テスト終了、そして…!!
まあ、テストの内容に関してはキング・クリムゾンですよ。そりゃあね。
と言う訳で短編その二。まず偶数回で事件を起こして、奇数回で解決兼ヒーローアクションの流れが固まって来ました。今後はこの流れになります。
「終わったぁ…!!」
中間テストを全て終え、中等部の校舎を出たルリは心の底から歓喜の叫び声を上げた。
「ルリ、女の子が大口開けて叫ぶモノじゃありません」
「まー気持ちは分かるけどねー」
同じクラスの女子たちが、いつまでたっても男子っぽい言動のルリに呆れつつも同意する。こんなんで、一年上のイケメンと付き合っているリア充と言うのだから納得がいかないが、まあ幼馴染の特権だと自分を納得させていた。
「で、どーするの?犬飼先輩が向けに来てくれちゃうのを待ったり?」
「ん?今日はバドミントン部があるからそっちに行くよ」
「あー部活は夏で強制終了だもんねー。どーせ皆受験なんてしないんだから最後までやらせてくれてもいいのに」
「まあでも、ここが普通じゃないだけだしね。じゃ、そーいうことで!」
友人二人にそれだけ言い残して、ルリは体育館に駆け込む。建て直しがまだ決まらず、老朽化が始まってしまっている女子更衣室に入ると同時に服を脱ぎ捨て、体操着に着替えて練習場に向かう。
「イエーイ!テスト終わったーっ!!皆、思いっきり…って、あれ?」
既に練習が始まっていると思って駆けつけるも、なぜか既に集まっている女子バドミントン部員たちは全員で顔をしかめて黙り込んでいた。
「あ、ルリ先輩…」
「どったの?もしかして、テストで大失敗しちゃった?」
「う、ううん。そう言う訳じゃないんですけど…その、女子更衣室、変じゃなかったですか?」
「変?別に、いつも通りのボロい更衣室じゃない。なんかあったの?」
「あの…何人か、視線を感じて…」
「え!?」
後輩の言葉に、慌ててルリは更衣室に引き返す。そして手当たり次第に空いてるロッカーや、備品の入った箱をひっくり返す。しかし、何もない。曇りガラスで閉じられた窓が疑わしいが、そっちは完全に鍵がかかっていて開いている形跡はない。外側に何か張り紙が張ってある程度だ。試しに何度か力を込めてみるも、窓は開く気配すらなかった。
「何も無いじゃん」
「だから気のせいじゃないのって、皆で言ってたんです。だけど、ヨーコも美咲も確かに視線を感じたって…」
「ほんとだって!!」
「すっごい寒気、したもん!!」
「ええ?でもなぁ。透明人間が居る訳じゃないんだし…一応、注意の張り紙くらいは貼っとく?」
以前の試合で使った使用済みの得点表を裏返し、ルリは不審者注意とだけ書いて窓ガラスに貼る。
「これでよし。じゃ、始めよ?大会までのカウントダウンは始まってるんだからね!!」
はーい、とまばらな返事を返す部員たちを引き連れ、ルリはバドミントンの練習を始めた。
「テストどーだった?」
「バッチリ…とは言えないかな。やっぱり古典が難しかったし」
「俺はまあ、それなりにはな。それよりもいいのか?今頃ルリがお前のこと待ってるんじゃないのか?」
「バーカ。ミントン部の練習でそれどころじゃないだろ。練習が終わるまではここで暇つぶし」
生徒相談室で次回作の漫画のネームを考えている俺と、答案用紙と教科書を並べて答え合わせに勤しんでいるヒカリ。そんな真面目な俺たちをよそに、誠は俺がヒカリの為に持ち込んだ漫画を片手にあれこれ話しかけて来ていた。
それにしても、ルリは今回も彼氏よりも部活を取ったのか。中等部に進学して以来、ルリは基本的に誠よりも部活を優先してきてはいるが、誠としてもそれはそれで納得しているのか平然とこうして俺達のアジトで漫画を読みふける余裕がある。
まあ、幼馴染だからいつでも会える訳だし、部活の時間まで一緒に居れば下手すりゃお互いの顔はうんざりするようになってしまうのかもしれない。
「そいで?お二人の仲は結局どこまで…」
「ルリに聞けって言われてるのか?」
「おう!」
「だったら絶対に言わねえ。ったく。自分は嫌がってたくせによ…」
「女心はそう言う物。まあでも、確かに聞かれたくはないよね…」
少し頬を染めながら呟くヒカリ。全く、女心って奴はこれだから面倒くさいんだよなぁ。ってそうだ。次回作はそう言う面倒くさい女に振り回されてるヒーローを書いたギャグって手もあるな。そう言うネタならむしろ、ヒーローに拘ることもないかもしれないし。
そう思うと一気にネームを描くペンが走りだす。その時、相談室の扉をノックする音が聞こえて来た。
「どーぞ」
「誠が言うのかよ…」
「失礼するねー」
なぜか我が物顔の誠にツッコミを入れつつ顔を上げて客を見ると、そこには剣道着を着た水城さんが。
「あ、水城さん。どうかしたの?」
「うん。その、部活をやってると変な視線を感じるのよ。誰かに見られてるような…」
「見られてる…!?」
まさか、『JACK』が今も水城さんを狙っているのでは。そう思うと一気に俺とヒカリの顔が引き締まるも、誠はそれに気づかず煎餅をかじりながら首を傾げる。
「見られてる?覗きか?」
「誠…ここの所属じゃないんだから下がってろ。むしろ、暫く外に居ろ」
「ええー?なんでだよー!」
「い、いや、そう深刻な話じゃないんだよ?同じこと言ってる部員も多いし、男子は感じないって言ってるから、もしかしたら犬飼君が言う通り覗きかもしれないし…」
それ見たことか、とどや顔でこっちを見てくる誠。それにイラッとはしたが、言い分は確かに正しいことに気づく。
「和也、取りあえず行って調べてみよう。もしも覗きならそれでいいんだし」
「そうだな。ちと深刻に考えすぎか」
「あのー?覗きって、そんな大したことない案件でしたっけ?」
「二人にしてみれば、ね…」
話についていけていない誠にクスッと笑いながら、水城さんは俺たちを真新しい武道場に向かう。男女両方ともの剣道部、そして柔道部が入って練習していても収まる、我が天川学園の新しい目玉だ。
「また来たの?って、今回も仕方ないかぁ」
「済みませんね。で、被害者は?」
顧問の先生の苦笑いを背に、俺たちは被害者の女子部員たちに話を聞く。女子のレベルがかなり高いことでも知られている天川。お蔭で女子剣道部と柔道部もそれなりに美少女率が高い。まあ、高いと言っても二十人に一人くらいの割合だが、それでも女子部員が合わせて五十人以上居るのでそれなりに居ると言ってもいいだろう。
「んで?視線の感じる方向ってのは…」
「あっち。上の方の曇りガラスからだね」
「あそこか…」
冷暖房完備で基本は密閉されているこの武道場。窓など通風孔だけで十分な気もするが、それでも電灯や空調のメンテナンス用の足場の横には曇りガラスの窓があって、そこを開ければ外の空気が入ってくるようになっている。わざわざ曇りガラスにしたのは、スパイ防止の為とかだろうか。
まあ冗談はともかく、梯子に昇って足場に昇って窓を確認していく。しかし、窓には何の仕掛けも無い。精々外側に虫みたいなものが止まっている程度だ。
「何もないぞー!!」
「無いー!?ちょうど真横の窓の辺りからだよー!!もうちょっと探してー!!」
「もうちょっとって…しゃーない。開けてみるか」
埃を被った鍵を外して窓を開ける。すると、窓の外に付いていた虫が驚いたように逃げ出した。
「あ、気配消えた」
「ほんとだー」
するとちょうど下でそんな会話が聞こえて来た。そんな都合のいいタイミングで気配が消えた?なんかおかしいな。
そう思った瞬間、俺の目の前を一匹の虫が飛んでいるのが見えた。
「まさか…?」
ナノマシンで強化された反射神経で窓ガラスの外に止まっていた虫を掴む。普通の虫ならそれだけで粉々になってしまうが、この虫だけは違った。
「これは…!?」
虫の正体は、何と小型のカメラだった。ドローンの一種かもしれないが、こんな小型が存在するとは聞いたことが無いし、何よりこうしてみると小さいが気配を感じ取れる。
「どう?何かあったー!?」
「いや!虫が一匹いただけだ!!」
「そっかー!けどまあ、気配は消えたからもういいよー!!次があったらまた頼むねー!!」
少し釈然としない顔の水城さんに言われ、俺たちは武道場を後にする。
「まあ、気配っつったって結局は個人の感覚だしなぁ。にしても、あんなにも大勢に感じ取れるもんなんかな?」
「そうだな。だけど、水城さんの感覚は馬鹿には出来ないな。ほれ」
「これって…」
誠とヒカリにさっき捕まえた虫を見せる。
「ドローン?でもやけにちっちぇえな」
「こんなドローンは珍しいが、今はそれどころじゃないな。これから手分けして、女子の部活の更衣室や体育館の近く…曇りガラスの外側を探そう。多分、これと同じものがあるはずだ」
スマホで写真を撮り、ヒカリと誠のスマホに転送する。それを受け取った二人が頷く。
「俺はまずこいつを滝先生に持っていく。こいつは面倒な事件になりそうだぜ」
「ああ。ドローンの捜索は俺に任せろ!!ってか、もしかしたら中等部もか!?」
「あるだろうな。なら、誠は中等部。ヒカリは高等部を探してくれ」
「分かった。でも、なんで外側なんだろう…?」
中等部に走る誠と、首を傾げるヒカリ。二人を見送りつつ、俺は職員室に向かう傍らスマホで爺さんに連絡を取る。
『なんじゃ、小僧。仕事中じゃぞ』
「爺さん、多分『JACK』のイマジネーターだ。学校で女子を覗いてるイマジネーターが居る。何人かこっちに解析班を送ってくれ」
『何ぃ!?覗きじゃと!?まさか、ヒカリがかぁ!?』
スマホ越しでも鼓膜が破れそうなくらいに大声で叫ぶ爺さん。相変わらずの孫娘想いだが、これじゃあ肝心の本人にウザがられる訳だよ。
「ちげーよ。学校の部活をやってる女子たちだ。超小型のドローンに付けられたカメラと、曇りガラス越しに中を見る機能が付いてる奴をばら撒いてる。今回収中だけども、それを使って逆探知くらいはできねーかなと思ってさ」
『う、うむ。そう言うことか。ま、頑張れよ』
「は?って、切りやがった…あのジジイ…」
ヒカリに被害が及んでいないと分かった途端にこれかよ。全く、こういう態度がヒカリの神経を逆なでしてるって、何で気が付かないかなぁ。
爺さんが残りの人生をかけても絶対に分かりっこないことを真剣に考えつつ、俺は職員室に急ぐのだった。
感想待ってます。




