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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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学園・青春…?

A:メガレンジャー!

 保健室まで何とかたどり着いてドアを開けると、今度は養護教諭がさっきの天竜寺さんみたいな反応を見せてきたので、ここでようやく俺は鏡で自分の顔を見る。

 …うん。まあ、ただでさえ顔の傷のせいでいかつく見えるっていうのに、寝不足で充血した目とかのおかげで明らかに危ない人みたいな人相になってました。こりゃあ普通怖いよなぁ。俺だって怖いもん。

「という訳で、体調悪いので眠らせてもらっていいですか?」

「ど、どうぞ…」

 こういう時って普通体温測るとかあるよなぁ。まあ、この顔見れば一目瞭然なんだろう。

 何とかベッドに倒れこむと、激しい頭痛に耐えつつ目を閉じてみる。一度寝る体勢に入ってしまえば、例えどんなにハイな脳でも休息体勢に入る。

 おかげで次に目が覚めた時には、すでに昼休みもとっくに終わった午後二時だった。

「やべえ…授業開始初日でこれか…」

「最後の授業くらいは受けていきます?」

「せめてそれくらいしたほうがいいよなぁ…」

 取り敢えず養護教諭には脅かしてしまったことも含めて謝ってから教室に戻る。事情は予め聞いていたのか、ちょうど担任でもある英語教師の滝先生は特に何か苦言を言うこともなかった。まあ体調不良としか言っていないから、実際のところ漫画のアイデアまとめるのに忙しくて寝てませんでしたなんてことは知らないと思えば当然の反応だった。せいぜい新環境に慣れなくて体調を崩したとかなんとかで決着がつくだろう。

 席についてノートや教科書を取り出し、黒板の内容をできる限り写していく。が、まあ案の定中等部の復習ばっかりですぐに手が止まる。まあ初回だしな。

 だが、今は好都合だ。今の俺は授業に遅れていて慌てて黒板を写している。が、この程度今更書くほどのことはない。なら、わざわざ徹夜して書いたアイデアをここでまとめても構わないという事でファイナルアンサーだ。

 二冊目のアイデアノートを取り出し、まずは簡単な全体図を書いていく。

 基本設定として、主人公はごく普通の大学生。ある時、自分の所属する研究室で実験していた特殊粒子の影響で異世界とのゲートが生まれ、そこから大量の怪人が現実社会に入り込んできてしまう。実験の失敗で壊滅した研究室で唯一生き残った主人公は、特殊粒子を体に直接浴びたことで怪人と戦うことのできる超人に変身する力を得るのだ。

 物語の設定が纏まった。次はヒーローの姿や設定だ。まずモチーフとして、既存のヒーローの要素を持ってこよう。全身を包む鎧とヘルメットは、日本人ならお馴染みのバッタ人間と宇宙の刑事を足して二で割り、そこにオリジナリティを加えていこう。ヘルメットのデザインは思いっきり変えたほうがいいな。シルエットでもわかるよう、バイザーをあえて大きくVの字型にしてヘルメットから飛び出させて、肩と腰の当たりにも少し目立つアーマーを付けてみよう。

 次に強さの設定だ。無敵のヒーローと言っても、細かい設定を最初に作ってそれを遵守していく形で物語を作っていかないと無敵っぷりがよくわからなくなってしまう。無敵なのか何でもアリなのかの違いはハッキリさせておかなければ。

 まずはスピードとジャンプ力。一応このヒーローの最大の武器はこの二つとしよう。高速で走り、飛び、その勢いで相手を圧倒するのだ。走る速度はマッハ、ひとっ飛びでビルの上まで飛び上がれる。必殺技はマッハの速度で飛びかかると同時にパンチを叩き込む。技名はエアリアルブラスター(仮)。いい名前が思いついたらそっちにしよう。

 防御力はそれなりの設定にしよう。基本は避けるが、やはりそれを上回る強敵の出現で叩きのめされるのだ。ヒーローにはピンチも不可欠だからな。

 後は、そうだ。武器だ。ヒーローは素手で戦うべしと言う意見も多いが、格好良い武器はいつだって男心をくすぐるものだ。実際ヒーロー玩具の売上はかなりの巨大市場となっているらしいし。

 イメージとしては大剣だ。だが、ここで問題がある。それをどう持ち運ぶかだ。

 何処からともなく取り出すには武器がでかい。だが、このヒーローのイメージイラストで、一番似合っているのが大剣だった。なら、使わないときは小さくする如意棒形式にするか。

 だが問題はこれだけではない。変身後の移動手段だ。ヒーローといえばバイクか自分で飛ぶかだが、まさかこんなヒーローが両腕を前につき出して飛ぶわけにも行くまい。

 いや待て、さっきの武器をボードみたいなデザインに変えて、移動するときはこのボードでサーフィンするように空を飛べばいいんじゃないか?確かアメコミにそんなヒーロー居たし。

 なら、普段は左腕のガントレットにして、必要に応じて格好良いポーズと一緒に弾き飛ばして巨大化からのサーフィンの流れは結構行けるんじゃないか。後は…

「おーい…」

「え?」

 気が付けば、目の前に滝先生が立っていた。俺の机に広がるのは授業のノートではなく、今現在書いている漫画のアイデアノート。

「あ、あはは…」

「没ッ収!!」

 ノートはまとめてボッシュートされました。




 放課後、生徒指導室。滝先生に連行された俺はアイデアノートやカバンの中の原稿を目の前にまとめて広げられて晒されていた。

「あの、すいません…まだ完成してないうちに晒すのは勘弁してくれませんか?」

「問題はそこなのか…?」

 呆れた顔の滝先生は一枚一枚漫画の原稿を斜め読みしていく。漫画家志望としては目の前でやられて一番腹立つことではあるが、流石にキレる訳にはいかない。

「全く、ここは学校だぞ?漫画を書くのは自由だが、せめて放課後にやれ」

「わざわざ放課後に残ってまでここで書く理由はないですよ。普通に家に帰ってそこで書きます」

「ならここに原稿を持ち込むな。それとアイデアまとめも授業中はやめろ」

「そうっすよね…すいません」

 没収されたアイデアノート以外をカバンにしまい、思わずため息をつく。まさか高等部に進学して二日目にここまでやらかしてしまうとは。中等部では一部の教師の反感を買ってしまって色々面倒くさかったから、高等部では気をつけようと決心していたのに。

「分かればいい。それにしても、面白い漫画を書くんだな」

「そうっすか?なんか流し読みしてましたけど」

「流し読みでも十分伝わるくらい面白かったさ。それに未完成だしな。本腰入れて読むにはまだ早いだろ」

 前言撤回。中々話がわかるじゃないか。

「噂で聞いたが、中等部では色々あったそうだな?」

「ええまあ…」

 本当にいろいろありましたよ。ええ。一時期二度と教師なんか信じるかと決心してそういう漫画を書いたほどですよ。まあ、あんまり面白くなくて自分で没にしたけど。

「部活は確か美術部だったか?意外だな」

「大会のたびに一枚だけ出すことを条件に美術部の資料とか使わせてもらってたんですよ。殆ど幽霊部員でした」

 その割にはほぼ毎回受賞していたから逆に肩身の狭い思いをしてしまったが、それはどうでもいいか。

「実はな、高等部の美術部の顧問の教頭先生が君を探していてな。是非美術部に来て欲しいとのことだ」

「高等部の施設がいろいろ充実してるんなら考えますけど…」

「まあ聞けよ。その教頭先生なんだがな…実は大のサブカル嫌いなんだ。漫画、アニメ、ラノベ、ゲーム。これら全てを憎んでいると言ってもいい。そんな人に、君の要求する特別待遇が許されると思うか?」

「うわぁ…」

 まさかこう来るか。と言うか、こういうパターンの時って大体教頭って悪者だよな。もしくは理事長とか。

 まあそんなことはともかく、これはいろいろまずい。中等部の頃の失敗のきっかけは、まず間違いなく美術部での特別待遇を認めさせた時だ。あれの後、一部のベテラン教師勢からの風当たりが明らかに強くなったもんなぁ。

「そこで、だ。取引しようじゃないか。実はここの生徒指導室は、今年から生徒のお悩み相談を開始するんだ。君には、それを手伝って欲しい」

「はい?」

「勿論、その代わり暇な時はここで漫画を書いていてくれて構わない。むしろどんどん書いて俺に読ませてくれ。感想ならいくらでも言おう」

「いやなんでそんな話になるんですか?俺をスカウトする理由は?」

「理由?そんなこと簡単さ。他にアテがないからだ!!」

 思わずズッコケた。なんだこの人。確かに好き好んでやる奴なんか居ないだろうが、だからって俺にはやってもらえると言う確信でもあるのか?

「実はな…このお悩み相談室、今年度の初めにいきなり決まったんだよ。何でも最近あちこちの学校で起きてるいじめやら傷害事件やらを未然に防ぐ為の努力をするべきだってさ」

「つまり、やりましたよってアリバイは作っておこうって腹ですか?」

「ああそうだ。で、誰もやりたがらないから新人でもベテランでもない俺に押し付けられたってわけだ」

 またぶっちゃけましたよこの人。まあでも学校側の意見も分からんでもないな。最近ニュースで良くいじめの自殺とか聞くもんな。で、コメンテーターがしたり顔でいう訳だ。『学校が何も対策を取っていない』ってな。

 そんなこと言われたって対策なんか限られてるだろうし、効果があるかどうかも分からない。なら、ちょっと変化球を投げてやってますよアピールをしておくほうが吉なわけだ。後は、問題さえ起こらなければ万事OK。楽な仕事だ。現場を除けば。

「頼むよぉー。一人くらい学生が居た方が都合がいいんだよぉー」

「いやだから俺じゃなくてもいいでしょ。大体漫画なら自宅の方がいろいろ道具も揃ってますし」

「それくらいなら経費で落とすからさぁ。頼むよ。ぶっちゃけた話、どうせ誰も相談に来ないんだからさ。君だって、教頭先生に余計なこと言われたくないだろ?」

 そう言われて進級式の時に見た鬱陶しそうな教頭の顔を思い浮かべる。なんというか、典型的な嫌な教師みたいな顔してたよなぁ。

「あの人話長いぞぉ。しかもねちねちネチネチしつこいし、一度目をつけられたら最後さ。三年間、何かと理由をつけられて絡まれるぞ」

「まあ確かにそれを聞くと嫌っすね…」

「それにな。君だって学校帰りにどこかに漫画を持ち込んだりするんだろ?だったら最後の仕上げを学校でやれたらうれしくはないかい?」

「うっ…」

 まいったな。ここで人参を鼻先に突きつけられるとは。

「良し分かった!なら、漫画を書くためのセットは今日中に俺が用意しよう!明日までに君が満足出来るだけの環境を整えられたら参加してくれないか!?」

「ま、前向きに考えさせていただきます…」

 等々口にしてしまった禁断の言葉。まあ、悪い話じゃないしな。ここは宣言通り、前向きに検討させていただくと言う形で…。

感想待ってます。

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