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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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人食いサラセニアの脅威!!

バトルラッシュ開幕。初戦はサラセニア怪人だ。バトルファイト、レディー?ゴー!!

 天竜寺が店に入るのを見届け、千葉刑事はタバコに火をつけた。ナノマシンで強化された俺の聴覚が激しく拒絶反応を起こして思わず顔をしかめる。

「タバコ、吸うんですね」

 思わず口をついて出てしまう。元々タバコの臭いは嫌いだったけど、まさかそんな所まで強化しなくたっていいじゃないか。

 けど、千葉刑事は火のついたタバコを口に咥えると激しく咳き込んだ。ってまさか…。

「私もタバコが嫌いでね。実は吸う同僚にひと箱貸してもらったんだ。臭いと煙ができる限り出ない奴をね」

「…そんなのまであるんですね」

「私も初めて知ったよ。けど、まさか火をつけただけで顔をしかめられるとは思わなかったな」

 顔を上げればバックミラー越しに視線が合う。この人、やっぱり油断がならない。

「実は私の友人には公安の人間も居る。彼に聞いたところ、今外国のマフィアや軍需産業の間では人間の機能を最大限まで強化する技術が確立しつつあるそうだ。それこそ、この距離でこのタバコの煙と臭いに反応するくらいに強化された人間を作っているそうだよ」

 嵌められたか。でも、まだ確証はないはずだ。実際特別嗅覚が優れてれば反応する人も居るだろ。

「鼻はいい方なんで。漫画家目指して頑張ってれば、色々と感覚が優れていくんですよ」

「そうかな?」

 カマをかけようたってそうはいかない。少なくとも今はまだ自由に動けないと困るんだよ。

 千葉刑事はタバコの火を消してこちらを睨みつけてくる。

「ひとつだけ言っておく。ヒーローごっこはやめておけ。法治国家にしっかりとした社会システムが存在する以上、民間人のヒーロー活動など過剰防衛にすぎない」

「漫画の中じゃないんだ。そのくらい知ってるさ」

 そうさ。人対人の問題なら全部話して警察に任せればいいだけの話だ。どんな形であれ、解決すれば天竜寺のことは守られるし、警察に任せたほうが俺の体が元に戻る可能性も上がるだろう。

 だけどこの体も奴らの体も、もう人じゃないんだ。変身なんて出来るのが、人であるはずがないんだ。なら、化物同士で解決出来ることは俺がやらなきゃいけないじゃないか。

 俺自身が奴らと同じ化物だからこそ分かる。この力は、ただの警察に手に負えるもんじゃない。それこそSATみたいな特殊部隊や自衛隊で何とか対処出来るかどうかと言った物だろう。そんなのが後が見えないほどにうじゃうじゃ現れているのが現状なんだ。

「もう一度聞こうか。天竜寺グループは一体どんな代物を被害者の研究所から奪ったんだ?」

「それは…」

 その時、近づいてくるナノマシン気配を感じた。数は一つ。だけど結構強烈な気配だ。昨日倒した奴らよりも強いかもしれない。一体奴らはどうやって俺たちの居場所を掴んでいるのか。いや、今はそんなことなど考えている暇はない。

「すいません。ちょっとトイレに行ってくるんで天竜寺のこと、任せていいですか」

「おい待て!そんな言い訳が通じると思うか!?」

「お願いだから、ここはすんなり通してくださいって…!?」

 ドアに手をかけるが、どれだけやってもドアが開かない。鍵をかけられた?でも、それっぽいのはドアのどこにもないし…。

「この車は警察車両だ。内側からは簡単に開けられないようにしてある」

 この分らず屋め。どんどん気配は近づいてくるし、このままじゃ天竜寺だけじゃなくて俺たちも危ないっていうのに。こうなったら、最後の手段に出るしかないか…!

「おい、何をする気だ!?」

 懐から原稿用紙を取り出す。しょうがないだろ。こうする以外に手っ取り早くアンタに事情を説明する手段がないんだから。

「千葉さん。悪いけど、これから起きることにケチ付けないでくれよ。全部紛れもない現実だからさ」

 原稿用紙の中身を視線を通して脳内のナノマシンが認証し、指先の発熱で原稿用紙が燃え上がる。一瞬だけ運転席と後部座席のお互いの姿が見えなくなり、次に視線があった頃には俺はコミックマンへと変身していた。

「俺はもう人間じゃないんだ。ナノマシンの力で、人が超えちゃならないラインを超えたイマジネーターなんだ」

「イマジネーター…」

「天竜寺グループが送り込んだイマジネーターが彼女を狙っている。倒せるのは俺だけなんだ」

 呆然とする千葉刑事。だが、敵はせめてちゃんと落ち着くまで説明する暇は与えてはくれなかった。

 強烈な敵意を感じ取って咄嗟に千葉刑事を抱えてフロントガラスを突き破って車から脱出する。直後、コンクリートを突き破って現れた蔦が車を貫く。ガソリンタンクが破損し、引火したガソリンが爆発する。俺は千葉刑事を爆炎からかばい、そして襲いかかってくる敵意の方を向く。

「気配を察しているとは聞いていたが、まさか遠距離攻撃まで感じるとはな!」

「お前は!?一体何の化物だ!!」

「コードネームはサラセニア…食虫植物は知っているだろう?」

 コードネーム?サラセニア?草野郎でいいか。それにしても、かつて漫画のトレーニングにとスケッチした植物図鑑の食虫植物を思い出してみれば、確か虫を捕らえて消化することで栄養を摂取する植物だったか。なら、あの触手攻撃以外にも嫌な能力は持ってそうだな。

「きゃっ…!?」

 振り返れば買い物袋を下げた天竜寺がランジェリーショップから出てくる客たちに混じって外に出ていた。

「千葉刑事。悪いけど、天竜寺を連れて離れててくれ」

「き、君はどうするんだ!?」

「過剰防衛かどうか確かめてみるさ」

 千葉刑事や天竜寺から離れて戦うため走り出す。左腕からボードブレードを取り出し、飛びかかって振り下ろす。しかし草野郎はコンクリートをぶち抜いて触手をぶつけてきた。咄嗟に体をよじって回避し、ついでにボードブレードで根元からぶった切ろうとするが触手はあっさりとそれを回避する。

 思わず舌打ちし、後ろに飛んで一度距離を取る。下手に近づけば、あの触手で四方八方から返り討ちにされるってわけか。

「随分と及び腰だな。どこぞの誰かの味方じゃなかったのか?」

「あいにく周りに誰もいなくてな。ちゃんと正当防衛が適用される範囲内で戦ってるんだよ!」

 こっちには遠距離武器がボードブレードを投げつけるくらいしかない。だけど向こうはどこまで届くか不明の触手がある。草野郎がさっきから動いてないと考えれば、最大範囲は一番狭くてあそこから千葉刑事の車までだから、大体半径百メートルくらいか。まだそれと決まったわけじゃないが。

 ボードブレードを正面に構えてタイミングを計る。いっそのこと一発勝負だ。向こうが攻撃する瞬間を狙ってボードブレードを投げつける。西部劇のガンマン風に、どっちが早いか勝負と行くか。

「残念だなぁ。私の方が君より数倍早い」

「がっ…!?」

 突然背後から強烈な一撃をくらって体勢を崩す。見れば後ろにも草野郎の触手が。アイツ、触手の範囲全然余裕じゃねえか。まあ俺が勝手にここまで、と判断してただけなんだけどさ。

 更に二発目の追撃を食らって前に倒れこみそうになるが、このまま倒れたらそのままやられる。そう思って何とか歯を食いしばって踏みとどまる。

 が、踏み込んだ脚がコンクリートの上に撒き散らされていた透明な液体のせいで全く動かなくなった。

「しまった…虫取り液か」

「その通り!君は今、まさに私の舌に絡み取られた虫なんだよ!」

「じゃあ草野郎にとっちゃ効果は抜群だな。好都合だ」

「減らず口を…!!」

 一斉に周囲の触手が俺を攻撃してくる。足を固定されて動けないせいで、衝撃を一切受け流せずダメージがどんどん蓄積されていく。マズイ。このままだとやられるぞ…。

「止めだ!」

 草野郎はそう叫ぶと、触手を伸ばして左右の車を持ち上げた。くそ、どんな触手だよ。もはや怪人じゃなくて怪獣だろ。

「はっ!!」

「くそっ!!」

 二つの車でサンドイッチにするように叩きつけられる。

「が…っ!!」

 全身が砕けそうな痛み。思わず意識を持って行かれそうになるが、それだけでは終わらず二台の車のガソリンが爆発し、俺の視界は炎に包まれた。

「やった…!イマジネーターとなれば、この爆発でも原型くらいは残っているだろう」

 空高く燃え上がる爆炎を見上げ、高らかに笑うサラセニア。

「後は娘を連れて行けば任務完りょ…っ!?」

 そんなことさせるかよ。

 燃え盛る炎を切り裂き、必殺技の勢いで飛びかかりつつボードブレードで一閃する。一瞬草野郎は何が起きたか分からない、と言った様子で俺の方を振り返るも、次の瞬間には爆発していた。

「悪いな。スピード自慢って設定のくせして結構頑丈なんだよ」

 誰も聞いちゃいないけど、変身を解除し元の人の姿に戻りつつ呟く。爆発の後にはスーツ姿の男が倒れていた。もしかして、グループのエリートだったんだろうか。

「結構、強かったな…」

 あの時、爆発で俺の脚を捕まえていた粘着液が蒸発していなかったら間違いなく負けていた。現に、今はもう立っているので精一杯だ。

「どうするかな…何とか、天竜寺と千葉刑事に合流して…」

 その時、再び気配を感じ取る。まさか、このタイミングで二体目が来るのか!?

 いや、違う。この気配の位置は、俺じゃなくて天竜寺を狙っている。

「くっそぉ…!!」

 二枚目の原稿用紙を取り出し、再び変身する。二度目の連続変身は初めてだが、かなり体力が吸い取られていくのを感じる。おまけにさっきの草野郎との戦いのダメージが治ってない…。

 いや、考えるのは後だ。今はナノマシンの気配を追うほうが先だ。

 ボードブレードに飛び乗り、気配の方角に向けて一直線に飛ぶ。思ったよりスピードが出ない。意識が薄らいでいくのを感じる。

 ダメだ。敵がイマジネーターなら、俺しか戦えるのは居ないんだ。これは使命感とか、ヒーロー願望なんかじゃない。俺は、俺にしか出来ないことをやるしかないんだ。

 ナノマシンの気配は近い。なら、天竜寺たちもすぐそばに居るはずだ。

「間に合えよ…!!」

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