白鳥の公園?
久しぶりに変身、そしてバトル!!疲れた…
「水城さん、結局どうすることになったの?」
「暫くは本社ビル地下の隔離施設で暮らしてもらうことになった。まあ、いつ暴れるか分からんので少々広めの施設に入ってもらったが…この味噌汁薄いのう」
「さっきは濃ゆいっつってたろ。それより、怪人化させる原因は一体何だったんだ?やっぱり『JACK』とかいう奴らが水城さんになんかしたのか?」
「それは分からんが…まあ間違いないじゃろ。今は色々と調べさせておる。明日にでもナノマシンを注入した奴を探し出せるハズじゃ」
家のリビング。私達は和也の作った夕食を食べながらおじいちゃんの報告を聞いていた。水城さんの現在の容体に、ナノマシンの現状、そして『JACK』。
どれもこれも深刻な問題にもかかわらず、おじいちゃんは相変わらず和也を目の敵にしてるし、和也はそんなおじいちゃんを軽くいなしている。こんなので本当にいいんだろうか。
「だが、何だって水城さんは『JACK』と繋がったんだ?普通、一般市民がそんな胡散臭い連中と知り合う機会なんざ碌にないだろうに」
和也が首をひねりながら呟く。確かに、私達と同じ学校に通っているとはいえそんな非日常的な奴らと道端でばったり遭遇して、そのままホイホイ付いて行っちゃうものなんだろうか。
いくらこの国が平和だからって、見ず知らずの不審者には警戒もするだろうし。
「うーん…やっぱり、原因は剣道部でのスランプかもしれないけど、和也が言う通りタイミングとかが分からないね。何か、無条件で信頼しちゃうような肩書で近づいてきた、とか…」
「肩書、か…」
私の言葉に、おじいちゃんがふと考え込む仕草を見せた。何か引っかかるものでもあったんだろうか。
「まあ、これ以上は明日以降じゃな」
おじいちゃんはそれだけ言うと、空になった皿を残して二階に上がっていってしまった。残された私達はその様子に肩を竦めた。
「明日以降っつったってなぁ…」
チラリと原稿用紙を見て呟く和也。おじいちゃんは色々と言ってはいるが、実際に動くは基本的に和也なんだから、和也の都合を聞く素振りくらいはしてくれてもいいのに。
翌日の放課後。私と和也は二人で某所にある真赤蘭大学病院と言う場所にやって来ていた。おじいちゃんからの連絡で、水城さんが一昨日にここで目撃されたという情報を得た。もしかしたら、ここが『JACK』とやらの実験場なのかもしれない。
「すみません。実は、一昨日あたりに友達がここに担ぎ込まれたって聞いたんですが」
受付で水城さんの写真を見せると、受付はちょっと不思議そうな顔をしながらパソコンを操作する。警察相手じゃないから、そんなことをする必要はない訳だが、まあ学生相手なら調べてやるくらいはいいか、と言う感じだろうか。
「そのような記録はありませんが…あら?」
「どうしました?」
「あ、いえ、通院記録はありませんが…一昨日ならちょうど学生を対象にした天本教授が新薬の治験を行ったのを思い出しまして。もしかしたら、通院ではなくそちらと間違えたのでは無いでしょうか?」
「治験、ですか。それって何の薬なんですか?」
「さあ、そこまでは…ご本人と連絡は?」
「着いていないので、ここに来たんですけど…とりあえず分かりました。ありがとうございます」
それだけ言い残して受付を後にする。十分な情報は得られただろう。一度病院を離れ、人気のない近くの公園でおじいちゃんに連絡を入れる。
「あ、おじいちゃん?病院で水城さんが治験が受けてたかもって。うん…確か、天本って教授の新薬だとしか聞いてないけど…」
私の報告を聞きつつ、和也は近くの自販機で二人分のお茶を買って待っていた。
「まずっ!!ヒカリ!!」
「え?」
そんな中、突然和也が私に駆け寄り、突き飛ばす。呆気に取られる私の目の前で、和也は真横から姿を現した水城さんと同タイプのイマジネーターのタックルを食らって吹き飛ばされてしまった。
「和也!!」
吹き飛ばされてどこかに飛んで行ってしまった和也を探すが、既に目の前にはイマジネーターが。よく見ると水城さんの変身したのとは少しずつ違っていて、特に刀が無く両腕がそのままなのが目に付くけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「天龍寺ヒカリ…抹殺、もしくは可能であれば捕獲対象。パターンBとして捕獲を開始する」
「待て!!」
どこからともなく聞こえて来た声で、私を襲おうとするイマジネーターが動きを止める。
声のした方を振り向けば、コミックマンに変身した和也が自販機の上からイマジネーターを見下ろしていた。
「和也!!」
「逃げてろ!とりゃっ!!」
自販機の上からジャンプし、着地と一緒にイマジネーターをぶん殴る和也。なぜあんな所に立ってたんだろうか、と言う疑問はさておいて、周囲に他の敵が居ないか確認しながら木陰に隠れる。
『なんじゃ!?何があった!!まさか、あの小僧に襲われたか!?』
「おじいちゃん、イマジネーターが出た!!水城さんと同じタイプの!!」
『なにぃ!?安全を確保したなら、下手に動くなよ!今護衛が…』
「そっちは大丈夫!和也が戦ってる!!」
激しい衝撃音が聞こえたかと思えば、公園の砂場にイマジネーターが叩き込まれている所だった。和也が蹴り飛ばしたらしい。
「白鳥…にしては泥まみれだな。水場が無い所に出るからだぞ。全く」
呆れた口調で挑発する和也。イマジネーターは怒ったように立ち上がって飛びかかるも、和也はそれを軽々といなして背中にキックを叩き込む。このイマジネーターがかなり弱いのか、和也が強いのか。
吹き飛ばされて地面に転がるイマジネーターを見て、私はふと気づく。刀が無い以外の違い、それは足元がやたらと強靭に発達していることじゃないだろうか。
浮かんで来た疑問に頭が回るよりも先に、立ち上がったイマジネーターは足を踏ん張って地面を蹴り上げる。
「うぉ!?」
その結果、予想以上の土塊が勢いを付けて巻き上がり和也を襲う。初めてダメージを負った和也が吹き飛ばされ、それと同時にイマジネーターは飛び上がり、強烈な飛び蹴りを叩き込んだ。
和也はそれを何とか受け止めるけど、勢いは殺しきれなかったのか後ろに吹き飛ばされてしまった。
「なんつーパワーだよ…」
「和也!多分、そのタイプのイマジネーターはそれぞれ特別に強化された部分があるんだと思う。水城さんのは剣で…」
「こいつはキックか。元はサッカー部かキックボクシング部とかか…?」
まだ相手が学生とは限らないけど、水城さんが受けた治験とやらに参加した学生がイマジネーターにされたのならそう言うことになるんだろうか。
「まあどっちでもいいか!お前、剣で斬られた経験アリか?」
「アアッ!?」
剣で斬りかかられると思ってか、警戒したように足を止めるイマジネーター。それを見届けた和也は左手のボードブレードに手をかざし、そして手裏剣のように投擲した。
「エエッ!?」
「斬られる前に撃たれた経験の方が先だったな。安心しろ。俺はどっちも経験アリだ」
ボードブレードが体を貫通し、何されたのか分からないと言った様子で立ちすくむイマジネーター。和也はそんなイマジネーターをよそに、ブーメランのように戻って来たボードブレードをキャッチする。
そしてボードブレードを構えたまま腰を落とし、敵をロックオンするように顎を引く。
「はっ!!」
膝のばねを使い、高層ビルすら飛び越える跳躍力を持って敵に飛びかかる。そしてすれ違いざまにボードブレードを敵の無防備な体に叩き込み、そして着地と同時にイマジネーターが爆散する。
「新しい必殺技だ。どーよ。漫画に使えそうじゃね?」
ちょっと小粋にボードブレードを背中に背負いながらポーズを決める和也。私はその仕草がちょっとおかしくて笑ってしまった。
「そのアングル、どっかで見たことあるよ?」
「そうか?ま、必殺技のバリエーションはもう色々とあるからな。っとそれより…」
変身を解き、二人一緒に気絶している男子学生の元に向かう。
「見覚えのない制服だな。見たところ同学年っぽいけど…」
外見年齢は大体高校生くらい。そして私が予想した通り、足のあたりが非常にがっしりしている。
「とりあえずはカメラで顔写真を…っとぉ!?」
「きゃっ!!」
またしても和也に抱きかかえられてジャンプ。何事かと思えば、ついさっきまで居た場所に何本もの棘が突き刺さっていた。
「また幹部怪人でも出やがったか!?」
不意打ち気味に襲い掛かって来た幹部怪人と言うと、バッディ・カーチスを思い出してしまう。
果たして、と思い攻撃してきた方を見るが、そこには誰も居ない。
どこだ、誰だ、何だ、と周囲を警戒する和也。すると、私はさっきまで倒れてたはずの男子学生が姿を消していることに気づく。
「和也!あの人が…」
「なっ…!!くっそ、陽動かよ…!!」
相手の想定通りの動きをしてしまったことに、思わず悔しさを露わにする和也。
やがておじいちゃんたちが到着した頃には、立ちすくむ私達と戦いで荒れてしまった公園しか残されていなかった。
「天本教授?先ほど、教授を訪ねて来た学生が居たのですが…」
真赤蘭大学病院研究棟。先ほど和也たちの訪問を受けた受付嬢は、彼らが探しているらしい天本教授を訪ねて研究室にやって来ていた。
「教授?いらっしゃらないのですか?おかしいな、外出中の札は出てなかったのに…」
普段あまり人を招かない天本教授の研究室。元々、学長の推薦でいきなりこの大学病院に教授として赴任してきた変わり物で、不気味な風貌から病院内での評判もあまりよろしくない。
そんな人の研究室だから何かあるかと思って入ってみれば、案の定どことなく不気味な物品ばかりが溢れていて、その上部屋の間取りには無いはずの扉まである。わざわざ部屋の構造を変えてまで作りたかった部屋とは一体何なのか。
「失礼しまーす…」
非常に興味が湧いて、思わずその扉を開けてしまう。
「ひぃっ!?」
そこで彼女が見たものは、和也たちがイマジネーターと呼ぶ者たちだった。勿論、受付嬢の彼女は知る由も無いのだが。
「ば、化け物!!きゃぁっ!!」
悲鳴を上げて逃げようとする受付嬢。しかし、すぐ真後ろに現れた不気味な風貌の男が立ちふさがった。
「て、天本教授!?」
「見てしまったか。残念だよ、君は内心気に入っていたんだが…」
天本教授はそう呟くと、恐怖のあまり動けない受付嬢を部屋の中へと突き飛ばす。
「あ、ああああああああああっ!!」
悲鳴と共に何かを食いちぎる様な生々しい音が研究室内に響く。天本教授はその光景を瞬きひとつせずに見守っていた。
「研究はまだ不完全だ。生贄が足りないな…」
天本教授は呟くと、またしても研究室を後にする。
その後、彼女の姿を見た者はひとりも居なかった。
感想待ってます。
因みに、この話で一か月の間一切休まず連載を続けることが出来ました。今後、どれだけ続くか分かりませんが、出来るだけ続けていきたいですね。
応援、よろしくお願いいたします。




