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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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怪奇!新研究所の実験室?

中々初変身まで行けないですね。反省反省。あと事前に断っておきますが、タイトル詐欺ですのでご安心を。

「ははは、そりゃあ面倒くさいことに巻き込まれたものだなぁ」

「本当っすよ。まあ、確かに学校でも漫画を書ける環境が出来るのは嬉しいですけどね」

 学校帰りに昨日の夜教えてもらった天竜寺さん(父)の住む家に寄って今日一日のことを愚痴る。主に放課後の滝先生の横暴さについてだが、天竜寺さんはそれを聞きながらも色々と機材を弄る手を止めようとしない。と言うか、ここに来た時から思っていたが相当な数の機材やらが置いてある。さながらまるで悪の組織の秘密基地みたいな趣だ。

「なんていうか、かなりすごい機械ですね。なんの研究してるんです?」

「知りたいかい?」

 待ってましたとばかりに手を止め身を乗り出してくる。完全に聞かれるの待ってたよなこれ。

「実は私は長年人の想像力について研究してきたんだ!太古の昔から生命は進化してきたが、それを支えてきたのが想像力だ!キリンがもっと高くの餌を求めた際、首を伸ばすと選択したのはどうすれば自身の肉体に負荷をかからないか、どうすれば効率よく餌を取れるかを想像し、それを形にしてきた!もしそれを機械で補助することが出来れば、想像力を物理的な力に変えられるのではないか?と私は考えた!」

「想像力をエネルギーに変える?」

「そう!理論上では、一日の生活に必要なあらゆるエネルギーを自力でまかなうことができるはずだ!勿論、脳へのエネルギー供給は必要だけどね」

 あちこちから引っ張ってくるデータや機材を見せられるけど、全然頭に入ってこない。まあでもかなり夢物語なのは分かる。ってかこんなの完成したら普通にノーベル賞どころか世界がひっくり返るよなぁ。

「で、完成度はどのくらいなんです?」

「一応装置を起動させるレベルまでは来たな。勿論、実用化など遠い未来だがね」

 そう言って一番奥から厳重に保管されていた機械を取り出すと、機械から伸びているケーブルで繋がったヘルメットをかぶる。

「様々な問題は山済みだが、特に最大の問題は起動させるのに必要な想像力が強すぎてまともに動かせる人間が居ないことだ」

 思わずズッコケる俺をよそに、天竜寺さんはヘルメットをかぶったまま意識を集中させるように目を閉じる。すると、ケーブルの先の機械の豆電球が輝き始めた。

「…もしかして、これが今の限界ですか?」

「ああそうだ…!!と言うか話しかけないでくれ!!これを維持するだけでも精神をすり減らしているんだ!!」

 実際話しかけられただけで豆電球はポツポツ点滅を始めていた。しかも天竜寺さんも額の汗がものすごい勢いで流れ出ていた。

 これだけやってこの部屋を照らすことも出来ないとは。まあでも、たかが想像力だけでエネルギーを発生させているのだから十分凄いんだろう。ちょっと興味が出てきた。

「はあっ…これ以上は無理だ…!!」

「これ、ちょっとやってみてもいい?」

「ああ。だがこれでも私が豆電球を付けるのに一ヶ月はかかったからな。いきなりは無理だろう」

「へえー…」

 そう言われると逆に張り切ってしまう。驚かしたいとは思っていないけど、無理だと言われてそのまま引き下がるのはなんか癪だった。

 それにしても、想像力を発揮する、か。いつもどおり、漫画の続きでも考えればいいか。

 まず、ヒーローが誕生して真っ先に怪人が暴れまわるわけだ。そして狙われるヒロイン。その理由は…。

「おおうっ!?」

 そうだ、ヒロインは怪人たちの世界との間のゲートを塞ぐための知識が催眠術で無意識のうちに植えつけられていて、怪人たちはその知識を消すためにヒロインを狙うわけだ。そして主人公はそれを知らずに守り続けるうちに…。

「ストーップ!!ここでやめたまえ!!いろいろやばいぞ!!」

「へっ?」

 いきなりヘルメットを外され変な声が出る。やたら焦っている天竜寺さんの姿をぼうっと見ていると、天竜寺さんは腰を抜かして座り込んでしまった。

「あの、なんかまずいことしました?」

「いいや。予想外の結果だよ。見てくれ」

 指さされたほうを見れば、機械の豆電球がオーバーヒートを起こして溶けかかっていた。

「君の想像力は私とは比べ物にならないほどという訳だ。驚いたよ…これなら、私の研究は確実に進歩するだろう!!」

 すいません。一体何が起きたか説明してもらえませんかね。

 言おうとしたけど、天竜寺さんは聞く耳なんかもっちゃいない。あれよあれよと気が付けば何時間も研究に付き合わされていた。

 今日は早く寝ようと思ってたのになぁ。




 一晩中漫画とは全く関係のない天竜寺博士の実験に付き合わされて二日連続寝不足。当然授業の内容なんぞ頭に入るワケもなく、気が付けば放課後だった。

 今日こそは早く帰って寝ようと荷物をまとめるが、すぐに滝先生に捕まって昨日の生徒指導室に連行されてしまう。

「ほら見ろ!丸ペンに原稿用紙の束!!さらに漫画専用の机に原稿を乾かすための物干しも買ってきた!!校長を騙して巻き上げた金で買ったから私の懐も傷まないから、まさにWIN=WINの関係じゃないか?」

「あーそっすね。って、すごっ!!」

 まじで漫画制作グッズ一式揃ってるよ。しかもどれもこれもかなり上等なやつばっかり。俺の家の道具は全部オヤジのお下がりだからどうしても古いし、確かにこれを自由に使っていいなら受けてもいいな。

 新品の丸ペンを握り、取り敢えず一枚原稿に今書いてる漫画のヒーローを書いていく。ヤバイ。この丸ペン超使いやすい。

「どうだい?やってくれるよねっ!?」

「わ、分かりましたよ。ここまでやられたら、断れないじゃないですか」

「そうか!!じゃあ今日からこの相談室も活動開始だ!!君も随分張り切っているみたいだしね!!」

 言われるまでもなく、まずは鉛筆でネームを書き始める。すでにアイデアノートの中では大体の形は出来上がっているが、いざネームにしてみると中々形になりきれない。だがこれならどんどん筆が進むぞ!

「さてと。私はどうするかな…初日からばっくれる訳にもいかないしな。茶でも入れるか」

 後ろで教師がとんでもないこと言っていても気にしない。それより今は目の前のネームだ。大まかな台詞は大体書き終わったから、次は各コマのポーズだ。どうすればよりヒーローっぽいか、或いは強さをわかりやすく伝えられるかはポージングに決まっていると言ってもいい。ジョジョ立ちがいい例だ。

「ふう…そう言えば、昨日のアイデアノートに書いてあった女の子のことだが?」

「ああ。同じクラスの天竜寺さんが親父の漫画のヒロインにソックリだったんですよ。で、驚いてメモったんです」

「ほー。あ、確かに似てるな。なんでだ?」

「それが、おかしな話なんですよ。天竜寺さんの親父さんが俺の親父の高校の同級生で、あの漫画に出てくる登場人物のほぼ全員がその頃親父がつるんでたメンツのモデルになってたって」

「それ、本当か?と言うか、いつの間に天竜寺と仲良くなったんだ?そんな様子欠片も見えなかったぞ」

「そりゃ、天竜寺さんと喋ったことなんかないですから。一昨日の夜に、天竜寺さんの親父さんが俺の親父を訪ねてきたんですよ。ずっと海外にいたから親父が死んでるってこと知らなかったらしくて。で、いろいろと面白い話を聞いたってわけで」

 喋っている内にポージングの割り振りも大体決まった。次は吹き出しの中に台詞を書いていくか。

「ほー…そりゃ随分と不思議な縁だな。けど、学校への届出には天竜寺の親族って母親しか居なかったぞ?」

「何でも離婚調停中らしいですよ。おかげで娘さんにも会わせてもらえないらしくて」

 昨日の夜の実験の時に小耳にはさんだプチ情報だ。博士曰く、研究ばっかりで家庭を疎かにしすぎたらしい。その為娘さんにも居場所を教えたらダメらしい。勝手に会ったらいろいろ面倒なことになるらしい。

「世知辛いなぁ。天竜寺って、あの天竜寺グループの総帥の直系だろう?離婚ってことはそこから追い出されるかもしれないわけだ」

「そーっすね。まあ、結構危ない研究してましたしね」

 そう言えば今の奥さんは後妻で、天竜寺さんにそっくりなのは十五年前に死んだ前妻だって言ってたな。で、漫画じゃ主人公は大企業のお嬢様のヒロインと結婚してたから、婿入りしたってことになるのか。とすれば、博士は後から来た顔にグループから追い出されようとしているのか。うわあ。余計世知辛いな、それ。

「それにしても、あの葦原猛の同級生が天竜寺グループのお嬢様とその後の婿か。漫画の元にしたくなるのも納得な濃いメンツだな。ハッキリ言って、担任なんかしたくないぞ」

「あんまり、他人事じゃないかもしれませんよ?気づいたらウチのクラスもどんどん濃ゆくなって…」

「やめろ。想像もしたくない」

 俺としてはそれはそれでアリなんだよな。親父の真似じゃないけど、面白そうなクラスメイトのことを観察して漫画のネタにできるなら最高だろうし。

 さて、そんなこんなで大体のネームは完成した。元々内容もコマ割りも決まっていたし、簡単な台詞と絵しか書いていないから簡単に終わる。まあ、それでも立花さんから有り得ないくらい早いと突っ込まれたこともあるが。

「ふぃー…」

「終わったみたいだな。時間もちょうどいいし、今日はここまでだな」

 原稿をきれいに整えてファイルに入れる。これに筆を入れれば、誰も見たことのない新しいヒーロー漫画が完成するのだ。

「さて、初日だから私も活動したが…色々忙しいのも事実だ。恐らく明日からは相談が来ないことには滅多に顔も見せられないだろう。つまり…」

「明日は一人で集中して漫画を書けるってことですよね?」

「そう言うことだ。どうせ、相談なんか来ないしな!あははは!!」

 全くもって同感だった。学校側が用意した相談室なんかロクに機能するはずがないだろうに。ま、おかげでこんなにも漫画を書くのにいい環境が生まれた訳ですけどね。

 満足げに高笑いを上げると、滝先生は部屋の鍵をかけて職員室に戻っていった。

「さてと…俺も帰るか」

 思い出せば、昨日は家に帰っていない。せいぜい教科書と制服を変えたくらいだ。

 今日こそは、早く寝ると心の中で宣言し、家路を急いだ。

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