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7、飛空艇


 空港に泊まる飛空艇を見て、改めて異世界の実感がする、その形は正に空飛ぶフェリー、甲板も多層の客室も娯楽施設も完備、航行距離から考えば、銀貨80枚むしろ安い方た。俺の感動に反し、レイフィは飛空艇が見る途端、顔が青ざめる。


 「もしかして、酔うの?」


 俺の質問にレイフィは必死に頷く。


 幸い飛空艇の上層部には特別のルームがある、それは外壁に浮遊機関を設置し、常に船体のシャーシと一定距離を保つ完全独立の球体部屋、シャーシから離れる故に船体の振動など一切伝わらない、どんな人でも酔わない。唯一の難点はその使用料、なんと金貨2枚になる、実にVIPに相応しい値段。


 俺はともかく、レイフィも金貨50枚ぐらい持ってるから、大丈夫でしょう。


 なんとなく部屋のアップグレードを済み、俺達は飛空艇に搭乗した、ガイドブックの情報によれば、エフェテルまでの航行距離は2500キロ、この飛空艇なら二日もかかる。民用飛空艇の最大速度は200キロもあるか、船体が大きすぎる故に巡航速度は80か120キロが目安、テクノロジーの発展方向はやっぱり元の世界と違う。


 球体部屋とは言え、実際の居住空間は均整した四方形、見た所10畳ぐらい、内装は部屋自身の線条が構成する、機能を重視する上にデザイン感も強い、強い言えば近未来的な感じ、この中世ヨーロッパに似た異世界では違和感が半端ない。


 入ってすぐ布団に抱きつくレイフィ、どう口説いでも動じない、けど旅行中部屋に篭っては俺の性に合わない、昼ごはんの時必ず戻るっと睨むレイフィを説得した。


 VIP居住区を出だらすぐ展望デッキ、風防がないのは魔法によって透明で薄いバリアを張っているから、気流の影響を確実に防げる、万が一バリアが無くしても全居住区を覆う特殊合金の外壁がある、安全についての配慮は万全とも言える。


 上層部の客層は主に富裕階級、服装はそんなにセレブに見えないか、なんだか気品が漂っている、下町育ちの俺にしちゃ正直居辛い。


 「あれ、行商人さん?」


 中層部に向かう途中、突然誰かが呼びかける。


 「あら本当、なんでここに?もしかして意外に金持ち?」


 この傍若無人さ、正に目を逸らしたいも逸らさないライエ嬢でした。


 「姫様、はしたないです、ご身分を忘れないでください。」


 男性の声、それは緑色の狩人裝束をしたエルフ、白い肌に整った顔、身に纏う英気が感じる、如何にも正統派なエルフだ。


 「とにかく、人間との接触は控えてください。」


 「ごめんね、ロシェはイケメンだけど堅苦しいから接し難い。」


 ロシェと言う男性のエルフを無視にして、ライエはこっちに向く。


 「姫様!」


 「分かったよもう、そんじゃまだね。」


 実に疾風のようなお嬢様だ、さきの「姫様」から見れば、高貴な身分を持つのは違いない、本人は隠す気がないけど。


 中層部はエコノミークラスに相当する、銀貨80ならこの階層にあたる、客室は狭いが生活設備は完備、展望空間はそれなりにあるか上層部とは比べられない、もし景色を眺めたいなら甲板に行った方かいい。ここは各国の旅行者が集まり、人間だけではなく、いろんな亜人も混ざっている、異世界的な文化を楽しみたいならここに限る。


 「よ、にっちゃん、あんまりじろじろ見ない方が身のためだぜ、リザードマンは知能あるけど短気なんだ、気を触ればすぐにでも殺し掛ける。」


 カジノに、小柄で濃密な長髭を蓄えたおっさんが俺に説く、どうやら俺の目線を気付いたらしい。


 俺が注目していたのは、カジノの隅にポーからしき賭け事をやっている亜人、蜥蜴の頭に皮膚を覆う錆色の鱗、ネコ背に爬虫類の足、そして粗大な尻尾、確かにリザードの特徴が備えている。しかしその目に狡猾的な知恵の光が閃く、動物とはあきらかに違う、最も皮肉なのは「彼」が着る物、それは俺より高級の商人服だ。


 俺に注意を促すおっさんは所謂ドワーフ、身長こそ低いが筋肉はしっかり、髭を蓄える習慣もありがちな幻想小説と一致している、しかし工匠と言うよりこのおっさんの装束は昔テレビで見た探検者に近い。


 「気軽に遊びたいならルーレットの方がお薦めだぜ。」


 おっさんが指した方向に、ウサ耳の女性がディーラーをやっているルーレットテーブルがある。


 賭け事はあんまり慣れていないか、運試しとしてやるのも一興。


 テーブルに着き、緑のゼロに銀貨10枚を置き、後は他のプレイヤーを待つのみ。紫色髪のディーラーの女性は束身のディーラー服を着用故に凹凸の激しいボディラインを現している、面白いのはそのウサ耳と尻尾は接点がない、即ち体の一部、それ以外は人間と変わりはない、つまりこの姐さんも亜人。


 「なになに、いきなり緑のゼロ?負け確定じゃん。」


 いつの間にか自由奔放のライエ嬢が俺の背後にくっついた。刺繍のローブを除き軽便な猟師裝束に着替、髪もポニーテールに整っている、ロシェもまだ振り切られたな。


 「へい、赤の9、金貨1枚。」


 「羽振りが良いね、嬢ちゃん。」


 隣の人が言っている事は最もだ、ちなみに彼は人間。


 そして全ての客が息を潜め、玉の軌跡を思いを込める。


 「赤の9。」


 全場騒然。


 1目賭けは36倍、つまりこの一瞬ライエは36枚の金貨を勝ち取った。


 「やっる。」


 好奇心を持ってライエに鑑定を使う、驚異などころ、この子のLUK――つまり幸運に当たる数値――は破格の200、100どころが50を超える者は今に見たごとはない、例として挙げましょう、ドラゴン族のワイバーンは27、セフィリアは19、アニャーも只の7、一体どうやってここまで上げたのかな。


 突然、船体は軽く揺れに襲われ、気流と遭遇したのかもしれない。


 微々たる振動ですか、ルーレットに止まった玉が再び跳ね上がり、今回は緑のゼロに止まった。


 「緑のゼロ。」


 再び歓声が湧き上がる。


 「ええ?嘘!」


 ライエは信じられない顔をしている。


 いや、ゴッドモード様々だな。


 収穫は金貨3枚及び銀貨60枚、途中SPらしき者は俺の処に来たいのだが今回は僧兵らしき者に止めでくれた、勅命がちゃんと効いているらしい。


 余談だが、ルーレットをやる前にちょっとリザードマン達の会話を盗聴した、まぁ元々声が大きがら盗聴するまでもないかな。


 「くそ、やめだやめだ。」


 ポーカーらしきゲームに負けたリザードマンは手札を投げ、酒を一気に飲み干した。


 「まったく、六連敗なんで、流石の俺様でも考えをつかながったよヤサン。」


 賭金をローブに収め、相手のリザードマンもまだ酒を勧む。


 「余計にイライラするなあんた、なにかあったのか。」


 「うちの女房以外なにかあると言うんだ。」


 「まだ怒られたのか?お前も学習しろよ。」


 相手のリザードマンが溜息をした。


 「女房と喧嘩しても勝てない、そもそも進化方向が違いから。」


 「分かってるから商売をやっていたんじゃないか、けどよアルバ、血が騒ぐ時もあるんだ。」


 ヤサンと言うリザードマンは悔しげにテーブルを叩く。


 「分からなくもないが、戦いたいなら人間達のコロシアムに行け、俺達男は無駄に頭脳が進化した訳ではない、故に村を守る事を女達に任せたじゃないか。」


 アルバと言うリザードマンは酒を飲み干して尚語る。


 「お前も今年で大商人に昇格するだろう。」


 と、話はここまで、大した情報はないか、取り敢えず「リザードマンの男性は人間並みに頭脳が発達している、その代わりに女性が戦闘能力が特化している」って事ね。


 空港から発って早々三時間、時は正午、気流も安定している、揺れもさほどではない、それらを理由を化し、やっとレイフィを部屋から連れ出した。ちなみにライエはまだ怒るロシェに連れ去られた。


 昼飯はビュッフェ形式、こんな世界だからこれもありか。サラダ、魚介類、肉類一通り揃てる、具材も新鮮、味はままだけど元世界のエコノミー機内食よりましのは確かだ、スタッフから聞けば、夜はオーダー制だそうで、とにかく安心した。


 食後の散歩として、レイフィは俺を連れて上層部の商店街を回しに行く。流石セレブ向けの商店街、武器以外の贅物が目に満ちる、俺には興味がないけどレイフィは結構たのしんている。ウィンドウショッピングを終え、最終着いたのは商店街の最後にあるジュエル修理専門店、他の店と違い、店内は豪華な装飾がなく、あるのは壁一面を占める工具の群れのみ、店主は白髪で痩せた老人、歳月を彫る面影に鋭い目付きがある。


 「ジュルヌさん、ご無沙汰しております、これはいつもネックレスです、聖晶石の面取りと磨きをお願いします。」


 礼儀正しく話をし、人が変わったようなレイフィは首に纏うネックレスを老人に渡した。


 「おお、レイフィちゃんじゃないか、どうしたんだ飛空艇乗せて。」


 鋭い目付きが一瞬で消えた、皺も柔らかくに見えるのも錯覚か。


 「お兄ちゃんとエフェテルに旅行。」


 「おにい…ちゃん?」


 殺気を向かないでください、こっちも初耳なんだ。


 「まぁいい…」


 爺さんはネックレスに振り向け、単眼式虫眼鏡を掛けて細かく検査する。


 「それにしても消耗が激しいね、この一年間なにかあったんだ?」


 諜報活動を漏らす訳がない、故にレイフィは黙り、爺さんも了承したように続きを問わない。


 「待ってでね、すぐ仕上げる。」


 ネックレスを工作台に置き、老人は年代物のカッターと砥石を取り出し面取り作業を始める、そしてこの地味で重複の作業は一時間近く続いてやっと完成した。


 「ほら、大事に使うのよ。」


 磨き上げたネックレスは曇りなく輝いてる。


 「ありがとうジュルヌさん。」


 レイフィは満面の笑みでネックレスを受け取る。


 「今後暫くエフェテルに滞在するので、ジュルヌさんが来られると嬉しいな。」


 「勿論さ。」


 駄目だ、完全に孫を溺愛する爺さんだ。


 「それにお兄ちゃん。」


 だからこっちに殺気向けんな。


 「料金は金貨1枚。」


 高いなおい!


 「お兄ちゃん、お願い。」


 レイフィはいつもの涙目攻勢、まだ今朝の件に根を持つのか。


 「分かった分かった、たっく。」


 気が進まんが俺もまだ金を払った。


 事を済み、せめてのんびりした午後を過したいっと俺は中層部と上層部の間にあるプールサイドに来た、この点は実にフェリーらしい。ちなみに下層部は車両甲板、キャンピングカーとバイクはそこに保管されている。


 それほど熱くはないか、太陽が眩しい故にプールサイドの人が少ない、ざわつきのない午後を過ごせそうだ。俺は日傘が着いた木製のビーチチェア背を着き、澄み渡る青空を眺める内に、眠気がさしてきた。


 「遊ぼ。」


 ドンドン音と腹の揺れが俺を夢の途中から強制連れ帰った。


 それはブルーの長髪を二つの団子に結び、ついでに水着に着替えたレイフィ。


 水着は紺色で素朴なデザイン、スク水になんとなく似ているかワンピースだった、胸はぺったんこだけと脚線はアスリート、滑らかで柔らかな肌、幼い曲線を描いている。


 これだからロリコンはやめない。


 「じろじろ、だめ。」


 いつもの口調に戻ったレイフィ。


 「えっとね、俺は今ちょっと昼寝気分なので、レイフィはいい子だから騒がさないで。」


 「んん…」


 頬が膨らむ、可愛いらしいか溺愛すぎるとだめ。


 「あれ、何この子、可愛い!」


 誰かが目に止まらぬ速さでレイフィを抱き着けた。


 「姫様!」


 そして怒鳴り声。


 「はしたないです!」


 よりによってあのお調子者のお嬢様とその保護者一名か。


 髪をポニーテールにし、ホルターネックの水着を着るライエもアスリート体型だか華奢のレイフィと違いより健康的なスタイルをしている。


 「ぐぐ…」


 背後にくっ付く膨らみを感じたせいか、レイフィもまだ胸にある蕾に悩まる。


 海パンとタンクトップを着こなすロシェは縛り着いた体付き、筋肉はしっかりしているか過度な膨らみはない、狩人どしてバランスを保っている。


 「ち…」


 自分は肥満体でいる事に自覚はあるか、毎回のこの蔑むような眼差しもまだ痛い。


 「初めて遭った時から思うんだけと、やっぱり行商人さんてデブですね。」


 うわ、この傍若無人のお嬢様は礼儀正しく毒舌を吐いた。


 「詫びを言う。」


 遊ぶ相手を見つけたライエとレイフィはプールに騒いてる、その光景を眺めて、ロシェは突然謝ってくる。


 「姫様はいつも思いついた事を口にする。」

 

 「実にびっくりしたよ、エルフはもっと優雅な種族だと思いました。」


 俺も皮肉を言う。


 「人類と比べるね。」


 言葉を締め、本題に入る。


 「正直などころ、俺達エルフは人類と関わりたくない。」


 俺はロシェの言葉を噛む、そこに誇りと蔑みがある。


 「姫様は特別だ、どんな手を使って姫様を騙ったのは知らんか、俺は認めない。」


 教科書通りの種族偏見、いや、一種の宣戦布告と考えた方かいいだろう。


 「あ、そう。」


 そして沈黙は続く、気不味い雰囲気だが、論争すら面倒臭く感じる俺にとって寧ろ好都合、可愛い女の子を眺めでのんびりした午後を楽しませる。


 晩餐は機内のラウンジで行う、やや狭いが窓からの眺めは素晴らしがった、星空が身近く感じられる。なにより幻想的なのは、雲の上、月光の下に飛行する青い飛竜、その飛空艇より大きな体は悠然として飛空艇の側から通りすがる姿は素晴らしがった。


 「ブルードラゴン、種族:ドラゴン、上位種。」


 侍者の説明によると、ブルードラゴンは高い知能を持つ古龍、普段は隠世的な暮らしをしているので、無闇に人を襲わない、まぁ、わざわざドラゴンに挑発をする阿呆もそうそういないでしょう。


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