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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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13/75

ゴールデンウイーク!でした。

学園物になると、どうしても季節感という物が面倒ですね。

「さてと…何から聞きたいんだ?」

「えっと。まずは、そう。貴方は一体何者なんですか?」

「何者って…そりゃ、漫画家志望の高校生。それ以外にどう答えろって?」

 変なこと聞くな、と思ったけど、正直言って今の俺はその答えを持っていないんだよな。普通の人間が、変身なんか出来るはずもないんだし。

「でも、私は確かに貴方が変身する所を見たの。高城がカマキリの化物になって、それを迎え撃つように貴方があの漫画のヒーローに変身する瞬間を」

「見られてたのか…」

 これじゃあ言い訳のしようもない。まさか、あの車の中で意識を取り戻していたとは。

「ただ、すぐにまた気を失って、気がついたらここに居たの。もしかして、その変身が…」

「博士の研究成果だ。想像力を糧にしてナノマシンで脳と全身の細胞を変化させるらしい。強盗はこれを狙って博士の研究所を襲い、巻き込まれた俺は博士共々殺されかけた。で、博士が最後に残ったナノマシンで俺を蘇生させてくれたんだ」

「じゃあ、貴方はお父さんの…」

 そうだ。本当なら助かるはずだった博士の命を横取りしたようなものなんだ。天竜寺さんもそれを察しているらしいけど、それ以上は何も言わなかった。

「博士に生かせてもらった命だ。博士の最後の頼みを聞く義務があるってことさ」

「最後の、頼み?」

「君を守ること」

 我ながらクサイセリフだ。こんなの今時漫画でも滅多にお目にかかれないだろうけど、事実だからしょうがない。まさしく事実は小説より奇なり、と言うべきか。

 なんて心の中でカッコつけるけど、実際には恥ずかしくなって顔を逸らしてしまう。ダメだこりゃ。やっぱりこんなセリフは某英国スパイくらいしか似合わないよ。

「…じゃあ、信じますからね。今度あんなのに襲われても、守ってくれますよね?」

 しっかりと俺の目を見てそう言う天竜寺さん。思わず引き込まれるほどまっすぐな目だ。

「それが約束だからな。それに、出来ることなら俺も元の体に戻りたいんだ。その為にも、君が持ってる博士の研究データは敵に渡せないしな」

 俺の心も、彼女の心も決まった。なら、ここまで来たからには全部の情報は共有するべきだな。

 だけど、天竜寺さんは意外なところに食いつきてきた。

「元に、戻りたいんだ…」

「え?」

「あ、いや…男の子って、こういうの好きそうだから…」

 そんなイメージだけで語られても。思わずため息を付き、そのまま手元に置いてあった鉄製のスプーンを持ち上げ、ちょっとだけ力を込めて握りつぶす。

 天竜寺さんが思わず仰け反るほどの勢いで、スプーンはまるで粘土のように形を変えていった。

「こんな体が普通だと思うか?今だって意識を集中させれば君の心音だって聞こえるんだ。別に助けてもらった命にケチをつけたくはないけどさ…」

「ご、ごめんなさい…」

「分かってくれるならいいさ。で、取り敢えずはUSBメモリと手紙だ。USBの方は君が学校に置き忘れていったから俺が今持ってる」

 机の上のパソコンを起動し、懐からUSBメモリを取り出して挿入する。やはり出てくるのは当たり障りのないデータばかりで、本当に欲しいデータはパスワードを要求してくる。おまけに何桁のパスワードなのかも分からないし…。

「手紙の方は?」

「私のカバンに…って、私のカバンは?」

「無かった。多分、没収されたんじゃないか?」

「そっか…」

 落ち込む天竜寺さんを見て、ふと疑問が浮かぶ。そう言えばなんだって彼女が拉致されそうになったんだ?その気があればもっと早くからやれただろうに。それこそ博士が殺される前に。

「一体グループで誰と何を話したんだ?見た感じかなり急ごしらえな作戦だったみたいだけど…」

「…相談室で葦原君から聞いたことを、お母さ…社長に直接ぶつけたの。その時、その…手紙とUSBメモリのことを喋っちゃって…」

 思わず全身の力が抜ける。そのまま舌打ちか罵倒をカマしたい気分だけど、一応曲がりなりにも彼女を守るヒーローをやらせてもらっているので我慢する。にしても、考えなさすぎじゃないかこの人…。

「ご、ごめんなさい!ただ、あの人が本当に事件に関わっているって思いたくなかったの…あれでも、私のお母さんなんだから…」

 俺の態度を見てヘタをうったことだけは理解したらしい。ま、元々下手うってた自覚はあったのかもしれないが。

 それにしても、あんな事があってもまだ『お母さん』か。確か博士が言ってたな。子供の頃から天竜寺さんは母親を知らないことにどこか怯えていたらしい。相手をよく知らないままに再婚までしてしまったのも、元を正せば彼女に母親を与えたかったからだったのかもしれない、と。

「まあ今はいいや。まずはUSBのパスワードを探そう。博士がそういう時に使いそうな単語とか知らないか?」

「そう言う話はしたことないから…一応、それっぽい数字やアルファベットは入れてみたけどダメだったし…」

「無理やりハッキングしてこじ開けるわけにもいかないからな。今日はまずこのパスワードを探るところから始めるか」

「え?学校に行くんじゃないの?」

「え?」

 一瞬何を言われたのかわからなかった。誰も今言ったことの意味を教えてくれない上に、俺も彼女も相手のリアクションに驚いて凍りつくばかりだ。

「…今日から三日間はGWで三連休だぞ?」

「え?日本にはそんなのがあるの?」

「お前それでも日本人…って帰国子女だったか」

 そりゃ海外でばっか暮らしてればGWとか言われてもピンと来ないよなぁ。まあ俺はだからと言って休んだり遊んだりというわけにはいかないわけだし、今年のGWは存在しないものとして扱うという意味では天竜寺さんと同じなわけだ。

「まあつまり今日は休日というわけだ。学生が出歩いていても不審じゃないが、君の格好は目立つよな」

 あちこちシワだらけの制服を指差すと、天竜寺さんは一気に顔を真っ赤にした。なんだ?今のどこかにセクハラ認定されかねない言動があったんだ?服を指さしたから?

「えっと…その、もしかして、私って昨日から着替えてないのかな?」

「少なくとも俺は一切衣服に手をつけてない。生まれて初めてだが神に誓ってもいい」

「じゃあ…着替えって無いの?」

「この家に女物の服が置いてあったらそれこそ通報ものだろ」

 あ、そうか。二日間着たままの服に今更ながら気づいたのか。まあ確かに気持ち悪いだろうし、一度気になっちゃえばめちゃくちゃ気になるだろうなぁ。

 ただ、ここに着替えはないし、何より今すぐ新しく服を調達するには外に出なくてはいけない。そして何より、天竜寺さんは今現在一銭も手持ちがない。カバンと財布とスマホは天竜寺グループに持ち去られてしまっているからな。

 しょうがない。ここは俺が一肌脱ぐしかないな。

 さっきから天竜寺さんもお腹を空かせているらしき音を出してるし。

「まずは近くのショッピングモールに行くか。調査はそこで色々必要なものを調達してからだな」

「…いいの?」

「これでも一学生にしちゃあ金が有り余ってるんだ。全部終わって、覚えてたら返してくれよ?」

 机の引き出しから予備の五万円を財布に入れる。今月の生活費の残りだが、通帳にはまだまだ百万程残ってる。当然ながら親父が残した遺産の一部で、残りは俺の手の届かないようにと立花さんがズバット編集部名義で預かってる。いつか実際にズバットで連載するようになるか、もしくは定職に就くかしたら他の遺産と一緒に返してくれるらしい。本当にありがたい話だ。

「ほら行こうぜ。まさか俺のセンスに全部任せようなんて無謀なこと考えてないだろうな?」

「うん…分かった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね」




 自宅から徒歩十分。この辺りでは最大規模のショッピングモールは、GWの真っ最中ということもあって人、人、人で埋め尽くされていた。正直言って人酔いで吐きそうになる。

「うう…結構ジロジロ見られてる…」

 当然ながら、休日にも関わらず制服を着て歩いている天竜寺さんの姿は目立つ。さっきからすれ違う人のほとんどが振り向いてこそこそ言ってるし。

「制服来てたら目立つよなぁ…まあまずは…って居ないし…」

 俺たちの事情を鑑みれば、あまり不用意に目立つことはしたくない。そう思って振り返れば、天竜寺さんはテナント出店しているパン屋にふらふらと吸い込まれてやがった。

「まずはなんか食べたいってことか?」

 こくりと恥ずかしそうに頷く天竜寺さん。本日初の出費はパン屋で二千円でした。

「じゃあ今度こそ、二階の婦人服コーナーに…?」

「あれ?和也?」

 聞き覚えのある声。私服で手をつなぎ、今まさにデートの真っ最中といった誠とルリが人ごみをかき分けて近づいてきていた。しまった、聴覚が強化されていると言うのに気付かなかったとは。

「まさか、お前が今日ここに来るとは思って…って、女連れ!?」

「しかも高校の制服…!?まさか、そんな趣味が…!?」

「馬鹿。んなワケがあるか」

 案の定ものすごい勢いで勘違いされていく。ちょっと、天竜寺さんも何か…って、さっき買ったパンを美味しそうに食べてるし。

「学校に原稿を取りに行ったら天竜寺さんがGW知らなくて学校に行きそうになってたんで保護したんだよ。そしたら成り行きでここに案内することになってさ」

「どんな成り行き…ってこの人、天竜寺さんか。あのアカリちゃんソックリの」

「え?呼びましたか?」

 ちょうどパンを食べ終えたところで名前を呼ばれたらしく、珍しく素直に反応する。何か食べてる時は滅多に反応しないからな。この人。

「へー…この人が誠が言ってたアカリちゃんソックリな天竜寺さん?確かに似てるね」

「えっと…はじめまして?」

「うん。はじめまして。私、東ルリ。一応あそこの誠と付き合ってます」

「一応ってなんだよ…」

 早速ルリが天竜寺さんに絡み始める。まあルリは昔から人当たりのいいやつだったし、天竜寺さんも内気なだけで人嫌いってわけじゃなかったんだからすぐに仲良くなるだろ。

「それにしても、お前がここに来るとは…正直に言えよ。あの子とどこまで行ってるんだ?」

「何もないぞ。せいぜい漫画を見せたくらいだ」

「嘘つけよ。見た感じ、あの子結構お前にべったりだったぜ?それにお前がわざわざ漫画見せる相手なんてそうはいないだろ?」

「いつかプロデビューして不特定多数に見せるんだ。それくらい普通だ」

 信じていない顔と、生暖かい目線がとてもうざい。ただ、ギャグで使うかもしれないので腹いせ交じりにスケッチさせてもらう。

「おいおい、何勝手にスケッチしてるんだよ…」

「これも、いつかプロデビューするために必要なんだよ。分かってくれ」

「分かるか!!」

 やれやれ、うるさい奴だ。

感想待ってます。

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