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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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開戦

「それでは、二日前に発生したテロ事件は、日本政府と契約を交わそうとしている『リアナ&エイザー社』による自作自演であると?」

「正確に言うならば、『リアナ&エイザー社』は元々国際テログループ『ダンローズ』と協力関係にあったと言うことです。我々がCIAとICPO、そしてアメリカにて『リアナ&エイザー社』と一時期契約を交わすことになっていた天龍寺グループのそれぞれからの情報提供によりその疑いを知り捜査を初めた所、逮捕者たちの証言や武器の流通ルートにおいてその二つが繋がっている証拠を見つけました。お配りした資料をご覧ください」

 天龍寺グループの本社ビル広報室にて、各局のテレビや記者たちを前に三条警部補たちの上司とみられる偉い人たちが説明していく。

「では、この事件で日本政府が行おうとしている警察と自衛隊の装備拡充は『R&E社』が営利目的で起こしたと言うことで間違いないでしょうか?」

「ええ。既にアメリカにて、CIAとFBIによる合同チームが『R&E社』に強制捜査に入っていますが、今回の事件で契約に名乗りを上げた商社すべてに同様の疑いがかかっており、この情報公開は、日本政府の臨時国会での間違った決議を食い止めるべくアメリカ政府からの要請で行っている物であり…」

 お偉いさんの会見を呆気に取られたように日本中が見つめる。全てのテレビ局がこの時ばかりは特別番組を編成して会見の様子を流しており、ラジオや街宣でも事実を日本全体に知らしめるべくひっきりなしにニュースは流れていた。

 そんな中、会見場に居た一人の記者がその場で小さく俯いた。とある大手新聞社の中堅記者だった彼は周囲の喧騒に紛れるようにして懐に仕掛けた爆弾のスイッチを押す。このまま体内に仕掛けられた爆弾が爆発すれば、日本中にテロの脅威と惨劇を知らしめられる。そうすればいくらでも『JACK』が付け入る隙が生まれるという判断での計画だった。

 しかし、爆弾は不発だった。困惑した表情を浮かべて何度もスイッチを押す記者に、周囲も次第に違和感を覚えて視線を向ける。

「失礼。一名、不審者が紛れ込んでいたようだ」

 すぐさま警備員が会見場に突入し、記者は周囲を殴り倒しながら逃走する。その光景は日本中に流されていた。

 下に逃げると見せかけて屋上に駆け込み、何とか警備員を撒いてほっと一安心した所でもう一度スイッチを押す。ここでも効果は同じと信じてやってみたが、やはり爆弾は起動しない。

「なぜだ…!!なぜ起爆しない!?」

「このビルには特定の電波信号を妨害する電波が流してある。やっぱり来たか。『JACK』の工作員」

「なっ!?」

 すぐ真後ろから声が聞こえる。風が吹きすさぶ屋上のヘリポートのど真ん中、そこに居たのは学生服を着た青年だった。

「お、お前は…!!」

 その顔を見た記者は思わず後ずさる。任務に就く際、連絡員から見せられた最重要危険人物。彼との遭遇は可能な限り避け、遭遇した場合は何とかして敵対していることを悟られるな、と厳命された男。『JACK』が唯一制御下に置くことが出来ないイマジネーター。葦原和也、コードネーム『コミックマン』。

「俺のこと知ってるんなら、話は早いな。神妙にお縄に着け!」

「くっ!!」

 咄嗟に銃を抜いて発砲する。しかし和也はそれを軽々と避けて見せる。イマジネーターの変身を含める固有能力を無効化する電波が流れているとはいえ、強化された身体能力は消しようがない。故に、中途半端な改造しか施されていない記者には太刀打ちできる相手ではない。

「かくなる上は…!!」

 彼は苦虫を噛み潰したような顔をしながら銃を自分の頭に突きつける。情報を言わされるくらいなら自殺するのが掟だったが、引き金を引くよりも前にレーザー光線が正確に彼の持つ銃の銃口を溶かした。

「ナイス援護」

「ありがと。じゃあ、もう逃げ場はないわよ。大人しくしなさい!」

 足裏ジェットを吹かしてビルの影に隠れていたヒカリまでもが姿を現す。手に持ったレーザーガンは彼から抵抗する手段を奪い、やがて屋上に上がって来た警備員たちによって取り押さえられてしまう。

「どう?気配する?」

「いいや。もうビルからは気配はしないな。だが…」

「うん。近づいて来てる。しかも、結構な数」

 お互いの強化した視力で確認する。見える限りでは約百もの黒服暴走族たち。気配こそ普通の人間だが、あの狂化ガスで強化洗脳を受けているらしく普通の状態ではない。

 そしてその後ろには、ここ一か月辺りに彼らが倒して来たイマジネーターの再生体。黒い機械仕掛けの忍者に、ルリを襲った虫女や暴走族たちの先駆けが変身した人型の蛇。そして校外学習で遭遇した、ホラーマニアとミノタウロスにイカ。最後に高速道路で戦ったホースイマジネーターと、『麻久利村』で戦ったガスを吐くスカンクのイマジネーター。

 最後にそれらすべての後ろに居た全く新しいイマジネーターが居た。まだ具体的な変身はしていないが、人間の姿でありながらもかなりの力を持っていると推測できる。

「やれるか?」

「出来るよ。私達なら」

 既に住民たちの避難は終わっている。全員が天龍寺グループ本社ビルに避難しているから、これからの戦いが見られる心配もないし、巻き込む恐れもない。もしも万が一二人が負ければどうなるか分からないけども、その心配はないと胸を張って言える。

「行こう!この場所を、守り抜くぞ!」

「うん!」

 和也の号令と共にヒカリがレーザーガンの引き金を引く。そしてそれと同時に和也は屋上から飛び降りつつ原稿用紙を広げた。

 妨害電波から離れたことでナノマシンが正常に作動し、焔に包まれた身体がコミックマンへと姿を変えた。




「はああああああああっ!!」

 ボードブレードに飛び乗り、まず最初に襲い掛かって来る黒服暴走族たちに向けて突撃して行く。まず最初にヒカリが撃った拡散パラライズレーザーが第一陣を崩したが、それでも全体の三分の一も気絶させられていない。

 だったら俺の出番だ。ボードブレードを飛び下りてそのまま黒服暴走族たちのど真ん中に着地し、殺さないように加減したパンチとキックでどんどん気絶させていく。しかし敵は普通じゃなく、周囲の味方への巻き添えも無視して一斉に銃火器をぶっ放して来た。

「ちっ!!」

 舌打ちしつつボードブレードを高速でぶん回し、その勢いの風圧で周囲の敵や銃弾を吹き飛ばす。しかし敵はその風圧が弱まった瞬間を狙って数十個もの手りゅう弾を一度に投げつけて来た。おまけに殺したくないというこっちの思惑を知ってか自爆覚悟で数人の暴走族たちも爆弾片手に飛びかかってきている。

「風だけじゃ足りないみたいだな…!!」

 全身が燃え上がるファイヤーコミックマンへと強化変身。同時に発生した大量の爆発が発生した瞬間に膨大な熱エネルギーを吸収してみせた。爆発のエネルギーそのものを吸収したおかげで爆風とそれに伴う破片の炸裂が収まり、無傷の暴走族たちをまとめて蹴り飛ばした。

「炎も溜まった!」

 そしてフルパワーになったファイヤーコミックマンの全エネルギーをボードブレードに乗せ、やっとの思いで切り開いた再生怪人軍団に向けてぶちかます。

 まるで炎の津波のような爆風が再生怪人軍団に向かって行き、その余波で後ろから俺を狙っていた黒服暴走族たちも吹き飛ばされていった。

「これで燃え尽きろ!!」

 フルパワーの新必殺技、これで何とかあの厄介な再生怪人軍団を片付けられないかと期待したが、その期待は前に出て来た新型の放つエネルギー弾が俺の必殺技を相殺して木端微塵に打ち砕いてしまった。

「お前、何のイマジネーターだよ!!」

 奴は俺の質問に答えるように怪人としての姿に変身する。背中に甲羅と三本の砲台を背負い、鋭利な鍵爪を持った緑色の太い腕。

「亀…さながらタートルイマジネーターって所か!!」

 タートルイマジネーターは俺の命名にも何の反応も示さず、ただただ背中の砲台からエネルギー弾を連射して襲い掛かって来るのだった。



「たああああああああっ!!」

 パラライズガトリングの一斉射撃で次々と暴走族の人たちが倒れていく。やがて排熱が追い付かなくなって暫く使い物にはならなくなるけど、そうなれば今度はフライトスーツのパワーで蹴っ飛ばしていくだけ。

 これであと何人だろう、と周囲を見渡したところで違和感に気づいた。

「うっ!?」

 何かしらのガスが撒かれている。それに気づいて咄嗟に口と鼻を抑えて足裏ジェットを吹かすけど、その直後に見えない所からあの忍者に襲われて私は地面に叩き付けられてしまった。

「きゃあっ!?」

 機械仕掛けの眼鏡では見えない特殊な電波を発生させている忍者。ソイツが私の身体を上から抑えつけて、その上であのスカンクが吐いているガスを吸わせようとして来ている。このガスが一体何の効果があるのかは知らないけど、吸う訳にはいかない。その一心で私は手探りでガン=カタモードに切り替えたレーザーガンをのしかかってきている方向に向けて連射する。

 数発ほど当たったらしく重しが取れ、そのまま私は眼鏡を外して普通の眼鏡に付け替えた。

「こうすれば見えるっ!!」

 レーザーガンを結合させ、最大威力のレーザーが動きが読まれると思っていなかったらしい忍者を蒸発させる。そしてそのまま一気に上昇し、また眼鏡を付け替えてガスを吐いているスカンクもレーザーで射抜いて爆発させた。

「これで二体!!それでっ!!」

 足裏ジェットを巧みに操り後ろから飛んできたナイフを避け、眼鏡の反応に従ってホラーマニアの居るビルの建物を撃つ。

 建物の四階の一角が吹き飛び、直撃こそ避けられたようだけどホラーマニアはビルから落ちていった。

「これで三体…!!」

 次は誰だ。その想いで立ちふさがる残りの五体の再生怪人たちにレーザーガンの照準を向けたのだった。

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