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9、自由都市フォーラン・二日目


 夏故なのか、朝の太陽は眩しい、陽の光は窓から刺し込み覚める事を促す、俺はまだ倦怠に取り付く体を引起し、ただベッドに座ってぼーっとする。


 「あ…おはよ…」


 俺の側に寝ぼけたのは小さきライエ。


 「…ございます…か!」


 約5分を経ち、ライエちゃんはやっと自分が裸という事実に気づいた。


 「…見間違った…」


 長い沈黙の後、言葉を搾り出すように、ライエは口を開いた。


 「もう!どう責任取るのよ!この幼女を喰らう獣か!」


 まだしもドンドン叩き、しかも涙目で。


 「あのな…昨日の事、憶えてないのか。」


 俺は服を着せながら問う。


 「え?あ…確か…」


 高温だけと、ライエもまだ布団を取り巻く。


 「突然鼓動が止まる、息も出来ない、痛いのに叫ぶごとすら出来ない、そして冷たいの闇に堕ちた…」


 彼女は可憐な顔を上げて俺に問いかける。


 「ね、もしかして、あたしもう死んだの?」


 そう考えるのも無理もないか、説明が面倒なので俺は彼女が取り巻いた布団引き剥く。


 「きゃー!何をするのよ!てっか胸触るなこのレイプ魔!」


 ショック療法は効いてるね。


 「んん、元気で良い、傷跡なく治ったみたいだ。」


 確認を終え、俺はライエを放す。


 「ちなみに起きたばかりなので俺あんまり獣欲がない、そっちがやる気なら付き合うけど。」


 「あ…本当だ…」


 ライエは自分の体を細かく触り、安堵する。


 「ほら、服よ、着な。」


 修復したワンピースと下着をライエに渡り、俺は部屋を出る。


 いやはや正に間一髪だった、昨日部屋に運んた時、運良く彼女のHPがまだ少し残ってる、道中に空っぽした頭を整理した俺はメニューのキャラエディッタを呼び出し「FIX」というオプションを実行する、そして考えた通り、彼女は元の状態に「修復」された。


 まだしもこの世界根幹たるシステムの完成度の高さに痛感した、今回は彼女のHPがまだ残ってるから憂いなし「FIX」を実行したか、完全に死ねば成功出来るかは分からない、この世界に「魂」が存在する事を知って尚更だ。考えが間違わなければ、「復活魔法」みたいなもんも存在するはず、その原理を知れば、チートの運用も更に易くなるだろう。


 「終わったよ。」


 着替えたライエ、今日の気分はポニーテールか。


 簡単な仕度と食事をし、俺達は出かける、何しろ一夜も帰ってないから、今頃大騒ぎになるだろう、そうそう、地図に特定したブラッディエルフを顕す多数の光点のように。


 「ねね、どうやってあたしを治ったの?教えてくれないの?」


 「企業秘密だ、懲りたなら今後あの美青年から離れるな。」


 エインスハイム地区の玄関にバイクを止まり、目立ちたくない為俺はライエに別れを告げた、それにブラッディエルフ代表の官邸もここにある、それ以上の護衛をしなくでも大丈夫そうだ。


 「何よ、けち!」


 俺に舌を吐き、ライエは大道の向こうに走った、それでよし。


 さてはて、昨日の事件に関して、俺には幾つかの推論がある。


 先ずは外見に関係なく確実にライエを知る相手が存在する事。導き出された可能性は二つ:一つは高い鑑定能力を持つ者、それなら外見関係なく情報を探らせる;もう一つはライエの正体を知る者、つまり身近く居る者、肉親も考え得る。


 次は高い魔法力或いは熱線兵器を持つ者。ライエの服を脱ぐ時、複雑な造形を持つペンダントが有りました、鑑定によればあれはお守りみたいなもの、品質レアで対魔法バリアが常に張る事ができる、一瞬にしてあの傷口を成すからそう考えるのも止む終えない。


 最後はライエの死から利益を得る者。もし本当に姫様だったら、遺産継承も争いの根源になるか、俺が気になっているのはブラッディエルフとエフェテル王家との同盟関係、その関係に快く思わない勢力がいったら、ライエが狙いの的になるのも当然。一番疑わしいのはサイフィス教団、ブラッディエルフとの同盟関係によりエフェテルはリンティスへの技術依頼が減り、最終的に教団の影響力が衰える、有りがちなシナリオだ。


 今のどころ以上の推論を支持できる証拠が少ない、加えて創世神との取引もあるし、この事件に首を突っ込まない方がいい。っと、昔の俺ならこの保身の原則によって行動するか、ゴードモードの現在なら、少し我侭をしても問題ないだろう。


 郊外の道路を走り、土と草の匂いは俺の血が上がりすぎた頭を冷やした。


 約30分後、俺はフォーラン東近郊のロブリア地区に到達した、川沿いの村が互い結びつき、フォーランと比べ物にならないか、結構規模の街が形成した。ってその後方の山にあったのは、兄弟騎士の本拠地、高く聳える城壁に偵察用の尖塔、背後は断崖絶壁、本拠地より城塞に呼ぶ方が正しいのか、観光指南によると確か修道院としても機能している。


 街もフォーランと違う活気がある――相次ぐ薬草商人に熱気溢れる鍛冶屋、魔法商品を販売する雑貨屋も大繁盛、取引する人々も各種の武器を担ぎ、その目は欲望が満ちている、林立する依頼掲示板に加えて、この街は貿易より冒険に向いている


 何故?それは勿論ダンジョンが有する事だ。


 地図によると、フェシエル大陸には八つのダンジョンが存在する、原因不明ですか、何れも魔物が大量発生している、総力を上げてダンジョンの掃除を試みる国もあるか、今だ成功に至らず、無駄に人力と財力を消耗した、それを鑑みて、ダンジョンを有する国はその入口に封印を設置し、魔物を阻む。


 けどダンジョンは特殊の環境によって稀有の鉱物や植物が育てる、強力の魔物から採集できるレア素材を加え、計り知れない戦略的価値がある。そこで国々は金を餌にし、定職のない者達を集めてダンジョンの探索を開始した、そしてその人達、何時しか「冒険者」と呼ばれた。


 客観的に見れば、軍を動かすより遥かに低コストの算段だ。


 以上は個人的推理と地図データを整合したもの、まぁ有りがちな異世界なら当たらずも遠がらずで事だ。しかし冒険者とは言え、人間に限った訳ではない、酒場に騒ぐ冒険者も半分くらい亜人であった。


 「へへ、お兄さん、新顔だね、欲しい情報があれば安く売るぞ。」


 テーブルに着いた途端、狡猾な目をしたネコ背の男が寄ってくる、所謂「情報屋」ってやつか。ちなみに、仕事が邪魔された酒場娘は嫌悪の眼差しを投じる。


 「俺が求める情報、そう簡単に手に入ると思わないげと。」


 「まぁまぁ、構わずに言って見。」


 「そうだね…兄弟騎士と王家の不穏の噂どか?」


 詐術を全開、流石の俺でも初対面の怪しい奴に信頼する事はない。


 「…随分と危険のものを探ってるねお兄さん。」


 明らかな動揺を見せた。


 「だろう?」


 注文したハニー酒を飲み干し、俺はコップを置く。


 「お前じゃ無理だ。」


 自尊が傷ついたように、男が離れる、けど餌は撒いた、獲物が引っ掛る事を待つのみ。


 鎧を着た金髪の青年は静かに俺の背後に立つのは、一人酒を三巡を過ぎた後。


 「貴公に少し伺い事があるので、弊館に臨む光栄を賜れませんか。」


 礼儀正しく凛とした声が静かに成った酒場に響く、どうやら大物が引っかかったようだ、ちゃんと働いてるね餌くん。


 光り輝く白鋼の鎧、筋肉とぴったりの形に鍛えて青年の体を覆う、中世にしちゃ珍しいデザインだ、そもそも元世界の中世じゃこんな技術がないか。上質の鎧とは言え、酒場の野次馬を黙らせるにはまだもの足りない、そう、一番注目を浴びせたのは、青年が背に担いだ凶器――見慣れた曲線、見慣れた鞘、正しくカタナ、唯一異常なのはその禍々しい長さ、青年身長の約1.5倍もある。


 プレッシャーを発する青年、それは拒絶を認めない強引の姿勢。


 「よかろう。」


 こっちにとっても好都合、ここは言葉に従いましょう。


 「かたじけない。」


 青年は頷く。


 思った通り、目的地は兄弟騎士の城塞、厚重の鉄門を越え、俺達は深部の庭園に足を止めた。庭園は緑一色、中央の噴水はゴシック風に造られている、周辺は二階建ての回廊、対になる二本の円柱が回廊の各部分を支え、その柱の頭には植物のモチーフが付いてる、装飾の少ない純色煉瓦が回廊の壁を覆い、清浄かつ神聖さを感じる


 噴水側、荒削りの石ベンチに、髭を蓄えたの大漢は静かに本を読む、その身に相応しい無骨の大剣が依り立ち、ギャップが有り過ぎで反応に困る。


 「モーヴァン殿、例の者を連れてきました。」


 「おお、ご苦労だったな。」


 本を閉め、大漢はしげしげとこっちを見ながら寄ってくる。でかい、少なくども俺より30センチ高い、そしてガチムチで暑苦しい。


 「喝――!」


 前兆なしの瞬撃、避けるか、避けないか、俺は躊躇する。


 けどその拳は俺の眼前一寸のどころに止めた、なのに風圧が塵を吹き起こし、木の葉まで揺らす。


 「ほーー、レベル1とは思えない胆力だな。」


 大漢が笑う。


 「俺は小さき者達を束ねる者、モーヴァン・ノフィンだ。」


 ああ、確か兄弟騎士の本命はそれだっけ。


 「エフェテル王家騎士団長、ルーファス・レインスだ。」


 金髪の青年も家門を告げる。


 王家騎士団か、やっぱりこの線間違ったのかな。


 「って、正直なにを探ってるんだい兄ちゃん。」


 大漢モーヴァンはベンチに戻り、今回はその依り立ちの大剣を取り構えた。


 「返答次第、斬るぜ。」


 「呆れたもんだな…」


 話と共に俺はマスケットを取り出す、それに引換、話の音がまだ空気に消えない頃に、モーヴァンの大剣がすでに俺の脳天に斬りかけた。


 けどどんな神速でも、俺からだとスローモーションにしか見えない。


 俺はモーヴァンの斬りを間一髪で避け、マスケットを反握りし、銃床で彼の腹を殴る、勿論「手加減」を最大にしてた。


 「ぐは…」


 モーヴァンは俺の面前に跪いた、そして俺は彼の手から滑り落ちた大剣を受け取り、肩に構える。


 全ては一瞬の出来事、剣戟が交わす金属音が響き、残されたのはカタナが弾けた事で姿勢を崩したルーファスのみ。


 「そう見るな、俺はただ不対等の会話を気に食わないだけだ。」


 彼等の驚愕に対し、俺は言う。


 「これで分かったが、少なくども敵意がない事を。」


 「確かだ…」


 やっと立ち上がるモーヴァンは負け惜しみが見えない。


 「俺達武人にしちゃ、細かい事よりこっちの方が分かりやすい、俺も大意であったな。」


 「あ…ちゃんと分かったよ。」


 青年も体勢を立て直し、構えを解除した。


 この両者は格闘家ではない、戦場を駆け巡る武人、だから俺はそれを想定しで行動を取った――戦場での殺し合いなら、先の隙を見せれば既に何回も殺された、


 「さって、俺も要件を話そう。」


 少し気晴らしをした俺はベンチを座り、青年に向けて話す。「最近フォーランには不穏な輩が居るごと、ご存知ですか、俺は保身主義だけど、生憎身近が火の粉に掛かった、振り払わねばならない、そして幾つかの推論はあるげと、確証が無いためここに来た。」


 「その身近とは?」


 青年は深意を深めた頷きを返し、追問する。


 「一人のブラッディエルフだ、名前は言えん、一応友人でな。」


 あれ、友人なのかな。


 「なるほど…」


 ダメージを緩和したモーヴァンが身を引き起こし、俺の話に答えてくる。


 「ならこっちは間違ったのだな、見ての通りだ。」


 「兄弟騎士は民から信頼されている、だから王家からダンジョンの管理を任された、我ら王家騎士団とは連携関係、監督者の俺が彼等の潔白を保証する、信じるか否かは君の自由だけどな。」


 ルーファスが言う、義理固い騎士の為なのか、その言葉に嘘が見えない。


 「確かソフィア陛下が魔科学技術推進の政令を下したな、魔法と違う方向の工芸を長ける他の亜人種族も交流を進み、そのきっかけにブラッディエルフの地位も高めた、快く思わない者が居ったら、そっちに関係あると思う。」


 外見による第一印象と違い、モーヴァンの思考は俊敏でした、俺の一番認めたくない事実を指摘した。


 「やはりそうでしたか、この可能性も考えたが、俺はこの国の人間じゃない、だから情報源もない、貴方達の情報に感謝する。」


 話を終え、俺は退場の準備をする。


 「…レベル1、FAI0、熟練の行商人、なのにこの強さ。」


 金髪の青年はそれを許さなかった。


 「敵では無い事は分かるが、私が持つ黄金獅子の目ですらそれ以上の情報を引き出せなかった、憂いを感じるのも不自然ではないでしょう。」


 「黄金獅子の目」、それはルーファスが装備する獅子紋様のペンダント、品質ユニーク、オプションは鑑定能力の倍化、気付かなかったのは失策だ。。


 「分りました、具体的な事は解釈できないか、その情報相応の代償を払う。」


 「代償ね…んん、じゃダンジョン第九階層の水晶花を取っていただけるのかね、あれ結構高価なもんで。」


 すると、モーヴァンが依頼を出した。


 「な…モーヴァン殿貴方何を…」


 そして慌てるルーファス。


 「気にすんな、お前んどこの姫様もすぐ誕生日だろう、きっと喜ぶぜ。」


 なるほど、先もまだ金で交渉したいのたが、まだ裏があるみたいだ。


 「了解した、代わりにフォーランの警戒密度を上げる事ができるね、騎士団長さん。」


 「…あ、問題ない。」


 どうも態度が変だな、俺に向いてではなくモーヴァンへだ。


 「心配するな、裏があるごとは承知の上だ。」


 淡々と俺は答えてくる。


 「…回復薬と解毒剤を十分以上に用意したまえ、そして出来るだけ一時的に能力を上げる魔法薬も用意しろう、忠告だ。」


 離れかけた俺に向け、ルーファスは言う。


 「ご武運を。」


 「ダンジョンの入場手配は俺がやる、お前は街で休め。」


 モーヴァンも補充する。


 「それでは言葉に甘んじる。」


 忠告内容によれば、強力な毒系モンスターがいるだそうだ、手っ取り早く解決出来るように祈ろう。


 フォーランに戻り、明日の冒険に向けて俺は暫しの休息を取った。

約束通り更新しました、次回はちょっと長めのダンジョン攻略の為、少し遅くなります。

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