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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
17/75

調査開始!

次回よりバトルラッシュ開始。もうちょっとバランス良く書きたかったなぁ。

初変身まで話数をかけ過ぎたと反省しております。

 葦原君の家に泊まり初めて二日目の朝。なんだかもうすっかり見慣れている自分が居ることに驚く。

「ん…葦原君。もう起きてるのかな…」

 隣のリビング兼キッチン兼仕事場から微かに聞こえる調理の音。昨日の朝食と夕食の味を思い出して思わずお腹がすく。どうして葦原君はあんなに料理が上手なんだろう。グループの社員食堂よりずっと美味しかったな。

 そんなことを考えながら新品のパジャマを脱ぎ、新しい服に着替える。これで結局下着は四日目だ。変な臭いしないよね…?でも、まさか男の子と二人っきりでノーブラノーパンで過ごすわけにもいかないし…。

「お、起きたか?」

「おはようございます…」

 既に机の上には朝食が置いてある。昨日よりかはちょっと多めだけど、まあ腹八分目で済ます方がいいって言うし、そもそも私は葦原君に泣きついてここに来てるって設定だしね。

 お互い黙々と朝食を食べる。うん、やっぱり美味しい。これからもずっと作ってくれないかな。

「…調子は戻ったのか?」

「ん?」

「昨日の夜、あんまり食べてなかったからさ。やっぱり警察で無茶なこと頼んだの、悪かったと思って」

 思わず手が止まる。確かに、昨日の夜は流石に食欲が無くてご飯も二杯しか食べれてなかったっけ。でも、葦原君ってそこまで私のこと見てくれてるんだ。

「大丈夫。でも、私が食欲無いこと気づいてたんだ」

「そりゃフードコートでラーメン十杯食って物足りなさそうな顔してたのに、夕食はあんなに静かだったら誰だって疑うだろ」

 何言ってんだコイツって顔されちゃった…。でも、考えてみればそうだよね…。

 思わずため息をついて再び食べ進める。そんな私を、葦原君は軽く首をかしげていた。あんなにも頼りになる人なのに、どうしてこうも時折残念になるんだろ…。

 やがて朝食を食べ終え、一緒に皿を洗い終えると葦原君は漫画の原稿に下書きを書きつつ喋りだした。

「さてと…まずは状況の整理だ。昨日、博士の日記と手帳を調べてみて、何か分かったことはあるか?」

「うん。色々書いてあったよ」

 日記の殆どは天竜寺グループとお母さんに対する愚痴と告発で、研究に関することはあまりなかった。ただ、四月の初めに同級生の家を訪ね、その息子と親しくなったことが書かれてあった。これは十中八九葦原君のことだと思う。漫画のジャンルで悩んでいて、そのことについてアドバイスしたら、新作を書いて見せてくれると約束したとも書かれてあった。

 そして手帳の方は殆どが空白だった。前にシカゴの家で見た仕事用の手帳とは柄が違ったし、多分そっちは家に残していて一緒に燃えたか持ち去られたんだと思う。

「お父さん、日記にはあんまり重要なことは残しておかなかったみたい」

「まあもろ分かりだからな。最悪気づかれて持ち去られる可能性もある」

「だけどね。手帳の方を見れば色々と分かった。書いてあったのは知り合いとかの住所と電話番号だけだったけど、どれもわざわざ手帳に残すような重要なのじゃなかった」

 書いてあったのは、まず天竜寺グループの社用電話の番号とお母さんの携帯の番号。わざわざ赤いペンで書いてあり、そこから少し離れたページに葦原君の家の住所と携帯の番号と私の携帯の番号。こっちは青いペンで書いてあった。

 多分これは、天竜寺グループとお母さんが犯人と言う意味と、私と葦原君をそこから守ってほしいと言う意味だと思う。それぞれが書いてあった手帳のページと日記のページを合わせて見れば、それらしい文章が書かれてあったから、多分この推理は間違ってない。

 そして最後のページ。そこにはお父さんが私に何かこっそりメッセージを伝える時に使っていた消えるペンでどこかの住所が書かれていた。ちなみにこれはお父さんが自分で作った特別製で、私が持ってるインクじゃないと浮かび上がらない仕組みになっている。見張りのおまわりさんの目を盗んで折り目の付いた最後のページにインクを塗ったら浮かび上がってきたのをスマホで撮影したのだ。

「この住所なんだけど、どこか分かる?」

「住所だけ言われても分かんねえしな。スマホで調べてみるか」

 スラスラとスマホで住所検索を進める葦原君が不思議そうに眉をひそめる。一体どこだったんだろ。

「…俺たちの学校だよ。いや待てよ。確か…」

 葦原君は独り言を呟きつつ立ち上がり、奥の棚から本を取り出してきた。埃こそかぶってはいないけど、なんだか長いあいだ触られていない感じの本だ。

「親父の高校の卒アル。確か親父も天川出身だったから…ああ、やっぱりそうだ」

 卒アルのクラス写真に映る、学生服を着た若いお父さん。よく見れば見覚えのある顔もちらほら見える。お母さんに、ちょっと葦原君に雰囲気が似てる男の子に、昨日のルリさんに似た女の子も居る。

「じっくり見るのは初めてだからかな。こんなにも似てるなんて知らなかった」

「え?」

「天竜寺の父さんと母さん。やっぱり、親父の漫画の主人公とヒロインのモデルだったんだなって」

 そう言って葦原君は『THE HERO』第一巻の単行本を本棚から引っ張り出して卒アルの隣に並べる。本当によく似ている。漫画的なデフォルメはされているけど、それでもソックリだ。

「まあそれはともかく、学校の住所がわざわざ隠して書いてあったのか。なら何かあるんだろうけど…」

「けど?」

「いやさ。天竜寺は知らないかもしれないけど、天川はここ数年の間に大改築したから親父たちの知ってる場所なんか殆ど…ってそうか。逆にそういう場所を探せばいいのか」

 どんどんわたしを置いて話を進めていく葦原君。いつかの教頭先生を言い負かした時も思ったけど、葦原君って一度喋りだすと止まらなくなるんだよなぁ。

「確か改築前から残ってたのは、クラブハウスと倉庫だったか?その二つだけならそんなに時間は掛からないし、今日中に調べられるだろ。問題は刑事か…」

「刑事さん?昨日の?」

「ああ。どうも、俺たちが何か掴んでることに気づいてるらしい。しばらくは護衛も兼ねて見張りをするってさ」

 昨日の夜、そんなことを言ってたんだ。お父さんの日記や手帳にこびり着いた血の色が頭から離れなくて、会話しているのは分かったけど一体どんなことを喋っているのかは分からなかった。

 それにしても刑事さんの監視付きかぁ。本当のことを喋って協力してもらうのもアリかもしれないけど、私はあの人を巻き込みたくないな。それに、色々と信じてもらえるとも思えないし。

「外出するのにもそれなりの理由が居るよなぁ。それに、監視付きじゃ学校を調べるのも難しいし…」

 外に出る理由かぁ。確かに、この状況で外出するなんて言ったら怪しまれるのも確実だし…。

「あ」

「どうしたんだ?何か他にあるのか?」

「ううん。その、ね。取り敢えず、外出する口実なんだけど…」

 それを言うことを想像するだけで顔が熱くなるのを感じてしまう。けど、これは私にとっては死活問題なんだし、これを期にやっておかないと結局最後までこのままな気がしてしてしまった。

 私は決心し、口を開く。葦原君の唖然とした顔は、多分これが最初で最後だと思った。




「下着…?」

「はい。買いに行きたいらしいんで、送ってって貰えます?」

「…この車はタクシーじゃないぞ」

「分かってます。ただ、天竜寺は今日でもうよっ…」

 そこまで言って後ろから口を塞がれる。呆れた顔の千葉刑事をよそに、天竜寺は真っ赤な顔して俺の首を絞めかねない勢いで力を込めてきた。

「お願いだからやめて!滅茶苦茶恥ずかしんだからね!」

「んー!!んー。ん…」

「ちょいとお嬢さん?この人顔がどんどん青くなっていきますよ?」

 千葉刑事に促されてようやく手を離してくれたが、思わず咳き込むほど強烈な酸欠状態にまで追い詰められていることに愕然としてしまう。既に五体の怪人と戦ってきたと言うのに、今までで一番命の危険を感じたぞ…。これでも俺ってヒーローやってるんだけどなぁ…。

「ご、ごめんなさい…やりすぎちゃいました…」

「いやいいんだ…俺が悪かったよ」

「そうだな。デリカシーってやつを知ったほうがいい。大人だったら即セクハラで訴えられるぞ」

 怖いこと言うなぁこの人。まあいいや。どさくさにまぎれて外出許可は降りてくれたらしい。それにしても、張り込みと言うのには人手が少ないな。千葉刑事以外にこの辺りに刑事らしき人影がないぞ。

 もしかしたら、俺たちを張っているのはこの人だけなんじゃないか?だとすれば、それは面倒が少なくていいと喜ぶべきか、この人以外に俺たちに目をつける奴が居ない日本警察を嘆くべきか。まあその辺はどうでもいいか。

 そうこうしている間に千葉刑事の運転する車で近くのランジェリーショップに向かい始める。千葉刑事の運転はやっぱり丁寧で、運転中は一切喋らないと言う安全運転っぷり。

 ならこの隙に、後はどうやって学校まで行くかを考えるか。まさか天竜寺が下着の試着をしている間に瞬間移動して学校に行くわけにも行かないしな。だけど学校に用があるなんて言えば、千葉刑事は警護としてついて来て色々と調べられるだろうし。

「ふうっ…」

 隣に座る天竜寺がソワソワしている。それにしても、通算四日目の下着か…。ってイカンイカン。俺はヒーローなんだ。そんな余計なことを考えちゃダメだ。

 そう言えば、昨日チラッと見えちゃったけど、結構大きかったな。まあ隣にいたルリが小さすぎってのもあるんだろうけど…。ってダメだってさっき結論出ただろ!しっかりしろ俺!

「どうしたの?」

「いや…俺の漫画のヒーローのキャラについて考えてただけだ…」

 やめてくれ…そんな目で俺を見ないでくれ。俺はヒーロー失格なんだよ…。

 傷心の俺とキョトンとした天竜寺を乗せてランジェリーショップの駐車場に車が止まる。

「財布にいくら入ってる?足りなきゃ一万までは出せるけど」

「着いて来てくれないの?」

「行けるかっ!」

「そっか…そうだよね…」

「車で待ってるから、できる限り早く戻って来いよ」

 見るからにしょんぼりした背中をして車を出る天竜寺。しょうがないだろ。ナノマシンの気配は無いんだし、童貞にあんな店入れってのかよ…。

感想待ってます。

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