4、聖都・二日目
大聖堂の東、そこにあるのは高さ50メートルもある巨大な門、幅広い出入り口は大軍も通れる、敢えて城門と称していないのは、上にあるサイフィス神の彫刻、いかにもロマン主義的。東門のテーマは「創世」、他の三つもそれぞれ違うテーマが持っている。
創世神サイフィスの姿は頭に刺の光輪を翳す鷹、大理石の彫刻は白一色だか、その翼の両側にある星の運行図ははっきりと分かる、そして鷹の胸に誕生し始めたのは、この星だったそうだ、あまりにも巨大の造形なので、インパクトも半端ではない。
「お気に召されましたか?」
前兆なしに、海色の教服を纏う修道女が俺の側に佇む。
「あ…壮大だな、と。」
まだ幼さが残る面影から見ればまだ20未満だか、メガネを掛けた彼女は一段と成熟に見える。この普通の会話に異様を感じたのは、門を通りすがる者は数え切れない、なのになぜ極めて一般な俺に?敢えて疑問を胸に押さえ込めた。
「人待ち?」
益々怪しい。
「ああ…そんなどころ…」
生まれつきの疑い性分なので、俺は人ど距離を置くごとに慣れた。
「うぐ…シスター・セフィリア…」
なにか地に落ちる声を聞き、振り向けばそこに固まった小さな少女がいる。
「あら、これはこれは、シスター・レイフィではないか。」
手のひらを頬に当てで、目を細めてなお絶えない笑顔は少女をさらに凍える。
「朝早々慌てで出て探すのはこの方でしょうか。」
「う…」
歌姫――レイフィは反論しながった。
「は…」
短い溜息をして、メガネの少女がこっちに向いた。
「自己紹介をしないごとにお詫びいたします、第三聖修道院の院長を務めるセフィリアと申します、うちの子がお世話になりました。」
「いいえ、俺はなんにも…」
「もしよければ中で詳しく話せませんか?」
礼儀正しくそして強押しな彼女に反論するのはちょっと難しい。
俺の裾を引っ張るレイフィは首を仰げ、綺麗で小動物の様な眼差しがこっちに向いてる、それは歯向かえないね、とっても昨日まで殺し合っているとは思えない。
広い敷地にある無数な建物を通り、俺は中央大聖堂一階にある礼拝堂に連れて来た。この礼拝堂もまだ荘厳極まり、目一杯に広がる大きさにも関わらず、目測30メートルもある天井にサイフィスに関する戦争の壁画があり、周囲の柱も複雑な彫刻が施している。
「それはつまりあなたが聖晶石を損壊したのですね、不用心で。」
礼拝台に立ち、セフィリアは俺の言う訳に頷いた。
「弁償しますので、こう見えても金はちゃんと持っている。」
「全く、レイフィの天然さに感服したよ。」
セフィリアは頬を当てながら困ったように言う。
「それに弁償なんで大げさですよ、サイフィス神に真心な懺悔を捧げばよいのです。」
手で導いたのは、奥にある一つの大部屋、懺悔室らしい。
明らかな怪しいさを感じるけど、今は選択する余地がない。懺悔室は外ど違い、過剰な装飾がなく、あったのは部屋中央に浮かぶ巨大な水晶玉だけ。
「本当にこれでいいのか?」
懺悔室に足を踏み入れ、俺は背後に問いかける。
突然、重く悶える軋む音が響かす、気がつけば懺悔室の石門は既に固く閉じている。
「これは何の冗談です?シスター・セフィリア。」
「ね、名も知らない旅人の方、知ってますか?」
石門越で、セフィリアの声を冷たく感じる。
「聖晶石とは、純度が極めて高い魔晶石にサイフィス様の力を込めた物、例え戦艦砲火に直撃されでも壊さないよ。」
あはは、それは知らながった。
「どんな裏があるかは知りませんか、どの道懺悔の過程が終えた後、あなたはサイフィス様の忠実な信者になるだろう。」
その一言を置き、足音が石門から遠ざかって行く。
一方その頃、水晶玉は白い光を発しながら清き雄々しく声を懺悔室に響き渡る:「罪人よ、我はサイフィス神による観測者なり、こころの罪に直面、神の許しを求めよ。」
「マインドコントロール を 抵抗した」
おいおい、もはや洗脳ではないか、どこまで腐ってるんだこの宗教は。
しかし参ったな、俺懺悔なんて毛頭もない、やはりこの石門をぶち壊すしかないか。
あちこち探し回ったか、開門できるスイッチが見当たらない、残るのは懺悔の声をループする水晶玉だけ。
「アクセスコードを入力してください。」
水晶玉を接近すれば、視界にこう言ったダイアログボックスが飛び上がる、直感によると、この水晶玉は一種のインタフェイスの可能性が高い、所謂神の端末。けどアクセスコードを知る由もない俺はどうやってログインするのか?やはりバカ力で押し通すしかない。
メニューを呼び出し、「バックトラッキング」を選択すれば、思う通り「枚挙法」――俗に言う「総当たり攻撃」――のオプションが出できた、その他にも「マルチコンピューティング」と言う付属オプションがある、考えずに全部オンにしてみよか。
対象を目の焦点に合わせれば、計算が自動的に始まる。
一瞬、周囲の空間が全部真っ白に染められ、全ての物が地平に消え去るように、境界線すら残っていない、あるのは浮かび上がる無数の数字、符号、そして計算対象の水晶玉のみ。
「アクセス成功、アドミニストレータとして認証されました、全権限が開放されました。」
ほんの一瞬だけで解析が終えた、一体どんだけマルチコンピューティグをしたか?
「宇宙検閲官の部屋へようこそ、探したい事象を入力してください。」
全部見た事のない文字だか、なんとなく脳内で理解できった。
宇宙検閲官は俺の世界ではまだ仮説であり、証明されたものではない、いかなる時空間を誕生する裸な特異点は必ず事象地平の外にあり、いかなる事象地平に囲まれる事はない、故に特異点に対する検閲や観測など不可能に等しい、それに対し、特異点はいかなる時空に対する検閲は可能となる、簡単にいえばアカシックレコードそのもの。
無言で俺は自分自身に関する全てのデータを入力した、それも当たり前でしょう。
「該当対象に関する宇宙は既に消滅しました、映像は保存しています、再生しますか?」
「消滅、だと?」
鼓動が高ぶる。
再生映像によると、宇宙の消滅は前兆も過程も原因ない、いつもと変わらない日常で、突然キャンバスが白に戻る様に、全てが無に帰る。
じゃなぜ俺は此処にいる。
「……」
黙りか、即ちアカシックレコードでも観測できないか。
そう言えば似たような漫画を読んだ事がある、映画同好会の四人は各自で作ったミニ映画を比べている、一人目は走る姿をして世界各地で飛び廻る溶接映画、二人目は自分部屋の二階にビデオカメラを架け12年間の変化を記録、三人目はSF気味のギャグ作、どれもアマチュアに見える。ここで最後の四人目、通勤する人々、買い物帰りの主婦、遊ぶ子供、一見何の変哲も無い日常だか、突如画面が白くなり、ビデオの最後まで続いた、それは核戦争が起こり、世界が前兆なし滅ぶと作者が主張し、四人か激しく争論を繰り広げた、争論の最中、そのビデオに呼応するように、漫画の最後一ページもまだ前兆無くの余白と成った。
長らく沈黙を経ち、俺はついにログアウトをした、それに従い周囲の空間も正常に戻る。
もし整理がつかないならしなくて良い、俺はそう決まった、故にパニックなんぞに陥れながった。
俺が懺悔室から出た時、荘厳たる礼拝堂は既に人気が無くなった、時間は午後の一時、天井の彩色硝子から刺した陽の光は神々しく見える、この大聖堂の建築師に素直に感服、そう、裏がなければね。
大聖堂の敷地は実に広い、地図に従って第三聖修道院に辿りつけるには20分も潰えた。
そう、やっぱりレイフィの処遇に気になる俺であった。
第三聖修道院は他の建物より明らかに古い、ネオロマネスクよりゴシックに見える――尖ったアーチ、及びこれを構成する控壁、必要以上に細い柱、古びた彩色硝子、どれもかの歴史を語っている。それらと引換に、内部構造は複雑ではない、地下一階にある反省室は簡単に見つかる。
にしてもエロい、檻の中に可憐な少女の目は赤い布で遮って、さらに猿轡の様な物で口を塞い、跪くに加え手を反転して縛る、まさに見えず言えず動かず。
「処罰の見物ですか?良い趣味ですね。」
回廊の向こう側、その深き闇に、セフィリアは静かに姿を顕す。
「こんなごとして一体なんの得があるの?」
「色々ありますね、感覚の一部を遮断し魔力に対する感知力を研ぎ澄ますどか。」
詳しく説明しながら、彼女は虚空の渦から禍々しき物を取り出した――彼女自身の身長二倍も近い大剣。
「さって、ここで話すのもなんだけど、良ければ奥にどうぞ。」
奥には大広間がある。
一階の透光設計から光がその武器を照らす、それは決して綺麗とは言えない無骨の大剣、クリスタル製の刃に血の跡がつき、かなり使い込んでいると見える、柄には精巧な鷹の紋様が刻まれている、どうやらまだサイフィス関連の武器。
「神託によると、懺悔はもう完成した、けれどあなたは信者になる様子が見当たらないですね、一体どういうごとなんでしょう。」
困った様にまだ片手を頬に当てるセフィリア、メガネに隠された目は細くなっている。
「生憎俺は神様に縛られたくない性分ですよ。」
敢えて彼女に合わせてトホホを言う。
「いや、この様な件はあたしも初めて、実に興味深いです、か。」
微笑ながら、大剣は振り下ろした。
「生憎こっちにも仕事があるので、ごめんね。」
数多の光は虚空から穿ち、瞬く間に、室内に石を焼いた匂いが充満した。
「あらら、密度が足りないのですか?先の一振りなら中隊一個分を蒸発するごともできるよ。」
俺がまだ立ている事に少し訝しさを感じる彼女だか、まだ表情は崩していない。
「ちゃんと話しあえば、お互いも理解する…」
話がまだ終えない内に、セフィリアは既に目の前に踏み込み、身長二倍も近い大剣を軽々しく舞い上がり、目にみえないほど神速な剣閃を放った。
「いいえ、あたしが唯一理解しているのは、あなたは危険です、消去しなくではならない。」
律儀よく話しているセフィリア、その剣閃と伴い灼熱の閃光が広げる。
「まったくどいつもこいつも…」
戦闘モードに移行した俺から見れば、セフィリアのその神速の剣閃もまだスローモーションにしか見えない、故にその隙に突き込み、剣を握る手首に力加減をした手刀を叩く。
「痛…!」
ほんの一瞬の出来事てあの大剣は地に落ち、重しくて鈍い音は室内に響き渡る。
「鑑定結果:神賜りし水晶剣、品質ユニーク、重量150キロ、魔力を込める程その重量も軽減する、振り舞えば消耗する魔力によって高熱レーザーを発射する事が出来る。」
即ちこれを軽々しく振舞うセフィリアもまだ凄いって事。
「それは驚きました、太り気味のあなたがこうも素早いとは。」
「神職者は外見で人を判断するのは良くないと思いますか。」
「あららこれもまだ失礼、」
いつもの様に微笑が絶えない。
「第三聖修道院、処刑者セフィリアの名に於いて、戦術魔法・プロビデンスインフェルノの解禁を要求する。」
クリムゾンの紋様は広間全体を包みこみ、檻と成す。
「忠告です。」
檻の包みから離れたセフィリア、顔に浮かぶ紫色の刺青を遮るながら淡々と言葉を話す。
「もし機会があれば相手に確実なとどめを刺すごと、そして相手は女の子だとしても甘く見ないごと。」
地表が溶け、轟炎となり噴き上がる。
「ならこちらも忠告する。」
轟炎に包み込んた俺は手加減なしで紋様が織り成す檻に殴る。
「人の話はちゃんと最後まで聞く、それは身のため。」
すると紋様が螺旋の渦に捻り始め、そして吸い込まれる、それに従い轟炎も消し、広間は正常空間に戻った。
「な…」
やっと表情が崩したか。
「これはお手上げですね。」
潔く負けを認めるセフィリアであった。
「どうやら手札が尽きたようだな、なら事情の顛末を聞かせて貰お。」
「分かりました…」
長い溜息をして、セフィリアも肩を降ろす、脅威的な力を於いて切り札が潰れた彼女には選択がない。
「先ずは第三聖修道院、主に情報収集及び聖女様に脅かす物の排除、謂わば諜報機関、民間から軍まで幅広く活動しているので、この修道院も長期留守でわけ。」
道理で侵入する時僧兵の一人も見当たらながった。
「シスター・レイフィが唄う歌は魔力を込めれば人の敵意を消去する事が出来る、魔力が高い故一度も失敗していない、もし出来ない場合は高い抗魔力を持つ危険分子と判断し排除する。」
「エゲツないなあなた達。」
「綺麗事だけでは国を維持するごとができないからね。」
メガネを正して、セフィリアは言う。
「名もない行商人、それを呼ぶには正しいかないか、あたしの能力ではもう鑑定出来ない、あなたの今後の行動によって、この国全体を敵に回す可能性もある。」
「それは流石に参ったな、とりあえず俺はこの国に対する敵意はない。」
「信じるか否かもう敗者のあたしには選択する余地がありません、せめて今後どうするつもりか、聞かせてもらいませんか。」
「この国の最高指導者に会いたい、七聖修道院の一つを牛耳るあなたならできるはず。」
「聖女様ですか、悪くない判断だ、けど聖女様はサイフィス様の神託によって行動するのみ、くれぐれも注意を。」
大剣を忘れずにイベントリに収まったセフィリアは、俺を広間の出口まで送った。
「明日の午後に手配する、黄昏の前に礼拝堂の正門に会いましょう。」
帰る前にセフィリアにレイフィの開放を願ったか、セフィリアは指でレイフィの首筋から背筋まで軽く撫でた、俺の前で。するとレイフィは跳ね上がるように背を伸び、軽く痙攣をした。
「ほらね、この程度で失禁するとは、まだまだ未熟ですねこの子。」
ん…いいものを見た気がするけど、やっぱり複雑に感じるのはモラルのせいでしょうか。
その次はいつでしょう…