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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
30/75

剣士

久しぶりに戦闘シーンアリ。まあ、こんだけ?なんて言わないでください…

「居たか?」

「ううん。見た人もいないの。道着着た女の子なんて、目立つと思うんだけど…」

 校門前でヒカリと合流し、お互い見つからなかったことを確認し合って思わず唸る。

 いきなり俺に襲い掛かって逃げ出しちゃった水城さんを追いかけて学校中を探し回ったのに、結局見つからなかった。

「後は学校の外か。だけど手掛かりがないんじゃあなぁ…」

 それにしても、一体どうして水城さんは俺に襲い掛かったりしたんだろう。ナノマシンで強化されてなかったら、間違いなく大怪我をしていた所だった。剣道部のエースなら、そのくらい分かっていてもおかしくないと思うのに。

「一応、滝先生にも探してもらってるけど、問題は何処に行ったのかと理由だな。嫌な予感がしてきたぜ」

 制服の内ポケットにしまっておいている原稿用紙を確認しつつ、俺たちはさっき印刷してきた水城さんの顔写真を持って走り出す。

 学校の外を探し回れば、ヒカリの予測通り道着姿の美少女は目立ったらしく色んな人から情報が入って来る。どうやら人気のない河川敷に走っていったらしい。

「あそこの河川敷か。人が来ないからってたまに変な奴らがうろついてるって噂だがよ…」

「急いで行ってみよう。本当にどんどん嫌な予感がおっきくなってきてるよ」

「言われるまでも無いぜ」

 一般市民からの情報を元に河川敷に向かう。案の定人気は無かったが、俺はひと月ぶりにあの気配を感じ取った。

「ったく。嫌な予感が的中したぜ。ヒカリ、下がってな」

「え?あ、うん…」

 いざと言うときの為、懐に忍ばせた原稿用紙を握りしめながら気配の元に向かう。

 ナノマシンの気配がするのは、ちょうど橋が架かっている下辺り。咄嗟の不意打ちに備えながら足を踏み入れると、強烈な殺気と共に真上から刀が振り下ろされた。

「ちぃっ!!」

 前転で回避し、襲い掛かって来た敵を睨む。

「水城さくらか?可愛い顔してたのに、随分と見苦しい面構えになっちまったじゃねーか」

 恐らく水城さんと思しきイマジネーターは、右腕に金属製の刀を無理矢理取り付けられた白鳥のような姿をしていた。

「あ、ああ…!!あああ!!」

「言葉も聞き取れないとはな。あの機械にされちまったトカゲみたいなもんか」

 悲鳴ともうめき声とも判別し辛い声を上げて襲い掛かって来る水城さんの姿に、コウモリ野郎が自信満々に送り出していた改造トカゲ男を思い出す。だが、外から見る限りでは右腕以外はそこまでの改造を施された形跡がない。

「まだ間に合うって、信じるからな…!!」

 原稿用紙を開き、炎と共に変身する。水城さんは悲鳴を上げながら突撃してくるが、俺のボードブレードがそれを軽々と弾き飛ばす。

「形だけの再現に、ヒーローが負けるかよ」

 今の太刀筋は、ついさっき練習見学の中でチラリと見た彼女の太刀筋に似てはいた。だが、所詮は再現。この一撃が本人の技ならまだ対処が取れなかった可能性もあるが、生憎このイマジネーターの技術は彼女の技を再現出来るほどの性能は無かったらしい。

 ボードブレードを構えて向こうの接近を待つ。暴走した水城さんはまるでお手本のように一直線な太刀筋で斬りかかって来るが、俺はそれらを全てはじき返した。

「この剣が本人だったら…って考えたくないな」

 本物の剣だったら、素人がこんな簡単に見切れるような安っぽい剣じゃないだろう。そうなったら、まず間違いなくあの物騒な剣が今頃全身を切り刻んでいてもおかしくなかった。

「ま、あり得ないんだから考える必要も無いよな」

 再び斬りかかって来た水城さんの腕を掴み、歪に組み込まれた刀を拳で砕く。この程度なら楽勝だ。

「悪いけど、少し眠っててくれ。あんまりこういう戦いは好きじゃないんだよ」

 動揺する水城さんに本気の前蹴りを叩き込む。吹き飛ばされた水城さんは目の前に広がる川に叩き込まれ、立ち上がろうとするもすぐに本来の女子高生の姿に戻って気絶した。

「っと、流石に不味いか…?」

 川に流されそうな水城さんの姿を見て、俺は慌てて川の中に足を踏み入れるのだった。



 天龍寺グループ本社ビルの地下。私がおじいちゃんに連絡して事情を話すと、僅か十分後には迎えの車が飛んできて、私たちをここに連れてきていた。

 ここはおじいちゃんが例の『JACK』と戦うべく作ったグループの新部門らしい。彼方此方から優秀な科学者を集め、お父さんのナノマシンの研究をしている。

 多分自覚無しにイマジネーターにされてしまった疑いがある水城さんを連れていけるのは此処くらいだろう。下手に病院に連れていったら、『JACK』以前にわけのわからないことになりそうだし。

 だけど、今のおじいちゃんは水城さんのことなんてこれっぽっちも気にしてはいなかった。

「ほほう。これがアイツが作った最新鋭のイマジネーターか。実物を見るのは初めてじゃな」

「そうかい。だけど流石に疲れてきたから元に戻っていいか?言っとくけど、これ変身しているだけでもすっげー疲れるんだからな」

 和也はうんざりした声でおじいちゃんを睨むも、おじいちゃんは聞く耳持たずで変身した和也を観察している。研究者としての熱…なのかな。でも、おじいちゃんって別に元科学者とか研究者じゃなかったような。

「なら後一時間ほどは変身し続けてもらえんかのう?そうすれば、いずれはエネルギー不足で自滅を…」

 呆れて言葉も出ない。私はツッコミ代わりに押収した電撃ネットでおじいちゃんを攻撃した。

「あばばばばばばば!!」

「和也、もういいって。元に戻って水城さんの所に行こう」

「あ、ああ。それもそうだな」

 変身を解除して、元の姿に戻った和也が少し引きながら頷く。チラリと向いた視線の先には、ネットに絡めとられたおじいちゃんが恍惚の表情を浮かべる姿が。

「…天龍寺家ってのは変人しかいないのか?」

「ちょっと。こんなのはおじいちゃんだけ。間違えないでよ、もう」

「人のこと言える立場かよ…」

 あきれ果てた顔で肩を竦める和也。言われてみれば、確かに私も普通じゃないのは分かる。だけど、私が今まで生きて来た人生の中で、一番印象深い変人は?と聞かれれば間違いなく和也だと思う。

「別にいいじゃない。お腹がすくんだもん」

 そう言っておやつの菓子パンの袋を開ける。これで今日だけでも十袋目だ。

 次々と菓子パンの袋を空にしながら水城さんの居る病室に向かう。かなり厳重に警備されていて、まるで監獄みたいだった。

「これ、民間企業が年頃の女子高生を監禁って問題だろ」

「ま、まあそれはそうですけども…」

 同じ感想を抱いたのか、和也が作業をしている女性の研究者さんにチクリ。研究者さんもちょっと気まずそうな顔をするが、それでも抱えているタブレットを私達に見せて来た。

「これ、血中ナノマシンの濃度が高いままなんですよ。これまでに回収した研究データでは、君に倒されたイマジネーターはナノマシンが自壊し、最終的には水分と一緒に排出されるはずなんですが…」

 渡されたタブレットに表示されているデータを二人で眺め、ちんぷんかんぷんなまま突き返した。

「要するに、まだ変身して暴れる可能性があるってことなの?」

「はい、恐らくは。その上、どうやらこのナノマシンは外部からの受信機能もついているらしく…」

「どっかの誰かが操ってるって訳か。嫌なことしやがる」

 心底鬱陶しそうに防弾処理が施された窓ガラスにデコピンする和也。予想よりもパワーが出たのか、結構大きな音と衝撃が走って病室の中が揺れた。

「あ、あれ…?」

 その音で目が覚めたのか、ベッドで気絶していた水城さんが目を覚ました。起き上がって周囲を見渡しているその様子は、ここがどこか分かっていない様子だった。

 トントン、と私が窓ガラスを叩いて合図を送ると、水城さんが驚いた顔で私達の方に駆け寄って来る。

「え、ええっと?これ、一体どういうこと!?私、あの河川敷で気絶して、それで…!!」

「落ち着けよ。ま、ちょっとヤバめの病気だから、暫くここで過ごしてもらわないといけなくなったって話だ。学校にももう話は付いてる」

「病気って…」

 ペラペラと口から出まかせを言ってのける和也。具体的じゃないけど、説得力はあるからか、水城さんもすっかり騙されてしまっている。今後、和也の言動には気を付けなくちゃ。

「そう言う訳ですので、長野の両親に連絡させてもらいます。見舞いは難しいかもしれませんが、その辺りの説明は今後落ち着いてからで…」

「…うっ!?」

 和也に脇腹を突かれた研究者さんが咄嗟に口裏を合わせる中、病室の中の水城さんが苦しみだした。

「水城さん!?」

「やばいな。また気配が出て来たぞ…」

「こっちの計測器も、反応があります!!不味いですよ!!変身しちゃいます!!」

 研究者さんの言う通り、病室の中の水城さんがまたしてもあの白鳥型のイマジネーターに姿を変えた。さっき和也が壊したはずの右腕の刀も再生している。

「ああああああああああっ!!」

 水城さんは理性を感じさせないうめき声と一緒に刀を振り回し、病室の中にある何もかもを破壊していく。やりどころの無い怒りや暴力衝動を発散しているらしい。

「しょうがない。ここはもういっちょ変身して…」

「馬鹿どもがっ!!その前に、あらゆる電波をシャットアウトせんか!!」

「は、はい会長!!」

 和也が原稿用紙を取り出そうと制服の内ポケットに手を突っ込んだその時、駆け込んできたおじいちゃんが怒鳴った。

 指示を受けた研究者さんが慌てて周囲の機械を操作し、暫くすると水城さんが糸の切れた人形のように動きを止め、そして元の姿に戻った。

「おじいちゃん、これって…」

「こいつが外部コントロールで動いとるんなら、電波を切ればナノマシンは動かんじゃろ」

「まあ、それが正解だったわけだが…どーする?この状況…」

 和也の言う通り、病室の中はまるでライオンでも暴れたのかと思うほどにズタボロだった。これじゃ、とてもじゃないけど外には出せない。

「変身してぶっ倒せば、元に戻ると思ってたんだが…そうは上手くいかないらしいな。さて、次はどーするか…」

感想待ってます。

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