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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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38/75

飛べ!!ヒカリ!!

話が進まなくなってきた。書き始めたころと同じで、書きたいことが多すぎて全部盛り込もうとしすぎで話のテンポが悪いと言う状況。何とか打開したいが…今はこれが精一杯。

 気が付いた時、私は真っ白な病室に居た。意識を失う前後で覚えていることと言えば、いきなりやって来た漫画家志望の同級生を相手に竹刀で殴り掛かってしまったことと、原因かもしれない治験を受けた病院に電話をかけたところまで。

 何が起きたのかもわからず、ただただ全身が怠くて動けずにいたところでまた出て来たのが、あの漫画家志望の同級生、葦原和也君だった。

 彼やこの施設の人が言うには、私は世間に走られていない特殊な病気らしい。脳や筋肉のリミッターが外れて制御出来なくなり、物や人を傷つけてしまう。実際にやってしまったのだから、私も私を隔離することに異論はなかった。むしろ、誰かを本当に傷つける前に隔離してもらえてラッキーだった。

 だけど、やっぱりこの病室は退屈だった。監視役は私への配慮で全員が女性だったけど、やっぱり四六時中誰かに見られていることには変わりないし、生きがいの剣道の練習をしようにも、竹刀や木刀は危険物扱いで持ち込めなかった。

 結局やれることなんて、毎日届けられる授業ノートを見て勉強することくらい。たった二日か三日で退屈で退屈で死にそうになったその時、また葦原君が現れた。しかも危険な私の病室に。

 当然、私の手が勝手に葦原君を殺そうとした。だけど葦原君はそれを軽々と躱して見せた。後で聞いたけど、彼も私と同じ病気なのだから、そのくらい朝飯前なんだろう。最も、見ているこっちは心臓が止まるかと思っていた訳だけども。

 最初の面会は、正直に言ってあんまり進展は無かった。葦原君は漫画雑誌を二冊持ってきていたけど、私は別に漫画なんて読まないし。

 だけど、その面会の最後に同じ病気と知って、私は初めて葦原君に強烈な親近感を抱いた。そして、次に来るときを心の底から待ち望んでしまっていた。今度は殺してしまうかもしれない、と言う恐怖心も次第に膨れ上がって来ていたし。

 そして、彼は来た。投げつけてしまったペンを軽々とキャッチし、私と同じで不自然なパワーを見せつけて来た。だけど、私と違い制御が出来ていた。最悪の場合、彼と同じくらいにまで制御出来るようになれば外に出られるのか。そう思って内心ほっとしたその時だった。

 また、私の意識が飛んだ。

 だけど今度は薄らとだけだけど覚えている。制御不能の化け物になった私が葦原君らしき人影を叩きのめしている姿を、まるで他人事のように眺めている私が居た。

 そして全てが終わり、また意識が戻った時、私を閉じ込めていた隔離室は滅茶苦茶になっていた。防弾強化ガラスは粉々に砕け散り、私の体を調べていた様々な機械が火花を散らして転がっていた。

 そして…私を取り押さえるように葦原君は気絶していた。

(もうやだ。こんな病気…どうして、こんなことになっちゃったのよ。私はただ、スランプから抜け出したかっただけなのに)

 目を閉じれば浮かんでくる、荒れ果てた病室と砕け散った強化ガラス。あれは本当に自分がやってしまったのだろうか。あんな、人がやったとは思えない様な破壊を、本当に?

 でも、間違いなくあれは私がやったんだ。

 私は、化け物になっちゃったんだ。

 思わず涙が滲み、必死にその涙を拭い続けていたら、また彼が現れた。

「もう一度言うけどさ、俺に剣道を教えてくれないか?」

 そして、訳の分かんないこと言い出して聞かなくなっていた。

「何で?今の私に変なこと言ったら…勢い余って何するか分からないでしょ」

「それくらいは知ってるよ。でもさ、俺が居りゃあ止められるってことは分かったんだ。だったら、ちょっと早いかもしれないけど制御の特訓と、俺のパワーアップをここいらでやっておくべきだと思うんだ。お互いの為にも」

 漫画家志望と言うだけあって口が上手い。確かに言われてみればそうかも、と思わせるだけの説得力があったけれど、それでも私は受け入れられなかった。

「ダメよ。私には分かるの。私にこの力は制御なんか出来ない」

「おいおい、まだチャレンジすらしてないのにそりゃないだろ。一生ここでニートする気か?」

「茶化さないで!!アンタに何が分かるって言うのよ!?」

 思わず声を荒げて葦原君の頬を叩く。体の制御が効かないってことを完全に忘れた一撃は、葦原君の体を壁まで吹き飛ばしてしまった。

「ご、ごめんなさい…」

 壁に頭からぶつかった葦原君を見て咄嗟に謝るけど、彼の後頭部から流れる血を見て息を呑む。まさか、本当に…?

「謝ることは無いって。俺じゃなきゃ死んでたけどな」

「きゃあっ!?」

「おい、その悲鳴は何だ。俺はゾンビか何かかよ?畜生…」

 何事も無かったかのような顔をして立ち上がる葦原君に悲鳴を上げると、心外そうな顔をして後頭部の血を手でぬぐう。そしてちょっと頭を振ると、葦原君の頭から流れ出る血は既に止まっていた。

「え…」

「これも副作用って奴さ。どんな傷でも、瞬きしている間に治っちまう。こんな体でも、水城さんは俺を人間だと思うか?」

 あんまりな現実を前に言葉を失う私。同じ病気だってことは聞いていたけど、彼はもうここまで人間離れしてしまっているなんて。

「もうここで全部教えてやる。この病気の真実も、この施設のことも、俺のことも。全部聞いて、それでもまだ甘ったれたこと言えるんなら、俺だってアンタを見捨ててやるさ」

「一体、何を…」

 葦原君はそう言い放ち、懐から一枚の原稿用紙を取り出した。彼は一瞬苦痛に顔を歪めるけれども、やがて彼の体が炎に包まれていった。



「これが…?」

 おじいちゃんに連れられ、社外秘の極秘区画に案内された私は、そこで開発中のスーツを見せられた。

「ああ。わが社が開発したフライトスーツの試作型じゃ。子供から老人まで、自由自在に空を飛べる未来社会の実現をテーマに開発を始めたが、小型ジェットエンジンの技術だけをあの女が売り渡して頓挫したプロジェクトでな。このまま活躍の場を与えられないまま埃を被らせておくのも忍びない」

 目の前に置いてあるフライトスーツは、スーツとは言っても全身を覆うようなものでは無かった。足の裏…と言うか、靴底に小型のジェットエンジンが設置され、足首からお腹の辺りまでを黒いストッキングのような物で覆う形で固定する形らしい。

「えっと、これを着て戦うの?」

「戦うとは言っても、この試作品を使うまでしかまだ決まっとらん。こいつをどう使うかは今後の課題じゃが、とりあえずはこいつを使いこなしてもらうぞ。それが出来んことには先には進められん」

「そっか。だったら…着替えるから出ていってくれる?」

 真面目な顔をしつつ、私が着替えるのを待ち構えているおじいちゃんを睨みつける。おじいちゃんはあからさまに残念そうにため息を付きながら外に出ていく。

「全くもう。おじいちゃんったら…最後までシリアスに出来ないのかしら」

 誰かに見られている訳でもないのに、何だか恥ずかしい思いをしながら靴と靴下、そして制服のスカートを脱ぐ。基本的に下半身を固定する物だから、上は脱がなくてもいいと思ってのことだった。

「えっと、こうでいいのかな?」

 制服の上をたくし上げながら機材の上に昇り、ストッキングのような物に両足を入れていく。だけど、ここから先何をすればいいのか分からない。

『あーあー。ちゃんと装着できた様じゃな』

「おじいちゃん?もう戻って来たの?」

『いや、隣の部屋からモニターしとる。まだ録画機能が残っとって助かったわい』

「…もしかして、ずっと見てただけじゃなくて録画までしてた?」

『ギク』

 おじいちゃんの態度に、全てが事実だと悟って心の底からため息を付く。その音に孫娘からの本気の軽蔑を感じ取ったおじいちゃんが慌てだした。

『そ、それよりも!!まずはスイッチを入れる所からじゃな。右の腰の辺りにスイッチがあるじゃろ?押してみい』

「スイッチ?ああこれ…」

 おじいちゃんの言う通り、右の腰の部分に少し大きめのスイッチがあった。それを押してみると、両足と腰の辺りがキュッと締まる感覚がした。そして足の裏から断続的な振動も始まり、やがてジェットエンジンに点火。私の体はふわりと浮かび上がった。

『後はバランスじゃ。足裏の角度と距離で移動が出来る。上昇下降、左右どっちにもじゃ。やってみい』

「え、えっと…」

 おじいちゃんに言われてちょっと前に上体を突き出す。するとそれに合わせてソローリと体は前に進んだ。

「わっ!凄い、これ!!ってきゃあっ!?」

『集中力を切らすな!!事故るぞ!!って、もうか…』

「いてて…」

 前に突き出し過ぎたせいで、体全体が一回転して背中から床に落ちてしまった。腰の辺りまで機械で覆われているから痛くは無かったけど、一瞬で体が空中で一回転するのはビックリを通り越してショックだった。

『大丈夫か?諦めると言うんなら、今からでも遅くはないぞ』

 おじいちゃんの本気で心配そうな声を聞きながら立ち上がる。足腰を包んでいる機械はどんな素材でできているのか、立ったり座ったりするのに一切の抵抗感を感じさせない柔らかさだった。これで落下の衝撃をあそこまで遮断出来るんだから、これは相当な優れものだ。なんでプロジェクトが再稼働しなかったんだろう。

「だ、大丈夫。本当に。今のでコツは掴んだ気がするから」

『本当か?』

「本当だよ、ほら」

 そう言って私はもう一度腰のスイッチを押す。ふわりと浮かび上がり、そのままスイーッと部屋の中を飛び回ってみせる。まだ和也から借りた漫画に出てくるサイボーグみたいにすばやく飛び回る、みたいなことは出来ないけど。

『驚きじゃな。それくらい使いこなせるのならフライトスーツの使用に問題はないが、だが流石にこのまま運用は出来ん。今からそれを元に、ヒカリ専用のバトルスーツに改造するとしよう』

「分かった。ありがとうね。おじいちゃん」

 私の言葉に、おじいちゃんがふと黙り込んでしまった。どうしたんだろう、と思って首を傾げると、少しだけ悲し気なおじいちゃんの声が聞こえて来た。

『…可愛い孫娘のその言葉…ずるいのう。それだけで全部許せてしまう。本当なら、一番に反対すべき立場のはずなのになぁ…』

感想待ってます。

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