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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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殺人鬼大集合!

このお話の元ネタは、まあホラー映画もありますが、牙狼の魔戒ノ花の映画と言う回です。あれは神回でしたね。

「グオオオオオオオオオ!!」

「ふっ!!」

 ジェイソンモドキの鉈を片手で受け止める。不思議そうに首を傾げるジェイソンモドキに何だか癒されていると、背後から斬りかかって来たレザーフェイスモドキのチェーンソーの刃がコミックマンの背中に当たる。だが、そんなもんで傷つくほどヒーローは弱くない。

「ぜりゃあ!!」

 レザーフェイスモドキに肘鉄を叩き込む。なんでだろうな。こいつは可愛くない。

 肘鉄くらって後ろの壁に叩き付けられたレザーフェイスモドキを無視し、ジェイソンモドキに強烈なキックをお見舞いする。しかし、見かけだけは流石にジェイソン。二・三歩後ろに後ずさるだけであんまり効いてる様子はない。やっぱり迫撃砲くらい持ってこないとダメか。

「クイズだ。この世で最もドラキュラに近い男の名は?」

「ちっ…映画と質問変えやがって…ベラ・ルゴシだ!!つーかこれ好みの話だろ!!」

「ぐうっ…」

 スクリームの殺人鬼に姿を変えたイマジネーターがナイフ片手に襲い掛かって来るのを察知し、カウンターの廻し蹴りを決める。綺麗に決まったと自分でも思えたが、まさかこの程度の一撃すら回避できないイマジネーターとは。マジで肉弾戦が苦手なんだな。

「ベラ・ルゴシ…なぜエド・ウッドみたいな最底辺の映画に…!!」

「知るか」

 二度目のキックがまたしても決まり、ホラーマニアは派手な音を立てて壁に叩き付けられ、そのまま壁をぶち破って隣の部屋に転がり込む。様子を見る限りじゃ奴は動けそうにないので、このままトドメを刺そうとボードブレードを構えて部屋に突撃するが、それは敵の罠だった。

 ガチャンと足枷が取り付けられ、そのまま部屋の中央に引きずり込まれる。

「こいつは…個人的には第一作までのアレか…」

「その点は否定しかねるね。続編で必要以上にグロに走るのは洋画ホラーの定番じゃないか」

 足元に転がる糸鋸、足枷で繋がれたどこからか用意されたヤケにリアルな男性の死体…いや、こいつは本物の死体か。

 見ればホラーマニアはスクリームの仮面を付けたまま手術台に固定されたヒカリの顔の真上に電動丸鋸を設置し、少しづつだが高さを下げ始めた。

「んっ…!!」

 目の前で電動丸鋸が回転を始めている恐怖で息を呑むヒカリ。フライトスーツが機能していれば脱出できるんだろうけど、見た感じ作動出来ていないらしい。ベルトのスイッチを押すか、スーツが直接的なダメージを負うかしないと動かないから、あのままじゃ逃げられない。

「ハロー。ミスター・コミックマン。私とゲームをしよう」

「知ってるよ。ルールも、攻略法も!!」

 俺はボードブレードで足首を斬り落として足枷を外し、そして外れた途端にもう一度切断面をくっつける。斬り落としてから数秒だから、ナノマシンの再生力もあってすぐに治る。

「風情のない…!!」

「生憎、こいつはホラー映画じゃなくてヒーロー漫画だからな!!」

 飛び蹴りを放ち、ホラーマニアは直撃を避けてヒカリの乗った手術台を引っ張りながら別の部屋に逃げていく。

「待て!!」

 部屋に飛び込むと、今までの部屋と違いそこは見慣れた日本家屋の部屋だった。

「いやーな予感…」

 嫌な予感ほど的中するとはよく言ったものだ。べちゃり、という不吉な音に振り返ると、そこにはさっきまで無かったはずのテレビがポツンと置かれていた。そして、当然そこには井戸が映り、髪の長い女がゆっくりとこちらに向かって来ていた。

「まさか、コイツもお前の変装か?」

「違う。フレディやジェイソンと同じ存在だよ。ただし、日本のホラーは彼らと違って弱点が無いんだ。その点が少し不満かな」

「…こーして目の前に居られると同感だよ」

 姿を現した貞子モドキを前に、俺は先手必勝とボードブレードを突き出す。しかし、その手を誰かに掴まれて止められる。

「マジかよ…」

 そこに居たのは、やはりと言うか何と言うか。白塗りブリーフの少年、俊雄モドキが俺の腕を掴んでいた。更に後ろから気配を感じて振り返ると、そこには母親の伽椰子モドキがカクカクした動きで潰れた喉をかきむしりながら近づいて来ていた。

「チッ…悪霊退散!!合体されては敵わねえからな!!」

 襲い掛かって来た伽椰子モドキに振り払った俊雄モドキを投げつけ、そして気づくと真後ろまで迫って来ていた貞子モドキに振り向かないままボードブレードを突き刺す。

「呪いの目は見なきゃ済む話…とはいかねえのが日本ホラーの怖いとこなんだよなぁ」

 気分が悪くなるのを自覚しつつ、後ろ蹴りで貞子モドキをテレビの中に強制送還し、ボードブレードを投げて今や懐かしい我が青春、VHSのビデオカセットをビデオデッキごと粉砕する。

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”」

 そんなことしていて気がつけば、真後ろに復活した伽椰子モドキと俊雄モドキが。

「そーいや。こっちは逃げる手段があったな」

「あ”?」

 首を傾げる伽椰子モドキにキックを叩き込み、叩き付けられた伽椰子モドキで部屋を壁ごと粉砕して脱出する。

「さて、次はどの映画だ?ヨーロッパはあんまり強いホラーのキャラは居ないし、こいつらで終いか?」

 粉砕された壁の向こうに足を踏み入れれば、そこは最初に入った手術室だった。拘束されたヒカリも、スクリームの仮面を付けたホラーマニアも、ジェイソンモドキとレザーフェイスモドキも居る。

「所詮は偽物だったな。全くと言っていいほど怖くないぜ」

「流石はヒーロー。肝が据わっている…だが、それは貴方が観客では無いからだ。本当の観客ならば、こうして震え上がっている!!」

 ホラーマニアは仮面で表情を隠したまま、パチンと指を鳴らす。すると手術室の扉が開き、その向こうでは大勢の客たちが拘束されていた。中には俺達と同じ天川学園の制服を着た学生もいる。全員身動きが取れないまま猿ぐつわを噛まされ、くぐもった悲鳴だけがこの場に轟く。

「ここのお化け屋敷の演出は、お客さんを捕まえて出してたってのか…!!」

「そう。彼らは客…私が描く最高のホラー映画を前に震え上がり、最高のリアクションを取ってくれる理想の観客だ!!お前とは違う!!」

 レザーフェイスモドキがチェーンソーを起動し、ジェイソンモドキが鉈を振るう。俺は二体の攻撃をボードブレードで防ぐも、さっきまでとは桁外れのパワーに弾き飛ばされてしまう。

「なんだ、このパワー…!?」

「彼らは私の想像力が生んだしもべ…そして、ホラー映画の怪物の力の源は観客の悲鳴に他ならない!だからこそ、決戦の場をここに選んだんだよ」

「全員、フレディのパクリか…」

 背中から床に叩き付けられた俺の頭目がけてジェイソンモドキが鉈を振り下ろす。何とかボードブレードで防ぐものの、あまりのパワーに圧し負けてしまいそうになる。

「卑怯よ…!!自分に有利な状況になるまで逃げるなんて…!!」

「卑怯?そんな物、ホラー映画のお約束だ。この世のものとは思えぬ怪物たちが集まり、人々の希望であるヒーローが敗れ去る!これぞまさに、私が完成させたかった最高のホラーだ!!」

「最高のホラー?ただの闇鍋じゃねえか!!」

「何?」

 俺の言葉にホラーマニアの肩が震える。ジェイソンモドキの鉈も力が微かに抜け、俺はその隙にジェイソンモドキを巴投げで吹き飛ばす。

「なっ!?」

「お前のホラーにはオリジナリティが無いんだよ!あっちこっちからかき集めて来た怪物並べてご満悦かもしれねえけどな、ホラー映画に観客が本当に求めてる恐怖は、見たことも無い予測不可能な怪奇だ!!ごった煮の闇鍋しか作れねえお前なんざ、エド・ウッドの足元にも及ばないんだよ!!」

 レザーフェイスモドキのチェーンソーを受け止め、更に返す刃で手首を叩き斬る。そして落としたチェーンソーをキャッチし、逆に敵の獲物でたたっ斬ってやる。

「なあにっ…!?くっ!!」

「きゃっ!?」

「ヒカリ!!」

 激高したホラーマニアはナイフ片手に手術台のヒカリを乱暴に引き寄せ、ナイフを顔に突きつける。

「ふざけるな…私のホラーは完璧だ!完璧なんだ!!」

 そう言ってヒカリの顔にナイフを振り下ろすホラーマニア。だが、この一撃がヒカリのフライトスーツの危機察知機能を作動させた。

「やあっ!!」

「なっ…」

 フライトスーツのパワーアシストの効果でパワーアップしたヒカリは力づくで拘束具を破壊して強烈なビンタをホラーマニアに入れる。

「女の子の顔に…勝手に触るな!!」

「流石だぜ。ヒカリ…!!」

 脱出に成功したヒカリはそのまま隣の部屋で拘束されていた客たちを救出していく。

「大丈夫ですか?いま、助けます!」

 次々と解放されていく観客たち。目に見えて二体の怪物の動きが弱まって来る。俺は一撃で叩きのめされたホラーマニアはとりあえず無視し、チェーンソーを肩に担いで二体の怪物モドキたちを迎え撃つ。

「お前ら、いいのか?俺が今持ってるのは、洋画最強の武器チェーンソーだぜ?」

 新しく武器を出現させたレザーフェイスモドキをぶった切り、更に鉈で斬りかかって来たジェイソンモドキにはある物をプレゼントする。

「喰らいな、流水だ!!こっちも2003年の映画で出来た弱点だろ!?」

「オオォ…!!」

 溺れたトラウマが再発する、という最新の弱点を突かれて動きが弱まったジェイソンモドキの首筋にチェーンソーを叩き込む。そしてフルパワーで引き抜くと、ジェイソンモドキはフレディモドキ同様消えていった。

「お次はお前だ!!」

 無理して壊れたチェーンソーを捨て、新しいチェーンソーを持ったレザーフェイスモドキに向けてボードブレードを投げつける。腹部を貫通されたレザーフェイスモドキが動きを止め、トドメのパンチが顔面に当たると共に消滅する。

「あ、ああ…!!私の、最高のホラーが…!!」

「悪いけど、全然面白くねえ。今日出て来たホラー映画、全部百回見直して出直してこいや!!」

 トドメはキックでスクリームの仮面を粉々に粉砕した。爆発してナノマシンが消滅したホラーマニアは、青白い顔をした青年の姿に戻って気絶した。



「何?ホーンデットハウスが攻略されただと!?」

『その様です。いかがいたしましょうか?』

「ええい。何としてでも次のアトラクションで奴らを消せ!!失敗は許さんぞ!!」

 プロフェッサーDは怒りに任せて通信を切る。まさか、あそこを任せていた連中がここまで無能だったとは。このままでは最悪、『JACK』の計画がバレると言う結果に終わる可能性も出て来てしまった。

「次はどこに行く気だ…!!」

 『JACK』のため、出世のため、そして何より保身のため、プロフェッサーDは海映グランドパークの地図を睨みつけるのだった。

感想待ってます。

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