。僅かに意識を集中させれば立花さんの車の後ろに止まっていた覆面パトカーから一人慌てて降りて追いかけてくるのが分かる。これじゃあまるでいきなり武術の達人にでもなった気分だ。

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