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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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中間テスト

今回から短編メイン。取りあえず、今回と次回で完結する二話完結方式で行きます。平成ライダーみたいですね。最近は二話完結どころかほぼ全編フルで進むスーパー戦隊方式になって来ましたが。

「あー…」

 生徒相談室のソファーに顔を埋めて唸り続ける和也。机の上には真っ白な原稿用紙が放置されていて、私はそんなヒーローの背中をちらちらと見ながらおやつの四色ピザの空箱を積み上げていた。

「もー。そんなにショックだったの?」

「当たり前だろ…?折角の本誌読み切りで、アンケート六位だぜ?親父は最初の読み切りで一位取ったってのにさぁ」

「でも、立花さんが新人で六位は凄いって言ってたじゃない。それに、和也のお父さんが最初に読み切り載った時代とズバットの連載陣のレベルが違い過ぎだった、とか言ってたよ」

「そんなん社交辞令に決まってるだろ…あーあ。何が悪かったんかなぁ…」

 ふて腐れてソファーの上でブツブツ文句を言う和也。初めてのズバット本誌での読み切り掲載、お父さんのネームバリューで判断されたく無いから、と言う理由で経歴を隠し、『神シロウ』のペンネームで乗せてもらった読み切り漫画は、現在のズバットを支える看板漫画たちの牙城を崩せずベストスリーどころか、ベストファイブすらも逃してしまった。まあ本誌に載せてもらえるだけでも十分凄いと思うんだけど、本人的には相当なショックだったらしくああしてふて腐れている。

「そんなので今度の中間テスト大丈夫なの?」

「今は考えたくもねーよ…しばらくそっとしておいてくれ…」

「ああそう?ギリギリになって泣きつく…なんてことにならないと良いね」

 何だか釈然としない思いを抱えつつ、ノートと教科書を開いて試験勉強を始める。一番苦手な国語を中心に勉強を進めていこうとした中、一瞬だけ和也がビクっと肩を震わせて起き上がった。

「ど、どうしたの?」

「いや…変な気配がした気がしてさ…気のせいか?」

 周囲を見渡すも、特に変化は見られない。念のためにメガネのレーダー機能で周囲を捜索するけど、イマジネーターの気配は和也以外は感知出来ていない。

「気のせいじゃない?和也、ちょっとナーバスになってるんだよ」

「かもなあ…しゃーねえ。どの道生徒相談室はテスト期間中で休みなんだ。とっと帰ろ」

「あ、帰るの?じゃあ、私も」

 帰る家は同じだし、こうして毎日一緒に帰るのも習慣になってきた。お蔭で学校中でカップル扱いされちゃうこともあるけど、まあ間違っても無いんだしいっか。

 ちょっとしたデート気分で並んで下駄箱に向かう私達。その途中、ずり落ちそうになった眼鏡の位置を戻した拍子に縁に新しく追加された機能が作動した。

「あっ…」

「どうした?」

「ううん。ちょっとね。おじいちゃんの眼鏡がまた変な機能追加されちゃってて…」

 何とか戻そうとリセットボタンを押す私。しかしその時、追加機能の一つである集音機能が作動して不可思議な声が聞こえて来た。

『うっそ!マジ!?』

『ああ。マジだ。秘密のパスワードを入れれば今度の…』

 近くの男子トイレから聞こえてくるその会話の不思議に思ったけど、すぐに水音が聞こえてきたせいで思わずリセットボタンを押してしまった。

「あ、もう聞こえないか…」

「集音機能か。ろくな音が聞こえないだろ」

「まあね。男子トイレのすぐ傍なんて…って、もしかして和也。女子トイレからの音も聞こえてる訳?」

「…」

 思わず視線を逸らす和也。まあ、ちょっと前にナノマシンで強化された聴覚に苦しんでいることも聞いていたから、それを考えればしょうがないって言えばそうなんだけど。

「今度から耳塞いでてよ?」

「善処する。やっぱ、ヘッドフォンとか買うかな…」

 ばつの悪そうな顔で頭をかく和也と二人で家路に急いだのだった。



 『JACK』日本支部。真新しい基地で、キャプテンZは自分の指揮下に入った部下たちに矢継ぎ早に指示を出し続けていた。

「作戦Aの報告書を今日中に提出しろ。サンプルからの情報さえ纏まっていれば箇条書きでも構わん。それと念のためにも作戦Bの立案も進めて置けと作戦部に伝えろ」

 的確な指示と無駄のない采配に部下たちが効率よく動き回る中、かつての日本支部のリーダー、プロフェッサーDは苦々しい顔をしてキャプテンZの居る支部長室に足を踏み入れた。

「支部長殿。頼まれていた報告書です」

「ご苦労。だが、貴方がここに来ることも無いでしょう。専用の研究室は用意したはずだ」

 キャプテンZは意外そうな顔でプロフェッサーDを見るが、当の本人は怒りで顔を歪めつつ吐き捨てるように呟いた。

「…あの部屋は空調の風がいけ好かんのでな」

「なら、空調の様子を見てもらうよう技術部に頼むか?貴方には働いてもらわねば困る」

 極々自然に、さも当たり前みたいな顔をして言い放つキャプテンZ。そんな彼に苛立ちを募らせるプロフェッサーDは報告書を机に叩きつけた。

「なぜ私を降格した時殺さなかった…!?私に生き恥を晒させて楽しいのか…!?」

「有能な科学者を捨てる訳がないだろう。私は貴方の頭脳で作戦を成功させたい。貴方は汚名返上の機会が欲しい。それ以外に何がある?」

「…」

 思わず歯噛みするプロフェッサーD。確かに、このままで終われるほど彼のプライドは安くは無い。だが、そのチャンスをぽっと出で自分の立場を奪った若造に与えられたくはない。

「分かったら研究室に行ってくれ。大首領も貴方の頭脳を失うのは惜しいと言ってくれた。今はそれで十分だろう」

「…若造め。いつか蹴落としてくれる」

 聞こえないように小声で呟きつつ、プロフェッサーDは支部長室を後にする。しかし、キャプテンZはその小声を聞き取っていた。聞き取ったうえで、あえて無視していることに、プロフェッサーDは気が付いていなかった。



 翌日の放課後。中間テスト前のテスト週間三日目の夕方は、流石の俺も立ち直ってせっせと漫画の下書きを書き始めていた。

「…本当にテスト大丈夫なの?」

「まあな。こう見えても記憶力は良いんだ。一度授業を聞けば大体覚えてるよ。テスト週間は別に勉強したことないけど、大体真ん中から少し上くらいの成績取ってる」

「それ、きちんと勉強したらトップに立てるんじゃないの?」

「その必要性を感じてない」

 うわあ、と言う顔でこっちを見てくるヒカリをよそに、俺はシャーペンを原稿用紙に走らせる。その時だった。

「お前ら!!居るかぁ!?」

「うわっ!?」

「た、滝先生!?」

 突然滝先生がノックもせずに扉を開けて入って来た。どうやら緊急事態らしい。だが、こっちも忙しいと言うことも分かってほしい。

「依頼なら、今はテスト週間で相談室は休止中で…」

「そう言うことは勉強してから言え!それよりも、だ。お前ら、このサイト知ってるか!?」

 滝先生はそう言って相談室に備え付けられているパソコンの電源を入れ、ネットにアクセスを始める。ヒカリが興味深そうにのぞき込むけど、俺は何となく嫌な予感がして椅子にしがみつく。しかし滝先生に睨まれ、渋々ヒカリの隣に立った。

 そんなこんなで滝先生が検索したサイトを見ると、利用したことこそないが存在は知っていたサイトだったことに気づいて少し驚いた。

「学校の裏サイトっすか。知ってたんですか?」

「当たり前だ。こんな物、学校が存在を知らない訳がないだろう。定期的に巡回して、隠れた問題が無いかチェックするんだが…っと、これだ!」

「んん?何々、テスト対策…これがどうかしたんですか?」

 滝先生が見せてくれたのは、あくまで一般的なテスト対策のページ。

「まあ見てろ。ここをこうすれば…ほれ」

「あ、隠しリンク」

 何もない場所に一瞬だけマウスのカーソルが変わり、滝先生がそれをクリックする。すると、謎のパスワード入力画面が現れた。

 滝先生はその画面にパスワードを入力し始める。

「確か、2SASUKE1だったな」

「何です。それ」

「二十一世紀の猿飛佐助って意味じゃないか?」

「多分それだろう。おっと、これだ!!」

 滝先生が顔色を変えてクリックすると、画面にデカデカと一枚のプリントの鮮明な写真が映った。よく見てみれば、それはテストの答案用紙だった。

「これって…」

「今度のテストの答案用紙だ。勿論、職員室の金庫に入れてあるんだが…どう言う訳かその写真がこの裏サイトに載ってやがる」

「あっ!もしかして、昨日聞こえて来た男子たちの会話って…」

 滝先生の解説に、ヒカリが納得したような顔で頷いた。どうやら心当たりがあったらしい。

「こいつは忌々しき事態だ。そうだろう?」

「ええまあ。テストの意味が無いですからね」

「ああ。と言う訳で、調査頼む」

「はあ?」

「教師としては、これから答案用紙の作り直しで忙しくて犯人探しなどやってられん。だが、だからと言って警察に通報して事を荒立てなくない。なので生徒のお前らが犯人を探して、もう二度とやらないようにと説得してくれ」

 滝先生の大人の事情を一切隠す気の無い態度に、思わずヒカリと顔を見合わせる。確かに重要な問題ではあるけど、だからと言ってなんで俺たちに。

「いや、なんで私たちが?こう見えても、テスト前なんですけど」

「さっき葦原は漫画書いてたじゃないか」

「あれは…休憩ですよ」

 ヒカリの困惑した顔での追及に、滝先生が真顔で俺を見ながら言い放つ。慌てて言い訳するものの、あまりに情けない言い訳にヒカリが呆れかえった顔でこっちを見てくる。悲しい。

「それに、勉強しなくても出来るとかほざいていたじゃないか。廊下にまで聞こえてきていたぞ?」

 今度は思いっきり睨まれ、俺は肩を竦めながらため息を付く。しょうがないだろ。聞かれてるとは思ってなかったんだし、何より聞かれたからってこんな展開になるなんて思いもしなかったんだから。

「分かりました。分かりましたよ。とりあえず、今夜辺りに職員室を見張ってればいいんで?」

「まあ、それが一番だな。一度聞けば大体わかるお前ならわざわざカンニングすることもないんだろうし」

「ぐう…」

 コテンパンにしてやられ、取りあえずぐうの音は出ることは確認する。隣のヒカリはもう呆れかえった顔で勉強に戻っていて、助けて何て言える雰囲気じゃない。

 仕方ない。今夜は独りで職員室を寝ずの番だな。

感想待ってます。

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